62ページ目.怯まぬ態度
新しいアイデアをラノベ部部長、
もちろん、授業中にお漏らしっていうアイデアなんて、実際にやろうと彼女を誘うわけじゃなく、報告の意味で見せるだけだ。
そう、見せるだけ。
あくまでも見せるだけだぞ。
「ゆらっち、お疲れー。待たせた?」
阿舞野さんが笑顔で現れた。
「いや、オレもついさっき終わったとこ」
二人で学校のエントランスを出て、並んで歩いて駅へ向かう。
「いやー、ライバー部もいよいよ引退だよねー」
阿舞野さんが言った。
ライバー部は所属中になるべく多くのイベントに出たいって人が多いため、三年の引退時期が遅い。
漫画部も遅くて、今月いっぱい活動する。
いや別に引退してもよかったんだけど。
いい加減な部活だから。
ただ、今オレが描いている今年の代表作は絶対に完成させたい。
その為に阿舞野さんに協力してもらっているのだから。
だからオレは雨宮瑞葉にもらった、この最後のアイデアを描けば終わりにする。
まあ、最後は想像で描くつもり。
あんなプレイ実際にやるわけには……。
「ところで阿舞野さん、進学するんだ?」
オレは教室で耳にしたことを聞いた。
「あー、あれは嘘。実は決まっててさ」
彼女はあっさり答えた。
「そうなんだ。どこ受けるの?」
オレは続けて質問する。
「ん……、ゆらっちと、同じとこ」
「えっ、阿舞野さんも
驚き。
まさか彼女もオレと同じところを受けるとは。
ということは共に受かったら、また阿舞野さんと同じ学校で過ごすことになるのか。
「受けるところ決めてたのに、なんで友達には決まってないって言ったの?」
オレは頭に浮かんだ疑問を聞く。
「んー、それは、隣にゆらっちがいたから」
阿舞野さんが答えた。
なぜオレがいると受ける大学を答えられないのだろう。
彼女の返事の意図がよくわからない。
でもこの件に関して、なんだか阿舞野さんはあまり答えたくないんじゃないかなって感じて、しつこく聞きまくるのも嫌がられるような気がするので、とりあえず本題に入ることにした。
「ところで、新しい漫画のアイデアをもらったんだけど……」
「マジ!? 今度はどんなの!? 見せて見せて!!」
「それが……」
はしゃぐ阿舞野さんに、オレはためらいながら原稿を渡した。
「どれどれ……」
阿舞野さんは歩きながら目を通す。
オレはそんな彼女を横目で見ていた。
初めは笑顔だったのが、だんだんと真顔になる。
「こ、これって……!?」
原稿を読む彼女の目が見開いた。
流石にこんな原稿を見せること自体、嫌がられたか。
最悪、嫌われたなんてことに……!?
「む、無理だよね、さすがにこれは。まあ、せっかくラノベ部の部長に考えてもらったアイデアだし、これはオレが想像で描くから安心して」
ヤバいと思ったオレは、慌ててフォローする。
「……やる!!」
えっ??
「……いま、もしかしてやるって言った??」
オレの質問に、阿舞野さんは力強い目で「うん!」と頷いた。
なんですとー!!
阿舞野さんは、まさかこのアイデアにも怯まずやるつもりか!?
い、いや、これはきっとオレがリアリティある良い卒業作品を作れるようにとの、彼女の優しさに違いない。
せっかく協力してくれるのだから、ここはオレも覚悟を決めて、これに挑戦するのが礼儀だ。
「よ、よし、わかった! やろう!」
オレの声もつい大きくなる。
こうなった以上、オレがまずやるべきことは?
そう、それは大人用のおむつをドラッグストアに買いに行くことだ。
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