18ページ目.LIVE!!
これはいまさら言うまでもない。
だから、生徒を時代の流れに合わせて成長させることをモットーにしていて、学校自体が流行の最先端を走ることを目指している。
まだうちみたいな高校は全国的に数少ないけれど、悪い意味での古い考えが社会から抜けてゆけば、今後は増えていくと思う。
そして
うちのライバー部は大手ライバー事務所のバックアップを受けていて、未来のインフルエンサーを目指して人気ライバーを育成する為に、事務所の人が指導に来てくれたりしている。
つまり、卒業した後、芸能人になることも夢じゃない!
自分の漫画部に比べて、なんて恵まれた環境。
なので、いま校内でもライバー部はすごい人気で、部員の数も多い。
その数多い部員の中でも阿舞野さんはルックスの良さもあって上位の人気だそうだ。
ただ、オレは今まで阿舞野さんの配信を観たことがないから、噂レベルでしか知らない。
観なかった理由は、単純に興味がなかったから。
でも高3になって、クラスメイトの阿舞野さんと接近してから、彼女がどんなことをしているのか気になっている自分がある。
と言うことで、阿舞野さんの配信を観る為、初めてライブ配信アプリをスマホにインストールしてみることにした。
阿舞野さんがやってるのは「showtime」だ。
確かクラスメイトの噂によると、そこで「うーめろ」って名前で活躍しているらしい。
学校でも名前のうずめだけじゃなく「うーめ」ってニックネームで呼ばれるのを聞いたことがあるな。
その「うーめ」に可愛く「ろ」が付いたのだろう。
まずは自分のプロフィール登録。
ハンドルネームは、ゆらっちでは正体がバレそうなので、
素早く登録を済ませて、阿舞野さんを名前で検索して探してみた。
「群光ライバー部♡うーめろroom」
あった。これだ。
サムネの顔も阿舞野さんだ。
「初見さん歓迎! かの有名な群光学園ライバー部所属のうーめろです。歌とダンス大好き! タレント目指して日々努力中! 応援よろしく♪」
と、紹介欄に載っている。
よし早速、ルームをフォロー……と。
これで阿舞野さんのフォロワー数が一人増えた。
◇ ◇ ◇
今夜、うーめろこと阿舞野さんが30分だけ配信するそうなので、少し観てみることにした。
スマホの画面に、いつも学校で見る阿舞野さんの顔が映る。
スマホの画面越しに動く阿舞野さんを見るのはどこか新鮮だった。
『みんなやっほー』
阿舞野さんが挨拶した。
やっぱりファンが多いみたいで、けっこうリスナーが集まっているようだ。
『ちょっと待って。なんか曲流すから』
その間にリスナー達が挨拶のコメントを送っていた。
『あ、マークさんいらっしゃい。こぼさんもいらっしゃい』
阿舞野さんは届いたコメントを一つ一つ読み上げて挨拶してゆく。
オレもコメントしてみることにした。
と言っても、配信を観るのは初めてなので、オレみたいなのがウケを狙って変なこと言うと、おそらくスベって痛いヤツになるだろうから、無難に『こんばんは』にした。
『あっ、初見さんだ。みこっちさん、ようこそ、初めまして!』
阿舞野さんが挨拶してくれる。
まあ、初めましてじゃなく、よく知る相手なんだけど。
みこっちの正体がオレだってことは、さすがにバレなかったようだ。
コメントを見ると、ちらほら阿舞野さんの友達っぽい人がいる。
みんな観にきてるのかな。
阿舞野さんと対極の存在である陰キャ漫画部のオレが、このリスナーの中に混じってるとは夢にも思うまい。
それから阿舞野さんは、流行りの曲を歌ってみたり(さすがにかなり歌は上手かった)、学校であったこととか、リスナーとくだらないことを話したりして時間を盛り上げていた。
阿舞野さん自体はいつもと変わらないのだけれど、私服姿とか、歌ってる姿とか、ふだんと違う彼女を見て結構面白かった。
オレは登録してもらった無料アイテムのお花を全て阿舞野さんに投げた。
『みこっちさん、お花ありがとー。それじゃまったねー』と、その日の配信は終わった。
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