《一葉のクローバー》寝ぼけと現実
「おい起きろ!!」
どうやらあのまま台所で寝ていたらしい。
「あのな、お前にはこれはまだ早ぇ!」
ゴンッ!!
酒の空き瓶を額に軽く当てられた。
(僕が呑んだわけでは……)
と言おうと思ったが、親父は心配と怒りが混ざったような複雑な顔をしていた。それもそうだろう。今まで呑んだりしない息子が飲んだのだ(呑んではないのだが)。それもこのタイミングでだ。
「ごめんなさい」
その言葉しか出てこなかった。兄貴は朝一で色々物を取ってくるためにアパートに戻ったらしい。で、また夕方病院に寄ると聞かされた。暗い顔をした二人組が食器を並べ、そして二人は席につき、手を合わせ
「いただきます」
と言った瞬間、僕の膝に、いつの間にかあの座敷童子がチョコんと座っていた。
(座敷童子って恥ずかしがり屋であまり人前に出てこないのでは……)
「おっ、親父ぃ……何か見えない??」
「あ?お母さんのことでショックなのは分かるが、俺たちがショックを引きずっててどうする!!チャチャッと食べて、お前は学校に行け!!」
(そんな親父の喝もなんのその、座敷童子はかわいい顔しておむすびを頬張ってやがる!はぁ。今日はいいや今日は。酒を呑んでないけど酔ったことにでもしとこう)
鍵を閉めてダッシュで駅へ向かった。情緒あふれる緑やピンクの花びらを横目に一目さんに駅へ向かった。駅に着くとすぐに電車が来た。電車に乗ると、いつもの僕の定位置に何故か座敷童子(その時ザシコと名付けた)がちょこんと座っていた。家にいる筈では……。するとザシコが
「おい、席取っといたぞ!!」
腰に手を当てとても自慢げ。イラっとするが可愛い。そこがさらにムカつく。一先ずザシコが取っといてくれた?席に座りザシコを膝の上に乗せ列車は走り出した。
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