三年後の楽しみ
ラウル先生は卒業後、地方勤務になってしまいました。
三年は戻ってこれません。
なんだか寂しくなりましたわ。
お手紙を書こうと思ったのですが、何故かお父様に止められてしまいました。
なんでも、ラウル先生は今が大事な時期らしいのです。
地方での成果を手土産に王都に帰還するのだから、と仰っております。
こればかりは仕方ありません。
お父様と共に調査報告書を読むことでラウル先生の近況を知るに至っております。
調査対象のラウル先生は見習い期間が終わり、親しくなった先輩に連れられて歓楽街に赴いたようです。
例の店に来店し、紹介された女性と良い仲になったそうです。
王都から離れたとたんに骨休みとばかりに羽を伸ばしているようですね。
数ヶ所の店を転々とした後、例の店の常連客として収まったようです。
最初の女性「ライ」がいたく気に入ったようで、彼女ばかり指名しているそうです。
随分と気に入ったようですね。
良かったです。
なにしろ彼女は先生のために
将来を嘱望される官僚に妙な噂が流れてはいけません。
堅物が多い役人の中には女性で身を崩した者もいると聞いております。
先生がその中の一人にならないとも限りませんもの。
お父様は「あの青年の限ってそんなことはないだろう」と言っておりましたが、油断大敵です。「彼なら大丈夫」といった根拠のない自信が命取りになりかねません。
現に、ラウル先生の素行調査を見ても、思った通り、先輩の誘いを断らなかったのですから。
「ライ」を派遣していなければ、今頃、仕事そっちのけで女遊びに精を出していた事でしょう。
ああいった『遊び人』を気取っている男性に限って悪い女に騙されるのです。
ここでいう悪い女というのは、『悪女』とかいう類のものでも『玄人』でもありません。
一般女性の事です。
ワザと避妊をせずにある日突然「貴男の子よ!責任とって結婚して頂戴!」となる可能性もあります。
また、「貴男の重荷になりたくないの。認知なんて望まないわ…ただ、生まれてくる子供に罪はないはずよ。この子が成人するまででいいのよ」と、さり気なく莫大な養育費を請求されないとも限りません。
王都から地方役人になった男性は、田舎娘と侮って、生涯に渡って金を巻き上げられることが間々ある事です。
自分の子供なら良いですが、他人の子供だった場合、最悪です。
まあ、あまり束縛するのもよろしくありませんからね。
縛り付けたりすると男性は逃げてしまうものです。
多少の羽を外さなければストレスで潰れてしまうケースもありますから、息抜きの休息場所は必要ですわ。
それにしても、お父様の息のかかった人員は何処にでもいるのですね。
驚きです。
流石は『敏腕宰相』ですわ。
ラウル先生。
田舎で新しい人脈を作って帰って来てくださいね。
それによって新たな宰相派の構成員が出来るのですから期待しています。
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