二刀流の『彼』

霜月二十三

本編

 二刀流、それは武器と魔法を同時に使いこなし戦うこと。

 二刀流、あるいは両手に一つずつ武器を持つ、戦闘者のロマンである!

「行くよ、ボクの長剣と短剣!」


 魔法が使える人間が大多数を占めるこの島において、武器と魔法を同時に使うのは半ば常識だし、魔法以外の戦闘・護身手段を学びたい者には、学園の授業や部活、学園外のあれこれなど、広く門戸が開かれている。

 その中でも彼は、当時の学園において、魔法そのものの威力や精度はもちろん、長剣と短剣の二刀流による武器の扱い方にも長けていた。


 今日は夏の魔法等実技試験、手っ取り早く言えば魔法と武器術の実戦形式の試験の決勝戦の日。

 彼は、数多あまたいる雑魚……失礼、武器術を受講している一般生徒達を蹴散らして決勝戦へ参戦することとなった。


 決勝戦で戦うのは、この島で慕われている聖女を危険から護り、必要あらば聖女を狙い傷つけんとする悪漢等と戦う、聖女親衛隊日常警護班の男子班長や班員らだ。

 まあ、それでも、彼は真の決勝戦まで勝ち抜けるほどの実力を有していた。

 試験のルール上、彼が最も得意とする毒魔法が使えないという、ある種のハンデをもろともせず、勝ち抜いた彼。

 その真の決勝戦の相手は、彼にとって単なる友人以上の相手であり、実力も確かな男であった。


「行くよ、ボクの長剣と短剣!」

 彼の二つの剣は濃い灰色ディープグレーで、魔法によって凍った鉄フリーズスチールと化していた。

 硬いとは砕けやすいと言うこと。

 だが、彼は、むしろ向こうの攻撃を受けて砕けた短剣を地面の砂などと共に攻撃に利用している。

 この島において、毒魔法が使えることと土属性金属や砂を操る魔法が巧みに使えることは、ほぼ両立する。

 もっと言えば彼は、土属性魔法の適性がこの上なく高いので、地面から魔法で植物も生やして相手の動きを封じたり、砕けた短剣を復元したりも可能。

 そんな彼に、相手は負けるしか無かった。


「さ、ボクが勝ったから、約束通り、うちにおいで? いろいろ準備して、おばあちゃんと待ってるからさ」

 彼は実は、二刀流のもう一つの意味も満たしている男でもあった。

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二刀流の『彼』 霜月二十三 @vEAqs1123

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