1.狸の王と花嫁④

3.呪い

「呪いってどういうこと?縫と結婚する以外の方法は無いの?」

「君にかかっている呪いは櫻井家にかけられた古い呪いだ。条件の合う子にかけられてる」

「条件?」

「そう。藤次郎曰く、一、あやかしが見える者。二、女であること。三、幼い頃、成人前に両親と死別していること。えれなは全部当てはまるだろう?」

「ええ」


 私はあやかしが見える女で両親とは既に死別している。


「この呪いは誰がいつ頃何のためにかけたのか全くわからない。18歳になると邪霊に殺される、って事だけわかっている」

「邪霊に?」

「ああ。取り込まれて、殺される」

「でも、何で縫と結婚すると助かるの?」

「んーとね、まず僕がその辺の邪霊よりずっと格上だから。僕と結婚するってことは、僕の庇護下にあるとみなされて邪霊も手出しができなくなる」

「邪霊って強いの?」

「えれなに憑いているのはね。普通の邪霊はもっと弱いよ」


 あの日、縫に助けてもらった日に、いつものお守りで邪霊が消えなかったのは、“アレ”が私に憑いた強い邪霊だったからか。


「縫と結婚する以外の方法はないの?」

「あはは。えれなには結婚願望はないのかー」

「あなたとは嫌よ」

「死ぬ程めんどくさいけど一つだけあるよ」

「!」

「“裏”を統べる鬼神様と側近である十王じゅうおう全員から護りの印を授かること」

「…難しいの?」

「ああ。鬼神様も十王もタダで印をくれるほど優しくない。タダでくれるのは多く見積もって4、5人くらいだ」

 

 さっき会ったばかりの狸のあやかしと結婚して“裏”で暮らすか。

 11個の護りの印を集めて“表”で暮らすか。

 そんなの決まっている。私はあやかしや邪霊と関わらない平穏な暮らしを望んでいるのだ。


「いいわ。十王と鬼神様から印をもらってやる」

「君が18になるまでに終わらなそうだったら止めるよ」

「わかった。それでいい」

「僕は僕で呪いの原因を探るし、できるだけのサポートをするよ。羽衣も手伝いにつけよう。この屋敷、たまき邸で暮らす許可も出そう」

「いいの?本当に印集め終わっちゃうかもしれないわよ?」

「うん。なんせ君は僕の知友、藤次郎の孫娘だ。丁重に、大切に扱うよ」

「…ありがと」

 

 小声で礼をいう私を見て縫は微笑んだ。

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