ダイエットするぞ!
寝室の等身大の鏡に映る自分の姿はどう見ても「ぽっちゃり」です。
ムニっと、手でお腹周りの肉を両手で掴んでみます。掴めました……フリフリと振ることも出来ます。
……
…………これは、世間でいう処の
いえ、間違いなくおデブさんです!
両親はああ言ってくれましたけど、私は『デブ』なのは本当の事なのです。以前、同じ伯爵家の御令嬢にも「デブね」と言われたことがあります。その時は、令嬢の周りにいたお友達も笑いながら同じようなセリフを吐き出していましたから間違いありません。
ロジェス伯爵家の皆は、私がどんなに『デブ』でも全く気にしません。「女の子は
未来の旦那様が
私の姿はよほど嫌悪の対象なのでしょう。
ありのままの私を受け入れてくださる方と家庭を築いていきたかったのですが……致し方ございません。
これも運命。
貴族の娘として生まれたからには、家のために結婚をするのは当然のことです。
未来の妻として、夫になる婚約者様と良好な関係を築いていかなければなりません!
それに……婚約者様は大変な美形なのです。
お伽噺の王子様のような姿に誰もが見惚れる事でしょう。
きっと、本物の王子様よりも王子様らしいのかもしれません。
今でもあれ程の美少年なのですから、成長なさればそれは素晴らしい美男子に御成りでしょう。そんな方の隣に立つのが『子豚』では、さぞかし嫌なものだったでしょう。
私だって同じです!美
青年の隣には美女が、美少年には美少女が。美しい者同士が隣あった方が見栄良いものです!
鑑賞する側としては見栄えが良いもので揃えたいと考えるもの。観劇では、ヒーローのお相手は『美女』と相場が決まっているものです。ブスの豚女など誰が観たいものですか!劇のヒロイン役を勝ち取るために女優たちが熾烈な戦いを繰り広げ、太る事も許されず、美容に大変気を配っているのがその証拠!
……~~~~~~っ。
いけません。熱く語ってしまいましたわ。冷静に冷静に。
深呼吸で気持ちを落ち着かさなければなりません。
ふ~~~~~~は~~~~~~。ふ~~~~~~は~~~~~~っ。
少しは気が楽になってきましたわ。
ふ~~~~~~は~~~~~~っ。
やらねばなりません。
やり通さなければなりません。
何が何でも、痩せねばならないのです~~~~~~っ!
それもこれも婚約者様のため!
引いては我がロジェス伯爵家のため!
『子豚』から脱却するまではお会いすることは出来ません。
私の覚悟をしたためたお手紙は、後日、スコット公爵様に渡される事になりました。
その返答は謝罪と共に「息子の再教育を実施する」との言葉で締めくくられていたのです。
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