第12話
三人は銃を構え撃ちまくる。
ドドドドドッ――。
と、言葉にして言うならそんな感じだ。
というか、けたましい音が鼓膜を揺さぶり頭に響く……!
「あっ、耳を塞いでてね」
「もっと、早く言いなさい!」
撃ちながら言い忘れていたことを、今更ながら口にする日輪に耳を両手で塞ぎ怒る真冬。僕も耳を塞ぎ、言うのが遅いんだよ! と真冬同様に内心で怒る。
耳を塞ぎ掃討が終わるのを待つ。
銃声の中に、豪快に笑いながら楽しげな今井と「まだまだよ!」と叫ぶ日輪の声が聞こえてくる。
屋根の上から薬莢が散らばり落ちてくるのをうっとしげに避け、火薬の臭いに顔をしかめる。それからようやく、銃声が止み耳から手を退け辺りを確認する。まだ、屍人が残っていては危険だ。
「終わったわよー」
そう屋根の上から日輪の声がかかる。
大広場には無数の結晶が転がり人工の夕日の光を浴び赤く光る。日輪に連れられ降りてくる真冬。
「ねえ、あれは?」
「ああ、あれは結晶だ」
「結晶?」
「屍人を狩って倒すと、あの結晶が残る。あれが稼ぎになるからな」
「そうなのね」
三人も降り、結晶を回収していくのを見つめる。
見ただけでも五十はありそうだな。あれだけあれば、それなりの額になるか。数個だけだとお小遣い程度だが、数をこなせばそれなりの金額になる。だから、一網打尽して一気に稼ごうって考えたのだろうが。
「あれ、どれくらいの額になるの?」
「そうだな。一個だとそんなにはいかない。でも、数があれば数万から数十万はいくんじゃないか」
「それで、誰もが屍人を狩って稼ごうって考えるのね」
「まあ、その分、命の危険はあるけど」
そんなことを話す間にも、結晶の回収を済ませた三人がこちらにやって来る。
「手を貸してくれてありがとう。お陰で、稼げたわ」
「そうですか。それは良かったです」
と営業スマイルで返す。隣りにいる真冬は、僕の営業スマイルに少し引き気味。そんな真冬を気にせず、日輪たちに護衛されながら街を出る。
出た先で日輪から、別に欲しくもない予定を聞かされる。
「私たちは中央区に戻って換金するわ。じゃあ、ここで」
「はい。お気をつけて」
当たり障りのない返事をして別れる。個人的には、もう会うこともない……いや、会いたくない連中だ。
初心者向けの街ではなく、中級者や上級者向けの街で屍人の掃討をやってくれないかな。まったく、とんだ目に遭ったもんだ。
予想外なことはこの先でも起こりうる。だから、真冬へ訊く。
「本当にこのまま、東三番街へ行くのか? 今以上の危険があるかもしれないぞ?」
その問いに真冬は、僕の目を真っ直ぐ見つめはっきりと言う。
「行くわ。この先、危険だとしても」
「……そうか」
はあー……。考えは変わらず、か……。一発目の作戦は失敗だなこりゃ……。
このまま空き家が見つからなければ野宿だし……。
そんなことを思いながら、夕日が沈み夜の訪れを教える空を見上げる。
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