第6話 #冒険者 #人間捨ててる #こりゃ勘弁
「ヒャッハー!! 研究者、マジバカなんじゃねぇの!!」
「あぁ、なんとか大とか出る前に、人間としての常識を学べってのなっ!!」
「普通にダンジョン内について来るって、愚かとしか言いようがないですね。すなわち、殺されて当然」
そう言って、研究者を殺した冒険者3人組は、手慣れた様子で彼女が背負っていたバックパックの肩紐を切ると、そのまま自分達のアイテム袋の中に入れる。
この3人----お察しの通り、初めから研究者を殺すつもりの冒険者であった。
敢えてこういった、研究者や学者先生などといった相手にするのが難しい偉い人達の護衛を率先して受け、一定のペースを持って、殺して奪い取るという手段で荒稼ぎをする集団である。
ダンジョン内は、無法地帯。
たとえ魔物に殺されても保険適用外な場所ならば、人の手によって殺されようが同じこと。
それに偉い人達は自分達が殺される事よりも、ダンジョンの珍しい素材に目が惹きつかれてしまい、最終的にはそれが殺されて奪われるなんて想像もしない。
「それに偉い人達は、俺達のようなバカをどうせ見下してるんだろう。だから殺されて当然」
「「そうだ!! そうだ!!」」
「その上、丁寧な素材回収してくれたおかげで、けっこう高値で売れるしな!」
「「そうだ!! そうだ!!」」
市役所の連中はどうせ気付かない。
自分達のパーティーと同行した研究者や学者先生の死亡率を見ても、他のパーティーでの護衛した時の死亡率と合わせるようにしているから気付かれない。
警察だってどうせ気付かない。
自分達が、ダンジョンで素材を綺麗に取る冒険者や研究者を選んで、十分集まった所で殺そうとしている、なんて動機までは辿り着けない。
「「「(((そう、俺達は無敵の冒険者!!)))」」」
そして、さっさと帰って、今回はどんな言い訳をしようかと考えて----
「まったく、非道な人達ですね」
斬り飛ばした頭を持って現れた、渡辺深雪という研究者の姿に驚愕するのだった。
「ばっ、バカな!! 完全に首を落としたはず!!」
「頭だって転がっていたしよ!!」
「幽霊!? 怨霊退散!!」
3人の冒険者は、突如として蘇った研究者に驚きを隠せなかった。
なにせ、心臓だと稀に外してしまうから、わざわざ首を斬って、頭と身体を完全に分離させているのだ。
さっきまで渡辺深雪の頭は床に転がっており、完全に動けるはずがないのに----。
「よし、今日から心機一転と参りますか」
と、渡辺深雪は、突如として、ぽいっと、ゴリラがバナナの皮を捨てるようにして、自分の頭を捨てる。
「「「----捨てやがった!!」」」
「で、今度からはこっち!!」
身体から喋るという謎技術を披露しつつ、懐から大画面スマホを取り出した。
そう、巷で噂の"iP〇d"と呼ばれるアレである。
そんなアレを、頭があった位置にちょこんと乗せる。
すると、大画面スマホの電源が勝手に入り、先程までのもじゃもじゃ頭の深雪の姿が映っていた。
『もう! びっくりしゃいますね、本当に』
と、画面の向こうの深雪が、気楽に話しかけるが、冒険者3人は震えが止まらなかった。
なにせ首を斬り落としても死なず、このように頭の部分に大型スマホを取り付けて顔を映すだなんて----キャパシティー不足になっても仕方がない状態であった。
つまりは、深雪に恐怖しているのだ。
『スキル《テセウスの船》というらしいですよ』
いつまで経っても、喋らず、怯えてばかりいる冒険者3人を見て飽きたのか、説明しようと思ったのか。
深雪はそう言って、話を続ける。
『自分の身体が傷ついて失われても、代替物をくっつければ修復できるというスキルで。まぁ、頭を失くすのはこれで
"テセウスの船"----それは神話の物語である。
テセウスという英雄は立派な木造の船を持っていたが、木材が朽ちると、取り外して新しい木材へと変えていった。
そして最初の30本あった木材が全て朽ちて、30本全てが新しい木材となった時----それはテセウスが最初から持っていた船と同じか否か、という話。
この渡辺深雪も、頭を失ったため、代替物として大型スマホを乗せて顔の代わりにしているということなのだろうか。
「「「(とは言え、もう既に人間は捨ててるようだけど)))」
カモにしてやると甘く見ていたからちゃんと見ていなかったらしく、渡辺深雪の身体は全て人間本来が持っているモノではなかった。
腕は多くのコードが複雑に絡み合って、色を肌色に変えて目立たなくしており。
足も金属製の鉄箱かなにかを積み上げて作っているらしく、身体も良く見ると金属質なメタリックカラーへと変貌を遂げているようだった。
「もうバレても良いや」、そう思って自分が人間でない事を見せつけている。
3人の冒険者は、渡辺深雪という冒険者をそう断言した。
『----さて、とりあえず殺された借りくらいは返しましょうか』
うねうねと、腕の擬態をやめたコードが、3人の冒険者へと迫って来る。
慌てて身構えようとするが、身体が動かない。
恐怖で動かないというよりかは、目に見えないなにかによって、麻酔をかけられてしまったという感覚に近い。
『安心してください。ただの麻酔で、人体には全然、無害ですので。
それに、あなた達は殺しはしませんよ、
と、ただでさえ人間離れし始めている深雪の身体に、更なる変化が訪れる。
身体の真ん中が、観音開きのようにして開いたのである。
そして中から現れたのは、歯車----全てをすり潰すことが出来る歯車の粉砕機----。
「「「ひっ!!」」」
3人の冒険者の前で、粉砕機が音もなく回転し始める。
音はなくても、歯車の粉砕機同士がぶつかり合う事で時折生まれる火花が、彼らの恐怖心をさらに増幅させていた。
『これこそがこの渡辺深雪----いえ、"不老不死担当のダブルエム"の
この粉砕機に入れると、なんでも新たな物として加工されるのです。----いえ、#素晴らしい #加工技術 #マジ嬉しい という感じでしょうか?』
既に3人は衝撃の連続、もしくは入れすぎてしまった麻酔の影響で意識を保っていないが、そんな事関係なく、渡辺美優紀----不老不死担当のダブルエムは話を続ける。
3人の身体にコードをそれぞれ巻き付け、ゆっくり自分へと、粉砕機の近くへと近付けていく。
『あなた達は、これから生命の神秘を体感するのです!! そう、私の【工場】の力によって!
具体的には #3人粉砕 #3人合成 #1人に集約 みたいな?』
----まぁ、殺されたんだから、それくらいしても良いですよね?
こうして3人の冒険者は殺されず、1人の新たな冒険者として再合成された。
再合成された冒険者は命からがら、ありのまま起こったことを市役所にて話し、そのまま自らの境遇を呪って自害した。
市役所は、緊急の
内容は、【Dランクダンジョン《虚無の封印遺跡》を乗っ取った冒険者、ダブルエムの討伐】。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます