疑問を口にする


ガラガラガラ。



侯爵邸から伯爵邸に帰る馬車の中、私は気になる事を両親に訊ねました。


「お父様、お母様、私は『子豚』なのですか?」


婚約者様に言われ続けた言葉。

それに対して、お母様は激昂され、


「まぁ!なにをいうのです!バーバラは世界一可愛い娘ですわ! フワフワの髪に、ぷにぷにのもち肌がたまりませんわ! 愛くるしいバーバラの良さが分からないなんて!!! 子豚なわけがありません!!!」


私を抱きしめて頬ずりするお母様の目が血走っております。


お父様も、


「まったくだ!可愛いバーバラを豚呼ばわりとは!!! 侯爵家の息子じゃなかったらぶち殺していたぞ!!! バーバラの愛らしさを理解できない愚か者が!!!」


大変な怒りっぷりです。

よほど腹に据えかねていたのでしょう。

お二人とも婚約者様に怨嗟の言葉を吐き続けております。



「あの碌でもないクソガッ、んんんっ!!! スコット侯爵子息に私たちの天使を託さねばならんとは……無念だ…」

「ほんとうに……これほどの不幸が私たちの娘の元に訪れるなんて」

「父親であるスコット侯爵は優秀な男なのだが……何故、あのようなクソガッ、ごほんごほんっ。親に似ない子供になったのか」

「今日、会いました少年は、本当に侯爵様の御子息なのですか? 養子かなにかではありませんの?」

「偽物の息子としか思えんが、本物の息子血の繋がった子だ」

「穏やかな侯爵様とは似ても似つかない粗忽物でしたわ。あんな顔だけの子供とバーバラを本当に婚約させなければなりませんの? 私は嫌ですわよ」

「私とて嫌に決まっている!今からあんな調子では先が思いやられるぞ!口の利き方も知らない人間以下の猿が!!!」

「あなた、この婚約、辞めることはできませんの? バーバラが可哀そうですわ」

「出来るものなら辞めたいのは私とて同じだ。だがこれもだ。従わねばならん」

「そんな! 将来、家庭を顧みない暴力男になりそうな人間性ですわよ?」

「いや、それだけではないぞ。仕事もせずに居座り続け、なおかつ、外に子供を作っても悪びれずに我々に紹介してくる非常識な男になるに決まっておる!!!」

「あぁ~~~~~~っ。なんて悲劇でしょう。そんな男と婚姻しなければいけないなんて……」

「ベアトリス、落ち着きなさい。今から色々と対策を取ればなんとかなるかもしれん」

「本当ですの?」

「ああ、我々がんだ。それでも改心しない様なら‥‥‥な」

「そうですわね!私も愛する娘のためなら鬼になりましょう!!!」


娘の不幸を嘆きながら将来の対策を立て始める両親をただ見ているしかできません。

なにやら不穏な言葉もでてまいりましたが、気にしてはいけませんね。


これでも名門ロジェス伯爵家の娘です。

聞かぬフリも出来るというもの。

ですが、両親の口ぶりから、この婚約を嫌がっているご様子。

何故、私の婚約者にしたのでしょう?

謎です。

侯爵家から持ち掛けられた話なのでしょうか?


スコット侯爵家は歴史が浅い御家柄。

それを補う事が目的でしょうか?

我が家よりも、もっと有力な家は沢山ありますのに……一体なぜ?

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