第2話 真っ暗な画面の中での相談

 19時55分 昨日告知と呼べるかもわからないような呼びかけをした時刻、その5分前。


 前回の閲覧者はゼロ。ゼロである。


 パソコンの前に座りながら考える。我ながら何をやっているんだろうと。


 ゲーム用に持っていたマイク付きのヘッドホンのおかげで声は入れられる。でも、カメラなんてないしこれじゃあ誰もこないのではないか?


 いや、いいんだ。むしろ、誰も来なくていい。誰かに話したい!誰もいないのに誰かに話すってなんだよとも思うが、この思いを発散できるならもうそれでいいような気がする。


 20:00になった。ドキドキしながらビデオマークの配信ボタンをクリックする。


『こんばんは。ケイです。ドキドキしたけど、誰もいないよね。んんっ。じゃあ、さっそくですけど話していきたいと思います。』


 椅子の上で気持ち姿勢を正す。誰もいないとはいえ、これは公開されているのだ。


『僕はその、高校二年生なんだけど、半年くらい前から気になる子がいるんだ。』


 これまで友人にも打ち明けていなかったことを語ることにドキドキする。リスナーさんなんて誰もいないのに。


『一年生のころはクラスメイトだったんだけど、この春学年が上がったら違うクラスになっちゃってさー。これまでは授業中とかちらちら見て満足してたのが廊下ですれちがったり、教室を覗いたりしないと見かけることもできなくなっちゃって。』


 もしかしたらキモいのかな?って思いながらも探してしまうんだよなぁ。


『なんか、やきもきするんだよね。彼女、友達が多いから男の子ともよく話してるの見るし。まだ5月だから新しいクラスメイトとそんなに親密にならないだろうけど、はやくしないと誰かと付き合いはじめちゃったりするのかなって、、』


 動かないといけないのはわかってる。でも、自分に自信がない。だれかに背中を押してほしいだけ。


『ちなみに、僕はクラスメイトだった時もたまに向こうから話しかけられた時に返事をするくらいで、全然仲のいい友達とかじゃなかった。』


 自分で話しててへこんできたな。


『だ、だめだ落ち込んできた。もし、もしもこんな僕にアドバイスしてもいいよって人がいたらコメント欄に書き込んでほしいな。あと、その、配信見てもいいよって人がいたら都合のいい時間も書き込んでほしい。学校とかぶらなければその時間に配信するよ。じゃあ、またね。』


 配信終了ボタンをクリックする。ふぅ、、緊張したー。結局誰も来なかったけど、なんかお腹につまってたもの吐き出せたような感じがする。高校生とか言っちゃったけど大丈夫かな?学校名だしてないし、いいよね?


 アーカイブに残った、やっぱりそんなに長くない真っ暗な配信動画を見返しながら恥ずかしさに悶える。なんで自分の声ってこんな変な感じするんだろう?でも、こんなに短い時間だったのに疲れたなぁ。なんだか、今日はよく眠れそう。























 コメント



 マーフ:せめて映像つけなよ。急に告白とかされても迷惑だろうからまずは会った時に会釈するとこからだな。5月X日の18時からならあいてるよ。

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