ウクライナに栄光あれ
加藤 良介
第1話 ウクライナの皆さんに寄せて
2022/2/28の段階において、ウクライナはロシアからの猛攻を防いでいます。
首都キエフはもちろん、第二の都市ハリコフでも防衛に成功しているとのことです。
ここで私は、ウクライナの皆さんに、謝罪しなければなりません。
正直に言います。
まさか、皆さんがここまで強力な防衛戦を展開されるとは、思っても見ませんでした。
皆さんの、国土防衛に掛ける意気込みを甘く見積もっていました。
申し訳ございません。
ミリオタの悪い癖で、現状のロシア軍装備と、ウクライナ軍装備との違いから、二、三週間程度で、ウクライナ全土が占領されると考えていました。
アフガニスタン国軍よりかは抵抗できるだろうけど、国土の半分は放棄して、防衛しやすい場所、例えば西側からの支援物資が到着しやすいポーランド国境付近などの一部地域でのみ、抵抗を続けるだろうと勝手に想像していました。
まさか、国境線でこれほど頑強に抵抗できるとは・・・
私の認識は、ウクライナ軍に対しての侮辱でありました。
申し訳ございません。
ウクライナ軍は、国防に必要なものを我々に身をもって教えてくれていると感じます。
私の上辺の知識は、現実には役に立たないことが証明されました。
上辺の知識の一例として、地図で見ただけですが、ウクライナは平坦な地形が広がる国です。
このような地形で防衛線を構築することは、戦線が長くなりすぎるので、ほぼ不可能のはずです。広く、まんべんなく戦力展開すると、一キロに付き、兵士百人で防衛なんてことにもなりかねません。
逆に、重要拠点に兵力を集中すると、たとえ強固な防衛線を構築したとしても、幾らでもサイドから迂回が可能ですので、最終的に包囲殲滅されます。
ですから、ウクライナの場合は河を防衛ラインとして設定するしかないのですが、ロシア軍はその河沿いに南下する作戦を展開しているように見えます。
この作戦を取られると、河が防衛線として機能しなくなります。
唯一の地形障害である、河が防衛線として機能していない状態でのこの抗戦力。どうやっているのでしょう。
携帯用対戦車兵器を装備した、少数の部隊を重層的に配備して、突出してくるロシア機甲部隊を、各個撃破しているのでしょうか。
いや、理論的には可能かもしれんが、実際にそんな運用ができるのだろうか。
ウクライナ軍にも、相当な被害が出るはずです。
運用は分かりませんが、私にも分かっていることはただ一つ。
「防衛に成功している」
この一言に尽きるでしょう。
この経戦能力の高さは兵器の差ではなく、ウクライナ国軍とロシア軍との士気の差に起因するのではないかと考えます。
逆に言うと、それぐらいしか思いつきません。
旧式の戦闘機しか保有していないウクライナ空軍が、制空権を明け渡していないことも驚きです。
頑張っても、旧式のSU-27を三十機程度しか投入できないはずなのですが。
地対空ミサイルだけでは拠点防衛は出来ても、制空権は維持できないはずです。
時代を遡ると、ロシア軍に頑強に抵抗した例としては、フィンランド軍が挙げられますが、フィンランド軍は湖や沼地といった防衛に有利な地形と、冬の寒さを利用して、強固な防衛線を構築して戦いました。ウクライナとは条件が全く違います。
本当にウクライナ軍は、どうやって戦線を維持し続けているのでしょうか。
上辺の知識は本当に役に立ちませんね。
ウクライナ軍は自国防衛のために必要なものを、我々日本人にも教えてくれています。
まずは、整備された防衛戦力。
これに関しては、日本の自衛隊は合格点でしょう。特に言う事はありません。
次は国の指導者。
ゼレンスキー大統領の態度は立派ですし、SNSを利用した宣伝工作も非常に有効です。勇敢で有能な指導者だと思います。
我が国に彼のような政治家がいるのだろうか。
私は居ると断言できません。
ただ、ゼレンスキー大統領が漢を上げたのは、ロシアの侵攻が始まってからに感じますので、状況が人を作ったのかもしれません。
そして、最大の力はウクライナ国民皆さんの結束力だと考えます。
プーチン最大の誤算は、ウクライナ国民の結束力の高さだったことでしょう。
こう言うと、怒られるかもしれませんが、日本はウクライナにコールド負けですよ。
まぁ、結束しなくても生きていける環境こそ、喜ぶべき事なんですけど。
この戦争で、ウクライナは国際的影響力を増したと考えます。
我々ミリオタがフィンランドに一目置くのは、ソ連の猛攻に決然と立ち向かったからです。
日本のミリオタの中で、フィンランド人を軽く見る人はいないでしょう。
今は、多くの死傷者が発生し、国内インフラも破壊されて、一時的には苦しい立場になるでしょうが、必ずや大きく飛躍すると考えます。
我々西側諸国も、ここまでされたら黙って見ていることはしないでしょう。
第三次世界大戦の可能性が高いので、軍事支援は難しいですが、経済的支援を躊躇う国があるとは思えません。
それこそが、脳みそが二十世紀で立ち腐れている、何処かの老害に対する答えになるでしょう。
ああ、彼にはキングオブ老害の称号を授与することにいたします。逝って良しとは、あの男に掛ける最期の言葉でしょう。
わたし、加藤良介は、ウクライナ国民とウクライナ軍に対して、尊敬の念を表明いたします。
次はロシア国民が、行動する番でしょう。
ウクライナの抵抗と西側の支援だけでは、残念ながらこの戦争を終わらせることはできません。
最後のキーパーソンは、ロシア国民だと考えます。
終わり
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