第101話
「ねぇ、あおちゃん。ずっと聞きたかったんだけど、あおちゃんと宗くんって、保育園にいた時期被ってる?」
「………ああ?」
「………あおちゃんガラ悪い」
「あおはいつもガラ悪ぃよ」
2時間目から授業に復活してからのお昼休み。
暑すぎて外には行けない今日も、僕はあおちゃんと光くんとかーくんの4人で教室でお弁当を広げていた。
「何で今さらそんなこと聞くんだよ」
「聞くタイミングを失ってただけだよ。最近あおちゃんうち来ないし」
「忙しいんだよ」
「あおちゃんが?」
「あおが」
「どうしたの?あおちゃんが忙しいなんて」
「あおだって忙しいときぐらいあるわ‼︎」
「僕はあおちゃんと保育園の時からの付き合いだけど、あおちゃんが忙しいなんて初めてだよ?大丈夫?何かあった?」
「………ちょっと」
「ちょっと何?」
「ちょっとはちょっと‼︎」
僕たちの会話に光くんが仲良しだねぇってくすくす笑って、光くんの机に乗っているかーくんがそれに頷くみたいに小さく鳴いた。
そして2人でねーって………かーくんはかーだけど………言い合っている。
そして僕は改めて、かーくんの頭の良さを実感していた。
かーくんって本当にカラスなの?
実はカラス型のロボットとか。
僕がかーくんに気を取られている間に、まだ朝僕が先に学校に来たことを怒っているらしい、微妙に機嫌の悪いあおちゃんは、宗くんのおにぎりのついでに作ったおにぎりをばくばくとすごい勢いで口に突っ込んだ。
それをもぐもぐしつつ、宗の野郎と保育園が被ったのはほんの1ヶ月ぐらいだよって教えてくれた。
「………そうなんだ」
「あおがあの保育園に入ったとき、明くんは居なかった。で、宗の野郎は毎日めそめそじめじめしてた」
「………?」
「あおちゃん、めそめそは分かるけど、じめじめって何?」
僕と同じことを思ったらしい光くんが不思議そうに首を傾げる。
「じめじめってのは、教室の隅っこに座って遊びもしない、呼ばれてもうずくまったまま。口を開けば今日明は?明日は来る?で、先生が今日はお休み。明日は来るといいねって答えるとまためそめそしてうずくまってって、そんなだったってこと」
「………」
「それが毎日?」
「そ、それが毎日。あおはそのときまだ明くんのこと知らなかったから、先生に明って誰?って聞いたもん。そしたら宗くんの仲良しさんって。すごく仲良しだから、宗くん寂しいんだよって。たった1ヶ月しか被ってないのに宗の野郎を覚えてるのは、とにかく毎日それだったから………と」
その、保育園の頃を思い出しながらなのか、今日の機嫌が悪いからか、あおちゃんの口調に苛立ちが見える。
苛立ちに、途切れた言葉。
「………と?」
続きを促す光くん。
あおちゃんは、促した光くんをギロって睨むみたいに見て、そして。
「アイツ‼︎あの宗野郎‼︎」
「あ、あおちゃん?」
ばしっと箸を持ったままの右手で机を叩いて、あおちゃんは項垂れた。アイツ‼︎って、また。
「先生に言われてあおが宗の野郎を外遊びに誘ってやったのに‼︎アイツ‼︎あおを見て言ったんだ‼︎」
「な、何て?」
「明じゃないなら遊ばない。お前より明がいい。お前より明の方が百億倍かわいい。って‼︎」
「………っ」
思い出しても腹が立つ〜‼︎って、あおちゃんは座ったままのたうちまわった。
宗くん。
明じゃ、ないなら。
明がいい。
………明の方が。
まあまあ、あおちゃんって、あおちゃんを宥めた光くんが、宗くんは小さい頃から明くんのこと大好きだったんだねって言った。
僕はその言葉に、顔が熱くなるのを感じた。
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