適当にいこう

シヨゥ

第1話

 『振り返ってみれば早かった』ということは振り返るまでは焦れるほどに遅かったということだろう。

 ではいつ振り返るのか。そんなの決まって終わりを迎えたときだろう。中間報告として振り返ることもある。だがそのときに思うことは『振り返ってみれば早かった』ではなく『まだ先は長い』だろう。きっと進みの遅さに焦れていることだろう。

 そんなふうに振り返って、焦れて焦れて焦れて。ゴールする前に心がポッキリといきかねない。だからなにか始めるときは自分に、そして周りに言い聞かせるように、

「適当にいこうぜ」

 と声を出す。短距離走と思っていてもいつの間にか長距離走に変わることも多い。それを走り切るのが目的なのだからそれぐらいが丁度いい。

「適当にいこうぜ」

 今日も朝から声を出す。1日は長い。適当にいこうじゃないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

適当にいこう シヨゥ @Shiyoxu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る