《一葉のクローバー》理不尽な時間制限
意を決して病室に入ると、そこにいるの
は何事もなかったかの様な、でも退屈そうにしているお母さんの姿であった。
「ち、ちわ~す!結構早く来たつもりだったけど………遅かった??」
苦笑いをしながらパイプ椅子を組み立て座る。
「も~、遅いっ!退屈すぎて死にそうだったよ!」
お母さんはそう言って顔を顰めたあと笑った。だけど、その笑顔がまた僕の胸を締め付けるのであった。会話はいつものたわいもない話。いつもと違っているのがお母さんからの応答が
「うん、うん、へぇ、そうだったんだぁ」
の軽い相槌のみだけではある。しかし、返事が貰えてるだけでも、僕はとてつもなく嬉しかった。時間が経つにつれて兄貴や親父が病室に訪れてきた。その空間だけ、まるで我が家のリビングにいる様な雰囲気だった。その分、そこから抜け出す時が異様に恐ろしかった。家のリビングにいるのなら
「さようなら」
は要らないはず。面会時間までは二十時まで。館内放送と共に僕たちはお母さんに宣言した。
「明日はもう少し早く来れる様にするから!!」
お母さんはニコッとするだけであった。
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