第39話 最後の推薦

 一通りの説明を終えると、外には夜の帳が下りていた。

「わかりましたわ。では、わたくしは竜咲グループの総力を上げて、吸血姫に関する情報を集めますわ」

「お嬢様!?こんな与太話を信じるのですか?」

わたくしの冒険者としての直感が信じろと言っているのですわ。それに…ほんとうに隆さんと真由子さんを生き返らせることができるのなら、直接、御礼を申し上げたいんですの」

「お嬢様がそう言われるのでしたら…」

「真央さん、Dフォンはお持ちですよね?何かわかったら、連絡いたしますので、連絡先を教えていただけますか?」

「あぁ。わかった」

 こうして、麗華と俺は連絡先を交換した。

「では、明日の朝一番でわたくしと零士の連名で、冒険者ギルドに真央さんのAランク昇格の推薦状を届けますわね」

「わざわざすまないな。感謝する」

「見たところ、真央さん本人はそれほど高レベルではないようですし、アルスさんがお強いのはわかりましたけど、油断なさらぬように」

「わかってるさ。レベル上げも同時に進めるよ」

「それは重畳。いつの日か共に戦場に立てる日を楽しみにしておりますわ」

「あぁ。その時はよろしく頼むよ」

「では、零士。帰りますわよ」

「はい。お嬢様」

「真央さん、咲希さん、明璃さん。ごきげんよう」

 そうして、麗華と零士は帰っていった。

「わたしも帰るよ。また明日な、真央」

「あぁ。咲希もおやすみ。また明日、ギルドでな」


 次の日の朝、俺は咲希と明璃と一緒にギルドを訪れた。

「まずは支部長に話を通さないとな」

「そうね。真央の資格ライセンスも預けたままだしね」

「おにぃがもうBランクだなんて…なんだか置いていかれた気分よ」

「何言ってるんだ?明璃も一緒にAランクダンジョンに行くんだから、レベルなんてすぐ上がるぞ?」

「ええっ!?聞いてないんだけど…」

「言ってないからな」

 何故か殴られた…解せぬ。

「まぁ、連れて行ってもいいかどうかは聞いてみないと、わからないんだけどな」

「うぅ…自信ないなぁ」

「物理魔法、全てを無効化するアルスに守られてるんだぞ?ちょっと遠足に行く程度の気持ちで平気だぞ?」

「アルスちゃんを信用してないわけじゃないけどさ…」

「それに秘密兵器もあるしな…」

「何よ?秘密兵器って…」


「真央さん、支部長がお呼びです」


「お、呼ばれたか。じゃあ行こう」

「あ!誤魔化した!おにぃってば!」

 こうして俺達は支部長の執務室へ案内された。


「朝早くから悪いな」

「いえ、こちらも相談がありますから」

「早速だが、朝一でSランク冒険者とAランク冒険者の連名で真央のAランク昇格の推薦状が届いたんだが…」

「さすが麗華は仕事が早いな」

「麗華って…お前な…知り合いなのか?」

「昨日知り合いまして。実力を認めてもらったようです」

「そういうことか…あぁ、忘れるところだった、これがお前のBランク冒険者資格ライセンスだ」

 支部長に差し出された資格ライセンスを受け取る。

「それで?相談というのは、Aランク昇格の件か?」

「そうですね。できれば支部長からも推薦をいただきたいのですが…」

「なぜそうまで急ぐんだ?Bランクへの昇格を無理矢理ねじ込んだばかりなんだぞ?お前のレベルはまだ22のままだろう?」

「父と母の事です」

 それだけで、支部長は理解してくれた。

「ランク制限か…惜しい方達を無くしたものだ…」

 蘇生の件に関しては、伝えない。

「わかった。いいだろう。真央のAランク昇格の推薦状を用意しよう。正直、あのスライムは規格外すぎるからな」

「ありがとうございます」

「ただし、適正レベルを満たしてないからな、試験を突破しても、審査が通らない場合もあるぞ?そこは理解してくれ」

「その件はレベル上げも同時に行うつもりですから、心配はしてませんよ」

「そうか、無茶はするなよ」

「はい」


「それで?他に聞きたいことはあるのか?」

「試験の条件のパーティーでAランクダンジョン制覇ということなんですが…」

「うむ」

「パーティーで受ける場合はパーティーメンバーのランクに制限はあるのでしょうか?」

「それなら、試験を受けるBランク冒険者より、ランクの高い冒険者を同行させることは禁止とされている」

 まぁ、それは当然だろう。高ランク冒険者の力を借りたのならば、正確な実力が判断できないからな。

 ただ、俺が聞きたいのは低ランク冒険者の同行についてだ。

「では、パーティーメンバーが低ランクでも構わないという解釈でいいのですね?」

「そうだが、ギルドとしては推奨していない。力及ばず、命を落とす確率が高いとわかっているからな」

「なるほど、わかりました。それともう一つ」

「何かな?」

「試験ということは、試験官は同行するのでしょうか?」

「いや。それはしない」

「それでは不正をする輩もいるのではないですか?」

「高ランクのダンジョンアタックは1日で終わるようなものではないからな。試験を受ける冒険者には、入るダンジョンのランク制限を限定的に解除できるように、試験証というものが渡される。これに、登録メンバーの名前、討伐したモンスターの種類、数、到達階層が自動的に記載される仕組みだ」

「なるほど。それでダンジョンの攻略の証明になるということですか」

「そういうことになるな。それでは、いつ、どこのダンジョンに潜るのかを、挑戦するメンバーのリストと共に提出してくれ。チーム登録をしていないのなら、この後受付でチーム登録をしておくといい」

「わかりました」


 Aランクの昇格試験に関してはこれで受けることはできるようになった。

 後はみんなと相談して、挑戦するダンジョンを決めるのとチーム名の登録をしなくちゃな。

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