68ページ目.君が恋をするなんて、ありえないはずだった
二学期の期末テストが始まった。
そしてライブ配信アプリ『showtime』で、
テスト期間中なので早く学校が終わる。
オレは学校が終わり次第、テスト勉強するのではなく、すぐさまその足でバイト先へと向かった。
オレ以外に他にこんな高校生がいるなら、SNSでもいいからぜひ交流してみたい。
バイトはちょうどポスティングの仕事の募集っていうのがあったので応募してみた。
面接も履歴書もいらないので、そのまま指定された場所へと電車に乗って行く。
卒業漫画は冬休みに遊ぶ時間を削って完成させることにした。
納得のいくラストが思いついたのは嬉しい。
カーテンに包まれた裸のヒロインから主人公が告白を受けるっていうのは、なかなかいい終わり方じゃないかなって思う。
でも漫画は後回し。
とりあえずは学校が終わったらバイト、それから夜はライバーイベント応援のために阿舞野さんの配信の視聴、そして配信終了後に受験勉強、という三本柱の生活サイクルでいくことにする。
阿舞野さんはライバーとして人気があるので、予選は夏同様、軽く通過するだろう。
気にはかけながらも心配しなくていいと思う。
だからオレが稼いだバイト代は決勝に全投入することにしている。
オレは現場に着くと、指示通り住宅街をウロウロしてピザ屋のチラシをポストに入れまくった。
三時間ほどの短時間での仕事だったのでバイト代は少ないけど、お金をもらえるのはけっこう嬉しい。
これが自分の漫画が売れて入ってくるお金だったら、なおさら嬉しいだろうな。
『スティックトゥギャザー』で誰かに数秒のプロモーションビデオをにアニメで作ってもらって販売しようか?
あのサイトでは自作を販売することも可能なのだ。
その日はやはり慣れないことをしたので、家に帰るとオレの身体は疲れ切っていた。
自室のベッドにダイブする。
でもこのまま朝まで寝るわけにはいかない。
阿舞野さんの配信を見て無料アイテムを投げて応援、プラス受験勉強しなきゃ。
とりあえず晩ごはんを食べて、眠い体に鞭を打って、ライブ配信アプリ『showtime 』を起こす。
『群光ライバー部♡うーめろroom』をタップして、開始時刻まで待つ。
5、4、3、2、1、ゼロ。
『みんな、こんばんはー♪』
時間ちょうどに、阿舞野さんがオレのスマホのディスプレイに現れた。
ふだん学校で見ている顔なのに、スマホで見るといまだに新鮮に見える。
高速で流れるファンの挨拶コメントと同時に、投げ銭の代わりであるアイテムが飛び交った。
『アタシ、今回が高校生最後のイベントなんだよね。だから絶対に優勝したいから、最後も応援爆上げでよろしく!』
画面の阿舞野さんがペコリと頭を下げた。
配信がさらに盛り上がる。
この大勢のファンがいるライバーが、オレのことを裸になって好きって告白してくれた人だなんて。
今思えば、なんだか非現実的な出来事だ。
ファンがこのことを知ったらどう思うだろう?
こんな男とは不釣り合いだよ!って、集中砲火で叩かれそうな。
まあ、それは仕方ないこと。
オレだって、去年までは住む世界が違う阿舞野さんと交わって、しかも彼女がオレに恋をして告白するなんて、そんなことはあり得ないと思っていた。
いや、そもそもあり得ないはずのことなので、想像の必要すらいらなかったこと。
ただ、今までも阿舞野さんは女子として可愛いとは思っていたけど、告白されてからというもの、オレの目にはより一層可愛く映るようになっていた。
なんていうか、相手の良いところしか見えない……、みたいな。
それに彼女の顔を見ていたら……、なんだか疲れた体にもやる気が湧いて、力が漲ってきた気がする。
もしかしてこれが恋の力というものなのだろうか。
よし、配信後の受験勉強も頑張るぜ!
オレはスマホを高速でタップし、無料アイテムを全部阿舞野さんへと投げた。
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