第995話 渡米した男 5
(前回からの続き)
別の時には海外からの患者がやってきた。
イギリス人の有名なミュージシャンだ。
彼女も脳腫瘍に
しかし、この脳腫瘍も
通常の方法では麻痺を出さずに摘出することはできない。
彼女はロンドンやニューヨークの高名な脳外科医たちを
が、誰も手を出さない。
「
そして、ついにボストンのホワイト先生を頼ってやってきた。
「よし取ってやろうじゃないか」
再び
相手が有名人だけに、上手くいったらいいが、しくじったら世界に大恥をさらすことになる。
ひょっとしたら訴えられるかもしれない。
が、今度もうまく手術する事ができた。
この手術でホワイト先生は一躍注目を浴び、有名ミュージシャンの手術経過は雑誌TIMEで詳しく報じられることになった。
これもミリ単位での手術を可能にしたオレたちの三次元画像の勝利だろう。
もちろんホワイト先生も有名人だけを手術しているわけではない。
三次元画像が決定的役割を果たす症例を選んでは治療をしていた。
コンスタントに症例をこなしていると、あっという間に数十例のデータが蓄積された。
そこでオレは論文にして権威ある英文ジャーナルに投稿した。
普通ならすんなり通るはずが、新しい分野だけに
結局、査読を回されたのは2人の定位脳手術の専門家。
そうするとどうしても精度が問題になる。
議論がどんどん精度の方にズレていき「手術時に直接に計測するか、ファントム実験をして誤差を確認しろ」という指示が出された。
オレは発砲スチロールのマネキン
その写真とデータを加えた形で論文を書き直して送る。
もう何度書き直したか分からない。
見事にオレの論文が
ボスのシャロム、大ボスのバログも大喜び。
もちろん
ホワイト先生に至っては事あるごとに皆に自慢してくれた。
この論文作成でコツらしきものを
今度は脳外科のエリクソン先生の症例を使って論文を書いた。
オレが書いたドラフトをエリクソン先生のオフィスに持っていき、手直しをしてもらう。
それを何度か繰り返すうちに形になってきたので、同じジャーナルに投稿した。
今度は「よく出来ているが、前回のお前の論文との違いを説明してくれ」という
エリクソン先生も大喜び。
もちろんシャロムやバログの名前もオレは抜かりなく共著者に入れておいた。
この論文が通った頃から周囲の扱いが変わってきたように思う。
それまではエリクソン先生のオフィスを
次第に秘書が優先的に取り次いでくれるようになった気がする。
やはり米国は "
成果を上げればストレートに評価されるのは嬉しかった。
(次回に続く)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます