両手に華
愛空ゆづ
私は彼女たちに溺れる
仕事からの帰宅途中、私は彼女を見つけた。鼓動が少し速くなるのを感じる。
彼女は私にはとても甘い。私は時々癒されるために彼女を家に持ち帰ってしまう。こんな私を無条件に甘やかしてくれる彼女に子供のようになって甘えていた。一度思い出してしまうと自分が抑えられなくなってしまうのだ。ほとんど会うことがないのが逆にスパイスになってしまい、我慢できずに月に一度や二度手を出してしまう。
家には私を待っているもっと大事なものがあるというのに。
彼女はいつも家で私の帰りを待っていて、辛い事を忘れさせてくれる。気が付くといつも傍にいてくれているのだ。彼女を知る前の私は特に好感を持っていなかった。
失恋をした日、私は現実逃避したくなって夢中で彼女を求めた。初めての大人の味は苦くも強烈な快感で、全身が溶かされてしまったのかと錯覚した。しかし彼女は私にはとても冷たかった。
翌日、私は彼女と自己嫌悪のせいで頭痛や眩暈に悩まされた。その後も私は挫けずに彼女との付き合いを続けた。徐々に私は彼女の事が好きで好きでたまらなくなり、今では彼女なしで居られないほどになってしまった。今でも彼女が冷たいのは変わらないが、むしろそれが心地よいのである。
私は甘い彼女を、冷たい彼女が待つ家に持ち帰る。とても背徳的な響きだ。もちろん彼女達それぞれがとても良いのだが、揃うことでさらに真価を発揮してくれる。
家へとたどり着いた私は真っ先に準備を始める。駅前で買った大人気のチーズケーキを机に並べ、冷えたワインをグラスに注ぐ。まさに両手に華。身も心も溶けてしまうような感覚に酔いしれていく。
私の味方をしてくれるのはいつも彼女達だけだ。
両手に華 愛空ゆづ @Aqua_yudu
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