片腕

織末斗臣

第1話

 医者の言葉はこうだ。

「不随になってしまったあなたの右腕は、リハビリである程度は使えるようになるでしょうが、あくまでもある程度です。不自由に変わりはない。

 ひとつ提案ですが……。健康な左腕の神経を右腕にもつなぐという方法があるのです。うまくいけば、あなたの右腕は左腕と同じように使えるようになるはずです」


 俺は考えるまでもなく医者の提案に乗った。

 俺は左利きだ。右腕にも左腕の神経が通うとなれば、両腕が利き腕になるわけだ。二刀流の剣豪にでもなれそうな気がした。


 難しい手術だということだったが、それも無事に済み、退院の日を迎えることができた。

 不随だった右腕は手術を終えてすぐに動かすことができた。奇跡のようだった。

 もちろんはじめはぎこちなかったが、医者の助言通りに両腕を同時に動かすことで、今まで動かなかった右腕に活力が戻っていった。右腕が左腕の真似をしながら働き方を覚えていくといった感じだ。


 

 少しずつわかったことがある。

 手術は成功したと医者は言っていた。

 健康な左腕を動かしている神経を右腕につないだ。によって、右腕が動かせるようになった。でも、だからどうなるということを、医者はわかっていたのだろうか。

 だとしたらまったくの説明不足じゃないか。


 確かに右腕は動くようになった。ただし、左腕を動かす時に同時に動く。そして右腕を動かそうとすると左腕も同じ動きをする。つまり、両腕が左右対称に同じ動きをするのだ。どうしても片方だけを動かすということができない。


 今のところ俺が得意なのは拍手と万歳、前にならえ、みたいな感じで……。

 


 

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片腕 織末斗臣 @toomi-o

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