46ページ目.海に続く場所にて
海。
それは夏の定番のアイテム。
いや、アイテムという言葉の響きからすると大き過ぎるかな。
とにかくそんな定番のものに、今までオレは縁が無かった。
だけど今年はその海へ、クラスメイトの女子と二人で行くのだ。
約束の日までに、慌てて水着を買いに行った。
今までスポーツなんて学校の体育の授業以外しなかったから、全然身体を鍛えてないのが気掛かりだけど。
そして当日。
駅で
「やっば! 海見えてきたら超テンションあがってきたんだけど!」
車窓から外を見ている阿舞野さんがオレに言う。
阿舞野さんは白のTシャツにデニムのショートパンツ。
爽やかな夏の装い。
露出された艶のある肌が夏の日差しを反射していた。
ところで海へ行くにあたって彼女に重要なことを伝えるのを忘れていた。
まあ、それほど重要ってものでもないけど。
でも海には関わること。
「あの、海に行くのはいいけど……、実はオレって泳げないんだけど」
阿舞野さんに正直に伝える。
彼女は目を丸くしてオレに言った。
「マジ!? アタシとおんなじじゃん!」
意外だ。
阿舞野さん、運動神経良さそうなのに泳げないなんて。
「そうなんだ。ダンス上手いから水泳とかも得意かと思った」
「ダンスと泳ぐのって、あんま関係なくない? それに海水浴場は人が多いからバチャバチャ泳げないよ。だからちゃんと浮き輪持ってきたし。二人でプカプカ海に浮かんどこうよ!」
そう言って阿舞野さんがケラケラ笑う。
なるほど。
阿舞野さんと二人でクラゲにでもなって波の上を漂うか。
駅に着くと、周囲は海の匂いで満たされていた。
駅から見える砂浜には、すでに多くの人が楽しんでいる。
阿舞野さんと二人で海の家を選び、そこでお金払って更衣室とロッカーを借りることにした。
オレが先に着替え終わったみたいで海の家の外で待つ。
それにしても暑い。
今までの夏は家に籠って漫画を描いてることが多かったから、夏の日差しをこんなに全身に浴びることはなかった。
体焼いたり、ビーチボールで遊んだり、浮き輪で浮かんだり、大人から子供まではしゃいでいる。
オレは体育会系じゃなく体に自信ないから、その中に入るのに少しためらいがないと言えば嘘になる。
「お待たせー!」
その声を合図にオレが振り返ると、そこには二人で買いに行ったオレンジ色のビキニを着た、笑顔の阿舞野さんが敬礼のポーズで立っていた。
ビキニの色が、快晴の夏によく似合っている。
「ゆらっちの前でこのビキニ姿披露するの、二度目だね!」
そう言って彼女は笑った。
それにしても阿舞野さんは客観的に見ても最高のプロポーションをしてるな。
こんな女子と一緒に海で過ごせるなんて、実は男子として最高の贅沢なんじゃないだろうか。
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