第115話 2週間で辞める女
今回は医師事務作業補助者について述べたい。
通称、医師事務と呼ぶ。
彼女らは医師に代わって書類の下書きをする。
そんな難しい医学的な診断書なんか書けるのか?
誰もが持つ疑問だが、これが案外難しくはない。
というのも診断書は必ず提出先があり、先方が医師であるとは限らないからだ。
というか、まず99%は医師ではなく、普通の人だ。
普通の人が読んで理解することのできる書類なんだから、書く方も普通の人でOKだって理屈になる。
むろん警察からの捜査関係事項照会書のような込み入った書類は最初から医師が作成しなくてはならない。
医師事務になるのに特に資格は要らない。
性別も限定してはいないが、今までのところ男性の医師事務は見たことがない。
ウチの病院なんか、応募してきた人ほぼ全員を採用している。
だから色んな人が採用される。
ワープロを打つのは初めてですとか、前職はコンパニオンでした、とか。
時給は1,300円弱なので、結構いい値段だ。
それでも2週間経たないうちに辞める人が多い。
自分には向いていないと思うのだろうか。
もう慢性な人手不足なので、医師事務は常時募集中かつ全員採用だ。
能力的な事の他に人間関係というのも難しい。
ベテランが新人に指導するのだが、いくら教えても覚えてくれない。
「ウキーッ!」となって辞めてしまうのがベテランの方だったりする。
また、「〇〇さんが私の悪口を言ってます」というのも良くあることだ。
聞き役は診療局長で、女性だからうまくとりなしてくれるはず。
誰もがそう思っていたが、実際には違うらしい。
「悪口を言ってるはずの〇〇さんの方を呼んだら、今度は全く反対の話を聞かされるんです。もう私はどうしたらいいのよ?」
最近は各診療科の外来にバラバラに配属することによって人間関係の問題が減ってきた。
1つの部屋に同じ職種が何人もいるから人間関係の問題が生じるのだ。
外来であれば医師、看護師、クラークと、職種も役割も違う人間が混在しているので、その中にいれば特に問題はない。
書類作成で何か疑問があれば、すぐに医師に尋ねることも可能だ。
というわけで、今は何とかなっている。
オレたち医師も彼女らに頼り切っているから、急に辞められたら大変だ。
とは言え、これからも思わぬ事があるのだろうな。
何があっても受け容れる心構えが必要だ。
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