私をスキーに連れてって。その心は『あの味を求めて』。

いなんちょ

第1話 出会いは30年前、場所はスキー場。

 今日はちょっとタイムマシーンに乗ってみようか、30年前へ戻るために。『あの味』を思い出すために。


 時は30年前、私は小学校高学年。通っていたスイミングスクールの企画で、スキー教室が開かれた。参加は任意。雪が滅多に降らない地域に住んでおり、スキーは未経験。一面に広がる銀世界を想像したら、スキー教室のことで脳内が埋め尽くされてしまった。体力づくりと言うていの良い理由で親を説得し、仲良しのユリカちゃんを誘って、いざ雪国へ。


 はじめて見る、一面に広がる銀世界。はしゃいで火照った私を、ふわふわで冷たい雪がそっと冷ましてくれる。やや重たいスキー板を身に着け、慣れない歩行でリフトへ乗り、地面へ降りるのもひと苦労。でもそれすらも楽しくて嬉しい。仲の良い友達と一緒だからなおさら。


しかし楽しい時間と同じくらい、厳しい時間もたっぷり味わうこととなる。目的は雪遊びではなく、スキー教室。忘れていた訳ではないが、いざ始まると想像を絶する『修行』のようだった。足をハの字に開くことすらうまくいかない。

思えば水泳も、はじめの頃は水中で動きをコントロールすることが難しく、もどかしく厳しかった。もしかしたら似ているのかもしれない。はじめてのスキー、なかなかのハードスポーツだと思い知らされた。


数時間のレッスンを終え、休憩時間を迎えた。心地よい疲労感に抱かれながら食堂へ向かう。これからみんなでお昼ご飯、当たり前だけどもメニューは全員同じ。献立が発表されて私は愕然としてしまった。

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