第114話 対談
告発動画を見た俺は、今後の対応を話し合うため、会長宅へと移動した。
「おはようございます」
「真央くんか…その様子だと、例の動画を見たんじゃな?」
「はい。それで今後、どう対応していこうかと思いまして…」
「全く…あやつめ面倒なことをしてくれおって…」
「会長はあの爺さんをご存知なんですか?」
「うむ。あやつとは同期でな、名は
「魔石と魔力の研究?」
「そうじゃ。魔石から魔力を取り出し、エネルギーとして利用する方法や、取り出した魔力からポーションを製造する技術を確立したのが、あやつなんじゃよ」
「それで、レベルアップポーションなんてものを作り出したのか…」
「それはおそらく違うな。迷宮核からポーションを作ったら、レベルアップポーションが出来たということじゃろう」
「何が違うんですか?」
「ポーションの製造法は確立されておる。魔石から作られたポーションに副作用がないという事も含めてな。つまり、迷宮核を使えば誰でもレベルアップポーションが作れてしまうということじゃな」
厄介さが増してるじゃないか…
「でも、迷宮核と魔石は別物じゃないんですか?」
「やつらはそうは思っておらんのじゃろ。魔力を持つ石という認識でしか無いのじゃ」
「では、副作用は?」
「わからん…その件も含めて、これから注視していくしかないじゃろうな…」
取り返しのつかないことにならなければいいんだが…
「ただ、現状では、迷宮核自体を入手する方法が難易度が高いからの…レベルアップポーションを量産し、冒険者全体のレベルが上がった場合は迷宮核の入手もしやすくなるじゃろうが…」
「そういえば、あの動画に映っていた迷宮核は以前俺が会長に預けてあった物だと思うんですけど、どういうことなんですか?」
「すまん!儂もそれに気づいて、すぐに問い合わせたのじゃが…国の上の方が、あやつに迷宮核の研究を依頼して譲渡してしまったようなのじゃ…」
「そんな!人の物を何の連絡もなく、勝手に譲渡とか…許されるんですか!?」
「もちろん、許されることではない!!儂も抗議したのじゃが…正式な譲渡契約書もあるの一点張りでな、取り付く島もない…」
「この国の役人も信用できないってことですか…」
「国も一枚岩ではないのじゃ。現場からの叩き上げの河田くんなら、ダンジョンの危険性を理解してくれておる。が、そうじゃない者たちもいるということじゃ…悔しいがの」
「今回はそういった考えの連中が動いたってことなんですね…」
「記者会見の時にもおったじゃろ?エネルギーがどうとか言ってた奴が…」
「いましたね…」
「少なくとも、ダンジョンは有用な資源だとしか見てない連中がおるんじゃよ」
気持ちは分からないでもないが…危険すぎる
「それで今後の対応なんですが…」
「異世界や女神のことを知らぬ者があの動画を見たなら、あれを信じてしまう者もおるじゃろうな…」
「情報を公開しますか?」
「言っても信じてもらえるとは、到底思えぬが…」
「ですよね…」
…
RRRRRRRR…
そんな話をしている中で、俺のDフォンが鳴る。
「宗次さん?もしもし」
…
「はい。はい。えぇ。いいですよ。わかりました。はい」
電話口で話を聞き、持ちかけられた提案に了承する。
「すみません、会長。宗次さんが、例の動画の件で、話を聞きたいと…」
「そうじゃったか。今は隠し事をせず、真摯に対応したほうが良いじゃろうな」
「では…」
「どこまで話すかは、お主に任せる」
「わかりました」
宗次さんからの連絡を受け、支度をするため俺は会長宅から自宅へ戻った。
…
昼が過ぎ、宗次さんから指定され場所、冒険者学校の一室に俺は来ている。
「わざわざ、足を運んでもらってすまないね」
「いえ…あの動画の件は俺も困惑していますから…」
「電話でも話したと思うが、今日の対談はLIVE配信させてもらうってことでいいかな?」
「はい。構いません。俺は情報発信とか、そういう方面には疎くて…機会をもらえるなら、それはありがたいことですから」
「そう言ってもらえて助かるよ。君の話を聞きたいって言ってる人がすごく多くてね」
「そうなんですか?」
そんな雑談をしている間に、機材の準備が整ったようで、
「さて、それじゃあ、始めようか」
「よろしくお願いします」
…
「まず、誰もが気になっていることだと思うが、真央くんはレベルアップポーションを使ってレベルを上げたのかい?」
「あんな
「悍ましい?」
「迷宮核を壊すと出てくる魔物は魔力の塊みたいなやつなんですが、それが発する魔力が物凄く邪悪な感じがしましたからね。それを元にしたポーションなんでしょ?飲もうなんて思うわけがないじゃないですか」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!迷宮核は壊せないんだろう?」
「壊せますよ。何度もそう言ってますし、迷宮核を壊して、出てくる魔物を倒せば迷宮が消滅するというのも事実です」
「だが、あの動画では、世界ランクトップクラスの全力攻撃でも傷ひとつつかなかったようだが…?」
「迷宮核を壊すためには、特殊な武器が必要なんです。生中継のときに、俺にしか対処できないと言ってたのは、俺しかその武器を持っていないからなんですよ」
「ちなみに、その武器を見せてもらうことはできるかい?」
「いいですけど、ここだと狭くて出せないですね…」
「そうか…なら、後で訓練場へ移動しよう」
「わかりました」
「今は出せないということだけど、どんな武器なのかだけ教えてもらえるかい?」
「
「
「そうですね。今、現在で、この地球上には存在しない物です」
「地球上に存在しない?」
「どこから話せばいいのか…」
「視聴してるみんなも知りたがっているようだから、君の知っていることを答えられる範囲でいいから教えてくれるか?」
「わかりました」
…
そして、俺は、異世界に転生したこと、その世界には女神がいること、その女神の本質が邪悪であること、異世界からの侵略のためにこの世界にダンジョンができたこと、今自分が使役している魔物は異世界で鍛え上げたから強いということなど、思いつく限りのことを嘘偽りなく、カメラの前で語った。
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