【第4章】吸血姫編

第81話 連絡

 冒険者学校の魔物氾濫を鎮め、自宅へ戻り数日が過ぎた頃、俺のDフォンが鳴った。

「誰だ…こんな朝早くから…」

 Dフォンに表示されていた名前は【竜咲麗華】となっている。

「もしもし?」

「真央さんですの?」

「ああ、そうだが?なんだこんな朝早くに」

「記者会見、拝見いたしましたわ。Sランク昇格おめでとうございますわ」

「そんなことをわざわざ言うためにこんな早くに連絡をしてきたのか!?」

「本題はここからですのよ…かねてより調査を進めていた、吸血鬼バンパイアの件でわかったことがあるんですの…」

「それを早く言え!」

「耳元で大声を出さないでくださいまし!」

「あ、すまん…」

「ん…こほん!実は、吸血鬼バンパイアを専門に狩っている町があったのですけれど…」

「そんな町が…」

「ここ数ヶ月ほど、その町から卸されていた吸血鬼バンパイアの魔石が一切市場に流れなくなっているのですわ」

「つまり…どういうことだ?」

「それはわかりませんの…調査隊を送ったのですが、町全体が廃墟のようになってしまっていて…ただ、あの記者会見を見た後だと、もしかしたら、上位種が出現して、吸血鬼バンパイアハンターの皆さんに多大な被害が出てしまったのでは?と思ったのですわ」

「そういうことか…行ってみる必要がありそうだな」

「案内が必要でしょう?わたくしも同行いたしますわ。零士、すぐに用意なさい」

「かしこましりました」

 Dフォン越しに零士の声も聞こえる。さすが付き人、相変わらずピッタリ側にいるようだな。


「おにぃ…おはよ」

「おはよう、明璃」

「誰から電話?」

「ああ。麗華からだ。吸血鬼バンパイアに関する連絡をもらった」

「それじゃあ!?」

「まだ、可能性の話だな」

「でも、行くんでしょ?あたしも行くからね!」

「咲希と里奈にも伝えておくか」

「そうだね、あたしがリナ姉に連絡するから、おにぃはサキ姉に連絡して」

「わかったよ」

 …

 待ち合わせ場所は冒険者ギルドということにした。

「お、おい、あれ!」

「ああ、まさか召喚士がなぁ…」

「しっ!バカ、聞こえたらどうすんだ!?」

「俺もチームに入れてもらえないかなぁ…」

「バーカ、全員ランカーの化け物チームだぞ?お前なんかお呼びじゃないって」

 ギルドに入るなり、噂話が聞こえてくる。

「ずいぶんと色々言われてるようだな…」

「まぁ、それだけ有名になったってことだろ」

「そういうもんかね…」

「あんまり、自覚ないよね」

 3人で噂話が飛び交うギルド内を歩いていると、里奈が俺たちを見つけたようだ。

「あ!真央さん、みなさん、おはようございます!」

「おはよう。急で悪いな」「里奈、おはよう」「リナ姉おはよー」

「いえ、おじいちゃんが着いてくるってうるさくて…」

「ははは、会長らしいな」


「そういえば、真央。昨夜、宗次さんから連絡あって呼び出されてたろ?」

「ああ」

「何の話だったんだ?」

 …

 魔物氾濫の後、話をしたいと宗次さんに言われてて、昨夜連絡があったんだ。

「呼び出してしまって、悪いな」

「いえ…大丈夫ですよ。それで、話って何ですか?」

「実はな、メンバーで話をしたんだが…真央くん、クランを作る気はないか?」

「クラン…ですか?」

「ああ。君のチーム魂の探索者ソウルシーカーを筆頭にした、複数のチームの集合体だな。もし君がクランを作る気があるなら、緋色の刃うちもその傘下に入れてもらいたくてな」

「みんなと相談してみないと…すぐに答えは出せませんよ」

「まぁ、それもそうだな。その気になったら連絡をくれ」

「どうして、そんな話になったんですか?」

「あの魔物氾濫の時にな、色々と思うところがあってな…俺達はまだ弱い…もっと強くならないと守りたい奴らを守ってやれないってことがわかってしまった…」

 確かに、俺達が駆けつけなければ、あの攫われた学生たちは全員生贄になっていただろうし、避難所の怪我人からも犠牲者が出てたかもしれないけど…

「君や君の妹が短期間で駆け上がっていくのを間近で見ていたからな…恥も外聞もなく言うなら、俺達も鍛えてもらえないだろうかって思惑もある」

「話はわかりました。メンバーと相談してみたいと思います」

「ああ。前向きに考えてもらえると嬉しいな。よろしく頼むよ」

 そんな感じで会話は終わり、別れて帰宅したんだが…

 …

「なるほど。そういうことだったのか」

「クラン…ですか?」

「あたしは別にいいと思うけどな〜」

「クランって、組んでる人は結構いるのか?」

「う〜ん…上位ランカーにはほとんどいないかな?ランカーの人達って、良くも悪くも個人行動のほうが多いから…」

「どっちかというと、低レベル帯の方がお互いに協力するためにクランを結成しているって場合の方が多いですよね」

「そういうもんなのか…」

「あ!でも、クラン結成に反対というわけじゃないですよ!?」

「まぁ、その話は今回の案件が終わってからにしようか。ちょうど待ち人も来たみたいだし…な」


「ごきげんよう、皆さん」

 冒険者ギルドに麗華がやってきた。

「こら、貴様ら。お嬢様が挨拶なさっているというのに、何だその態度は?」

 零士も相変わらずのようで。

「はいはい。おはよう、麗華」

「貴様…お嬢様を呼び捨てにするなど…無礼にも程があるぞ!」

「お前は相も変わらずうるさいな…麗華、話が進まないから、ちょっと黙らせてくれ」

「そうですわね…零士、少し下がってなさい」

「!?お嬢様…?」

 ぐぬぬと零士がこちらを睨んでいるが、こっちとしてはさっさと目的の場所へと案内してほしいんだから、そんな目で睨むなよ。

「で、早速で悪いんだが、詳しい話を聞かせてくれ」

「わかりましたわ。では、場所を変えましょうか。ここでは少し周りが騒がしいようですので…」

「そうだな」


 麗華からの提案を受け、俺達はギルドの個室へと移動した。そして、今、問題のその町で起きている事態を説明してもらう流れとなった。

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