蛇足
エピローグ。彼らのその後。
明転、サントリナが歩いて登場する。
サントリナ「あの子は予言通りにやってきて、予言通りに世界を救っていった。分かってはいましたが……こうも無邪気に救われてしまうと、何のための神なのか分からなくなってしまいそうだわ」
悪戯っぽくそう言い、困ったように笑って、しばらく目を瞑る。
サントリナ「……異世界までは見通せませんか。……せめて、安らかな成長を祈るくらいはするのが、大人というものかしらね」
サントリナが再び瞑目する。
少しするとリラの声が聞こえてくる。
リラ「だから、本当なんですって! 本当に勇者さまはいたんですよー!」
サントリナ「あら、あら……異世界の子供の前に、まずうちの子供たちですね」
サントリナが捌ける。
しばらくしてリラが登場する。
リラ「……もう! ホントのことなのに……」
話を信じてもらえずむくれるリラ。しかし少し考え、何かを閃き、にへらと笑う。
リラ「ならそれでいいです。……イブキさんは、わたしだけの勇者さまですから!」
そう言って、おもむろに服のポケットから三つのオーブを取り出す。
リラ「……みんな、思い出しましたよ。喜びも、怒りも、楽しみも……それから、哀しみも。……さ、元に戻してあげないと」
リラが反対側へ捌ける。そして舞台袖で叫ぶ。
リラ「あ……ああーっ! あなたたちは!」
ライオ「うげっ! オヤビン、見つかっちまったでやんす!」
オダマキ「お前は娘っ子! 何故ここに!」
リラ「それはこっちの台詞です! ……まさかまた泥棒しに!? 誰か! 泥棒! 泥棒です!」
オダマキ「こ、こら、騒ぐな! ええい、逃げるぞ!」
ダンデ「ああくそー! あそこのもん全部レプリカだし! 忍び込んだら見つかるし! 聖堂院はもう懲り懲りだぜ!」
リラ「こらー! 待ちなさーい!」
ドタドタと走り回る音。
暗転。
明転。
イブキがゆっくりと歩いて登場する。
イブキ「やっぱり夢だったのかなー……そうだよね、あんな不思議な世界、夢じゃないとありえないし」
ふう、と息を吐いて辺りを見渡す。目的のものを見つけてその前にしゃがみこみ、それを清拭する。
イブキ「聞いてよ母さん。今日さ、変な夢を見たんだ。女の子と一緒にドロボー退治したり、ナマイキなヤツとトランプしたり! しかもそいつさ、魔王ーとか言ってる割にハッカ飴苦手でさ! ……まあオレもなんだけど」
そう言いながら線香を立て、火をつけようとライターを探す。ポケットに手を入れ、何かあるのに気付き、それを取り出す。
イブキ「あれ。……これ……ハッカ飴だ」
静かにみつめ、握りしめ、またポケットに仕舞う。
イブキ「やっぱり夢じゃなかったかも。……へへ、また来るね。今度は新しい友達のこと、もっと教えるから! ……じゃあ、またね、母さん」
イブキ、清々しい笑顔で捌ける。
暗転、終幕。
【脚本版】じゅぶないるヒーローズ! 水無月ふに男 @junio
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