第12話
ネバーランドの入場門は、逃げようとする客でごったがい………なんてレベルではない。
ニクスバーンとブラックニクスバーンの戦いに巻き込まれれば、命はない。
いくらバカな客達でもそれは理解できた。
が、問題はその数である。
「早く通してよ!」
「助けて!死にたくない!」
ネバーランド内にいた、総勢数百万人の人間が、門に向けて殺到したのだ。
モリタが費用をケチって警備員をほぼ置かなかったが故に、避難もスムーズに進まない。
結果、まるで戦争から逃げる難民のような事になってしまっていた。
「早く通せよ!」
「何しやがる!この!」
「てめぇ!!」
ある者は、自分が助かりたいが故に他の客と殴り合いを始めた。
「こ、やめ、やめて………ぐぴィッ!?」
ある者は、避難する客の集団に潰されて、圧殺された。
誰しもが、本来ならばだれかの良き家族であり、良き恋人である。
いくら、自分達が搾取する側という自覚がなく、また愚かであったとしても、その罰というにはあまりに重い報いである。
そんな、死と破壊の地獄絵図が繰り広げられる中、この狭い夢の島・ネバーランドは、二体のスーパーロボットの戦場と化していた。
………………
『フェザーミサイル!!』
『フェザーミサイル!!』
ニクスバーンとブラックニクスバーンの両肩が展開。
そこにから、鳥類の羽を模したような形状のミサイル・フェザーミサイルが次々と射出される。
それは眼前の互いの相手に向けて、猛スピードで飛来する。
そして。
ずどおおっ!!
空中で激突した。
双方の放ったフェザーミサイルの威力も、誘導能力も互角であり、双方のフェザーミサイルは相手に着弾する前に互いにぶつかり合い、爆発。
ニクスバーンにもブラックニクスバーンにも、命中する事はなかった。
『ぐ………閃光よ、天馬となりて、今こそ汝の敵を貫かん………!』
飛び道具は、フェザーミサイルだけではない。
アズマの詠唱と共に、ニクスバーンの左手に弓が出現する。
スレイプニールアローだ。
ニクスバーンが右手を添え、弓を引くような動作をする。
すると、大気中の魔力が集中し、たちまち光の矢が形作られてゆく。
『なら、こちらも………』
『そんなッ!?』
対するブラックニクスバーンの右手にも、なんと同じ弓が出現する。
ニクスバーンを完全にコピーしているのなら使えるのは当然であるが、ブーケトスが命を燃やして与えてくれたスレイプニールアローをこうも簡単にコピーされるのは、見ていて複雑な気分だ。
『く………スレイプニール………ッ!!』
故に、アズマはよりいっそう力を入れて、ニクスバーンに弓を引かせる。
すると、大気中の魔力が集中し、たちまち光の矢が形作られてゆく。
ブラックニクスバーンの方にも、同じように光の矢が形成されていく。
『アロォォーーーッ!!』
どしゅうううっ!!
轟音を立てて、両者の光の矢が激突する。
その威力もまた、互角であった。
空中で激突したスレイプニールアローは大爆発を起こし、衝撃波と爆煙は周囲のモニュメントやアトラクションを薙ぎ倒す。
『ニクスカリバァーーッ!!』
爆煙を引き裂いて、ニクスバーンが現れる。
その腕には、近接戦闘用の武装である剣・ニクスカリバーが握られていた。
飛び道具がダメなら接近戦で、というワケだ。
『ふん………ニクスカリバー!!』
だが、ニクスバーンにある武装という事は、当然ながらブラックニクスバーンにもある。
その腕の「袖」のようになった場所から、剣の柄のような物が飛び出す。
ブラックニクスバーンがそれを掴むと、たちまち刀身が形成され、それはブラックニクスバーンの剣となった。
発動プロセスも、オリジナルのニクスバーンとまったく同じだ。
『だりゃああ!!』
『はあああっ!!』
バキィィィン!!
ぶつかり合う刀身!
飛ぶ衝撃波!
50mのスーパーロボット二体が剣をぶつけ合うというその衝撃は、テイカー同士の剣撃とは威力の面では比べ物にならない。
あの激しさが、50mにまで拡大されて行われているとしたら、その凄まじさは解るだろう。
『アキヤマ・アズマくん!君は一つのミスを犯した!』
『何をですか!!』
打ち付けるニクスバーンを刃を、ブラックニクスバーンはある時は受け止め、可能な場合はヒョイヒョイと避ける。
そのステップが、ネバーランドのアトラクションの一つを蹴り飛ばした。
『見た所君は
『ニクスバーンの操縦と、実際の剣術は関係ないですよ!』
一瞬の隙をつき、ブラックニクスバーンが攻めに転じた。
まるでフェンシングを思わせる動きで、ニクスカリバーの刀身を次々と打ち付ける。
ニクスバーンはというと防戦一方であり、ブラックニクスバーンが放つ刃はその刀身や装甲をガツンガツンと突き、ニクスバーンを後退させる。
『それはどうかなぁ!?』
『うわあっ!?』
アズマの反論に対して正論を突きつけるがごとく、ブラックニクスバーンが放った突きの一撃が、ニクスバーンの巨体を大きく吹き飛ばし、ニクスバーンが倒れた事で背後にあったアニメキャラのモニュメントを押し潰した。
ズドォォ、と、コンクリートを含んだ土埃が舞う。
『この………フェニックスモード!!』
対するニクスバーンは、最後の賭けに出た。
武装の中でも最大威力の技を使うつもりである。
ガゴガゴと各部が変形し、人型のロボットモードから、鳥を思わせるフェニックスモードに変形し、大空に舞い上がる。
『ならこちらも………フェニックスモード!!』
怪盗ウォッカも、それに答える事にした。
舞い上がったブラックニクスバーンの、腕が畳まれ、足が畳まれ、翼が展開。
オリジナルと寸分変わらぬフェニックスモードへと変形してみせた。
舞い上がり、対峙する赤と黒の二体のニクスバーン。
方や燃えるような赤き炎。
方や凍てつくような青き冷気を纏い、互いを目指して突撃する。
『『フェニックスストライィィィィィィクッッッ!!!!』』
互いの全身全霊を乗せて放たれる、ニクスバーン最大の武器・フェニックスストライク。
赤と黒、二体のスーパーロボットの最大の必殺技がぶつかり合う。
当然ながら強烈なエネルギーによる衝撃波や、魔力エネルギーが辺りに四散。
それが、ネバーランドの施設を、アトラクションを、モニュメントを次々と破壊する。
原作の設定を無視して無意味にキャラが次々と登場するライドは吹き飛び、前髪の造形が明らかに違うキャラの立像は砕け、キャラの顔面を象った下品な施設の門は焼け落ちる。
そして。
『フフフ、アキヤマ・アズマくん!テイカーを始めて日の浅い君が、よくここまで戦えた………だが!』
ニクスバーンとブラックニクスバーンの力は拮抗していた。
同じエネルギーと、同じパワーがぶつかり合う。
両者の性能は同じなのだから、当然である。
『やはり君は………
『な………ッ』
ジャコン。
という音と共に、フェニックスモードに変形したブラックニクスバーンの機首から、巨大なガトリングの砲身が生えてきた。
………そうだ、このブラックニクスバーンは怪盗ウォッカがその能力で産み出したニセモノ。
元の機体構造など、やろうと思えばいくらでも無視できるのだ。
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