第31話

 ナイと共に屍人を誘き寄せる場所を探す私こと――四ノ宮真冬。

 ある場所を見つけ、ナイへ提案してみる。


「ナイ。あそこはどう?」

「ん? 公園か」

「ええ。それなりに広いし、遊具もあるから少しは障害になったりはしないかしら」

「真冬はここにいろ。滑り台の上にこれを置いてくる」

「気をつけて」

「ああ」


 そう言ってマネキン担ぐナイ。辺りを確認する彼の首筋が目に入る。

 今まで、上着で首元は見えなかった。でも、マネキンに上着を着せ首元が顕になってあるものが私の視界に映った。


「…………えっ」


 ま、待って……。どういうこと……? 右側の首筋の痣、あれって……。


「うん? どうした、真冬?」

「えっ、あっ、な、なんでもないわ……」


 ナイに声をかけられ咄嗟にそう答えてしまう。


「そうか」


 その一言を呟き、公園に向かって走り去るナイの背中を見送る。


 う、嘘よね……。だって、かげは死んだって……。

 で、でも、あの痣とあの位置は間違いなく景にあったものと同じ……。

 子供の頃、夏休みに海へ行った時に私が見つけた景の特徴。三日月の形に似た痣を、景にこんな痣があるんだねって話たこともあった。景自身、鏡を見ないと見えないから私が指摘するまで本人ですら分からなかったもの。


 それを、私が見間違えるはずなんか……。

 どういうことなの……? どうして、あの痣をナイが……?

 私の思考回路はぐちゃぐちゃに、疑問符しか浮かばない。

 そんな中、これまでのど道中を振り返る。


 案内役というだけでそれ以外のことは無視して構わないはずなのに、私のことを命懸けで護ろうとする姿勢。誰も近寄らない、行きたがらない危険しかない東三番街の案内依頼をナイだけが引き受けてくれたこと。

 依頼料がそれなりにあったから、という考えもできるけれど……それだけで自分の命と天秤にはかけられないでしょう。


 それに、行き道はナイでも分からない部分があるみたいだけど大樹の場所は知っている様子だったわね。今思えば。

 ナイが、語った自分の過去。親に捨てられた、男だった、というのは本当は嘘だとしたら……? 私に自分のことを隠すためだとしたら……。


「見ず知らずの相手を家に泊めるなんて普通はありえないわ」


 初日に見た夢。


『――生きろ』


 あれは、ナイでなはく景なら私にそう言う理由も納得できる。


「なによそれ……」


 ずっと、近くにいたってこと? 景としてではなく、ナイとして……。


「バカ……」


 ずっと黙っていたこと嘘を言うことに怒りたい気持ちより、景に会えた喜びと嬉しさの方が強くて涙が溢れて止まらないっ……。


「や、やっと、見つけた……」


 景……! 私の大切な人……!

 もう、手を放したりなんかしてあげないから。何があっても掴んで放さない。

 逃がしたりもしないから覚悟なさい!

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