第125話 竜の巣消滅

“レベルが上がりました…”

“レベルが上がりました…”

“レベルが上がりました…”

“レベルが上がりました…”

 …

 …

 …

“レベルが上がりました…”

“レベルが上がりました…”


 鳴り止まないレベルアップのアナウンスが、女神のかけらが消滅したことを物語っている。

 だが、心は晴れない…勝利を喜ぶ余韻に浸る気分になれなかった。


「ドルフ…」


 俺達を勝利に導くために犠牲となった仲間の名前が、ポロリと口から溢れた。


(お見事です!魔王様!)


「は?お前…生きて…?」


(のようですな。ハハハ…)


「ハハハ…じゃねぇ!どういう事だ?」


(身体が消滅した瞬間、いつも、控えている白い空間へ移動したようなのです。元々、我らは魂だけの存在。魔王様の魔力とスキルで肉体を再構築しているにすぎません…おそらく、魔王様がいる限り、我らもまた不滅の存在なのだと思われます…)


「不滅の存在…そうか…とりあえず呼ぶぞ!ドルフ召喚!」


 …何も起きない


「どういう事だ?」


(強制的にこちらへと戻された場合、外への扉が開かないのかもしれませんな…)


「なるほど…そういうことか…」

 クールタイムのような物があるのかもしれないな…



「真央っ!」

 咲希がみんなと一緒に駆け寄ってくる。

「みんな…無事だったか?」

「うん…」

「すまない…まさか、隠れていたところを狙われるとは思ってなかった…」

「いや、アルスちゃんが守ってくれたから、大丈夫だ。それより…ドルフさんが…」

 咲希達も見ていたのだろう…悲痛な顔をしている。

「いや、それがな…ドルフは無事みたいだ」

「そ、そうなのかっ!?」

「ああ、今、本人と念話で話していたところだ」

「そうか…よかった…」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……………!!!


「ダンジョンの崩壊が始まったみたいだな…みんな、脱出するぞ」

「「「わかった」」」

 今、ドルフは呼べないみたいだから、ここは影狼達に頼もう。


「シャドウナンバーズ!みんなを麗華の屋敷へ」

「「「「わかりました」」」」


 影が俺達を包み込み、一瞬の暗転の後、俺達の目の前には、出発前に立ち寄った大きな屋敷がそこにあった。

「終わったんだよ…ね?」

 明璃が心配そうな顔をしている…

「そうだな…当初の目的は達成できたはすだ」

 ただ、あの3人が今後どう動くかが気になるところだけど…


「あの…真央さん!今回はありがとうございました!」

 麗華が突然、俺に礼を言ってくるが、

「俺にも利があったことだから、気にしなくて良い」

 ジークが開放できて、Sランクの女神のかけらも潰せたわけだし…な。 

「そ、それで…あの…」

 ん?何か言いたそうにしてるが…?

「咲希さん達から聞きましたの!わたくしも、貴方と絆を結びたくて…」

「お嬢様!?」

「いえ…あの…その…変な意味じゃなくて…その…」

「プッ…ククク…アハハハハハ!!」

 その言い方に思わず笑ってしまったが…

「わ、笑い事じゃありませんわっ!わたくし、これでも真面目に…!」

「いいよ。俺のことを心の底から信じてくれる人なら、俺は受け入れる。そう決めてるんだ」

「ではっ!」

 パァっと麗華の笑顔が輝くと…


“竜咲麗華と魂の絆を結びました”


「これからも、よろしくな」


「ふん!お嬢様がここまで仰っているのだ、ならば私も貴様と絆を結んでやる!」


 ……?


「何も起きないが…?」


 そりゃ、そうだろ…

「まぁ、零士は零士で頑張れよ」


「貴様!何だその言い方は!?」

「そういうとこだぞ…」


「フフフ。零士は相変わらずですわね…」

「お嬢様!?」


 零士が本当の意味で仲間になる日はくるのかね…?


 俺達のそんなやりとりを、みんなが微笑ましく笑っていた。


 ―――――――――――――――――


 一方、その頃…


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……………!!!


「おい、何だこの地震は…?」

「What's happenning? 」

「奴らはまだ出てこないのか!?」


 …


「何だ?あの黒い球体は…?」

「おいおい…ここにいたら、俺達まで巻き込まれるんじゃないか!?」

「ああ、退避した方が良さそうだ…ヘリはどうした!?」

  

 …


「よし!どうやら飛べるようだな!みんな、乗り込め!」


 …


 バラバラバラバラ……………!!!


 プロペラのローター音が高まり、チーム皇帝エンペラーを乗せたオスプレイが飛び立っていく。


「見ろ!ダンジョンが…!」

「すげぇな!まさかダンジョンが消滅する現場を見られるとは…」

「結局、奴らは出てこなかったか…」

「いや、そうとも限らんぜ。情報ではやつらは転移による移動ができるらしいからな…」

「転移だと…?」 

「ああ。映像にも残ってるからな…本当かどうかはわからんが…」

「なら、脱出してる可能性があるってことか…ジーン、予定通りやってくれ」

「わかってるさ」


 こうして、チーム皇帝エンペラー竜の巣ドラゴンズネストから撤収していった。


 ―――――――――――――――――


 竜の巣ドラゴンズネストを攻略し、消滅させてから、数日が経過したある日のこと…


 ピンポ〜ン♪


 真央の家のチャイムが鳴る。


 ガチャリ。

 

 ドアを開けて、外に出ると、そこにはおじさんと、若い男の二人組がいた。


「失礼!こちらは、獅童真央さんのお宅ですか?」

「はい、そうですけど…」

「あなたが、真央さん?」

「はい。え〜っと…あなた達は?」

 俺が質問をすると…二人が懐から手帳のようなものを取り出した。

「私達は、こういうものです」

 その手帳には「警視庁」と書かれており、

「貴方に、ダンジョン内殺人と、拾得物横領の容疑がかかっています。署までご同行願えますか?」


「はい?え…え…?」


 俺はわけがわからないまま、二人の刑事さんに、警察署へと連行されることになった。

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