第20話
間に割り込み、腕を広げ止める木藤。
……いい加減、分かれよ。秋斗の思いを無下にするつもりか……!
救う方法はもう一つしかないんだよ! 秋斗のまま、死なせてやれよ!
これ以上、彼を苦しませるな! こうしている間も苦しんで辛い思いをしてるって、お前も分かっているだろ!
だったら……!
「それとも、お前は秋斗が無差別に殺戮を繰り返す姿が見たいのか⁉ 多くの人間に撃たれ斬りつけられ傷つき、絶え間なく続く痛みと苦しみ憎悪や殺意に蝕まれる中で死んでいくことになるんだぞ⁉」
僕自身でもこんなに声を荒げたことあったか? と思うほどの声量で早口で言葉を紡ぐ。
それなら、同じ者同士で殺して楽にした方がずっといい、僕はそう考える。
だがここまで言っても、木藤はその場を動かない。
「……っ! そこを退け! 邪魔をするなら貴様も殺すぞ」
怒気と殺気を含み睨みつけ、木藤に言い放つ。クロとアカも、僕の感情が流れ込み牙を見せ威嚇をする。
「――っ。そ、それでも……」
……っ! もういい! 貴様は邪魔だ!
退かない木藤に苛立ち、隣で待機するクロとアカに命じる。
――クロ、アカ。あれは放っておいて秋斗を殺れ!
そう、念じたと同時に秋斗がもがき苦しみ始めた。
『あっ、ああっ……! いいっ、いいぃぅぅううううううううううっ、あああああああああああああああああああああああっ――!!!』
くそったれ! あんな腰抜けと話している間に秋斗の方が限界を迎えてたじゃないか!
『ウウウォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ――!!』
血の涙を流しながら咆哮を上げ暴れ狂う秋斗。
頭を振り乱し、地面を爪で犬かきをするように何度も引っ掻き、腕を振り上げた。その行為に何をするか容易に想像でき舌打ちが出る。
「ちっ。真冬!」
「ナイ……!」
真冬の腰を抱き寄せ、アカに命じ胴体を木藤に巻きつけその場から離れる。
僕らがいた場所は、秋斗によっていくつもクレーターが作られもう少し離れるのが遅ければ怪我だけでは済まなかっただろう。
秋斗の咆哮、腕や脚で地面を殴りつけ、地響きと轟音が辺りに鳴り響く。
「ああなればもう手遅れだ」
僕の言葉にその場に崩れ落ちる木藤。目もくれず、クロとアカを引き連れて秋斗の下へ向かう。
「真冬。悪いが、そこの腰抜けと一緒にいてくれ」
「彼を助けに行くのね?」
「ああ。僕が殺ると言ったんだ」
「そう……」
真冬にそう伝えると、短く答えが返ってきた。命の危険があると、真冬も理解しているだろうが止めることはせず僕を見送る。
それを聞いて、今度こそ歩むを止めることなく秋斗へ近づく。
手当たり次第に攻撃を繰り返し暴れ狂う秋斗。
「すー……、はー……」
息を吸い込み駆け出す。
懸けながらクロとアカに命ずる。
――殺せ。
その命令に従うクロとアカの胴体が勢いよく伸び、左右から大きく口を開け鋭く太い牙を秋斗の肉体へ突き刺し襲う。
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