55ページ目.昼のピクニック
また
今日はサンドウィッチ。
空は曇ってるけど、花壇のある屋上で昼休みにちょっとしたピクニック気分だ。
これって考えたら、オレの為に朝早く起きて作ってくれたんだよな。
ありがたさと同時になんか申し訳なさが心に湧いてくる。
オレもそれに見合う、いや倍返しぐらいのお礼をしないといけない。
でもオレは料理なんてできないし、どういうお返しがいいだろう?
いまはそれが思い浮かばなかった。
「ねぇねぇ、今日のサンドウィッチ、我ながら
阿舞野さんが自分の作ったサンドウィッチを食べながら言う。
確かに以前の弁当より美味しい気がする。
「うん。美味しい。このハンバーグが挟んであるやつ、特に最高だね」
「でしょ、でしょ!?」
「これ、今度の文化祭のメイドカフェで出したら? けっこう売れるかも」
「あー、それいいかもしれない。アタシ、前にコスプレ配信した時のメイド服があるし、メイドカフェ超楽しみなんだよねー。あとライバー部主催のファッションショーも出なきゃいけないから、マジ忙しい!」
「オレの漫画部もラノベ部とコラボしてホラーノベルハウスってのをやることになったから、いまその準備で忙しいよ」
「へぇ、面白そう」
「それでその準備でこの間、帰りが遅くなってさ、ふわりちゃんと一緒に帰ったんだ」
「へぇ……、そうなんだ」
「ふわりちゃん、阿舞野さんのお陰で自分が変われたって言ってたよ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、でもアタシは特に何もしてないけどね。それにしても漫画部も楽しそうだなぁ」
阿舞野さんはサンドウィッチを口に入れ、モグモグ噛みながら曇り空を見上げた。
漫画を描くのが好きなオレにとっては楽しいけど、阿舞野さんのようなアクティブな人には漫画部は地味で暗くて退屈だと思う。
「……アタシさ、進路をどうしようか迷ってるんだよね」
「えっ、マジ? 芸能界への道に決定じゃないんだ?」
「別に進学して学生になってからも芸能活動ってできるじゃん? やっぱり若いうちに勉強して知識つけといた方がいいかなって思って。ゆらっち、
「まぁ、一応、第一志望は……」
阿舞野さんはベンチから腰を上げて、オレの前に立つ。
「アタシもゆらっちみたいに進学した方がいいかなぁ。ゆらっちと目標が一緒なら頑張れるだろうし。もしそうなったらゆらっち、勉強わかんないとこ教えて?」
阿舞野さんはオレに向けてウインクした。
そうか、彼女も進学する可能性があるのか。
確かに阿舞野さんと目標が一緒になれば、オレも受験勉強のやる気が湧くかな。
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