第3話 不老不滅

 スラと共に当てもなく歩き続ける日々が過ぎていった。

 旅は順調そのもので、たまに道中で襲いかかってきた魔物モンスター達は、ほとんどスラが倒していった。最弱のスライムかと思っていたが、名前付き魔物ネームドモンスターとなったスラは強かった。早くスラのステータスが見れるようになりたいものだな。

 そして、スラが魔物モンスターを倒しても、俺に経験値が入ると言うこともわかった。

 そんな日々を過ごしているうちに、俺のレベルもいくつか上がった。


 初めの頃は、食料や飲み水の心配もしていたのだが、幸いなことに、この身体は空腹も喉の渇きも、肉体的な疲労すら感じないらしい。スラはたまに、倒した魔物モンスターだったり、道端の草だったりを身体の中に取り込んで消化している。スラはお腹が空くのだろうか?

 スラと二人の道中でも順調だったが、他の魔物モンスターも作ろうと思って試したのだが、SPが回復していても、スラ以外の魔物モンスターを作成することはできなかった。

 どうやら、現状では魔物モンスターは1匹しか作れないということらしい。おそらくレベルが上がれば解決するんだと思うけど…

 解決するよな?

 魔王なのに、魔物モンスター1匹しか配下にできないなんてわけ…ないだろ?


 少しの懸念と今後の期待。

 俺はまだ見ぬ異世界の出来事や、異世界人との出会いなどに心を踊らせながら、旅を続けるのだった。

(経緯はどうあれ、せっかくの異世界だ。ワクワクするなってのは無理だよな!)


 

 そして、俺達はこの世界の人間と初めて邂逅する。


「あれは馬車か?」

 遠目に街道を行く馬車が目に入った。

 馬車の周りには何人かの武装した人間たちも見える。

「冒険者ってやつか…」

(よし。ここは、にこやかにフレンドリーに接してみるとするか。)

 そう考えた俺は、笑顔で手を振りながら、近づいていった。

「おーい!すいませーん!ちょっと聞きたいことがあるんですけど〜」

 そんな脳天気な俺を迎えてくれたのは、炎の洗礼だった。

「へ?」

 目の前に巨大な火の玉が迫る。

 冒険者と思われる集団の中から、炎の魔法?が放たれたのだ。

「ピギィー」

 呆ける俺をかばって、スラが飛び出してきた。

 炎に焼かれるスラが徐々に小さくなって…

 そして消えてしまった。

「ス、スラ…え?…なんで…?」

 何が起きたのか、全くわけがわからないといった感じの俺に対して、

 冒険者側に新たな動きが見られた。

 剣を持った女性がものすごい勢いで近づいてくる…

 そして、気がついたときには、俺は首をはねられていた…



 魂が身体から抜け出る感じがする…

(あぁ、この感じは2度目だな…)

 そして、意識がある程度覚醒したところで下界を見下ろせば、

 そこには首と胴が離れた自分の身体が横たわっていた。

 そして、気付く。

(これが、俺…か)

 そこにはどう考えても人には見えない角の生えた男の首が転がっていた。

(この人達から見たら、魔物が笑顔で手を振って近づいてきたってわけだ…)

(はぁ〜。そりゃ、攻撃されてもしかたないよなぁ…)


“不老不滅の効果が発動します”


 聞き覚えのある声が頭に響く。

 そして、魂だけの存在となって浮いていた俺は、何かに引っ張られるように身体へと引き戻された。

(は?)


 ムクリ。

 首と胴が切断されていたはずの肉体はいつの間にか元通りになって、起き上がった。

(俺は生き返ったのか?)

 自身の身体に訪れた不思議な出来事に混乱していた、その瞬間!

 トン、トトンと両の眼球に矢が刺さる。

「ギャァァァ…痛い…痛いよ…」

 あまりの激痛に悲鳴をあげた瞬間に、先程俺の首をはねた女剣士が俺の胴をいだ。

 ズシャリ。

 上半身と下半身が両断された俺の身体から再び魂が抜けた。


“不老不滅の効果が発動します”


 ムクリ。

 確かに両断されたはずの胴に手を当てる。

 今のは夢だったのか?と錯覚するくらい、何もなかったかのように、ちゃんと、くっついている胴体に驚いている俺のところに、今度はスラを焼いた炎が着弾した。

「ギャァァァ〜熱い!熱い!誰か助けて!」

 あまりの熱さに地面を転げ回っている俺のもとに巨大な鎚を持った筋肉質の男が近づいてきた。

 男は持っている鎚を勢いよく振り下ろし、俺の頭はトマトが潰れるかのようにグシャリと嫌な音を立てて破裂した。


“不老不滅の効果が発動します”


“不老不滅の効果が発動します”


“不老不滅の効果が発動します”


“不老不滅の効果が発動します”


 ………


 何度も何度も、蘇っては殺され、蘇っては殺された…


(地獄だ…)


“不老不滅の効果が発動します”


“不老不滅の効果が発動します”


“不老不滅の効果が発動します”


“不老不滅の効果が発動します”


 ………


(そうか…これが不老不…不じゃなく、不か…)


“不老不滅の効果が発動します”


“不老不滅の効果が発動します”


 ………


 何度も蘇る俺に、攻撃する冒険者達にも疲れが見えてきたのか…

 それとも殺しても蘇る魔物に対する焦りと恐怖からなのか…

 少しだけ攻撃の手が緩んだような気がした。


(今のうちに、に、逃げないと…)


 逃げようとする素振りを見せ、距離を取ろうとすると、

 今度は弓矢や魔法等の遠距離攻撃が飛んできた。


 矢に貫かれ、怯んだところで土魔法だと思われる、飛んできた石礫が、俺の腹に風穴を開け、巨大な岩によって頭を潰された。

 グシャリ。


“不老不滅の効果が発動します”


 水魔法で生み出された水が顔にまとわりつき、息が出ずに藻掻いているところを、風魔法で首と四肢を切断され、身体中を切り刻まれ、地面に広がる血の池に倒れ込んだ…

 バタリ。



“不老不滅の効果が発動します”


(も、もう、やめてくれ…)


 確かに蘇りはするが、攻撃されて痛みを感じないわけではないのだ。

 地獄の苦しみが続く中、蘇るたびにクソ女神ルフィアに対する怒りと憎しみが増していく…


 何度殺され、蘇ったのかわからないほど惨劇が繰り返され、命からがらというのもおかしいが、どうにか逃げることに成功した俺は、周りに誰もいないことを確認して、ようやく一息つくのだった。


 こうして、この世界の住人との最初の邂逅は、自身に宿る呪いにも似たスキルの効果を確認する、最悪の出会いとなった。


【名前】シドー

【種族】魔王

【LV】5

【HP】60/60

【SP】130/130

【力】13

【知恵】30

【体力】10

【精神】20

【速さ】12

【運】0

【アクティブスキル】

 魔物作成モンスタークリエイトLV1

常時パッシブスキル】

 不老不滅、斬撃耐性LV1(NEW)、打撃耐性LV1(NEW)、刺突耐性LV1(NEW)、火耐性LV1(NEW)、水耐性LV1(NEW)、風耐性LV1(NEW)、土耐性LV1(NEW)、恐怖耐性LV1(NEW)

EXエクストラスキル】

 女神の制約、魔王の運命さだめ

【称号】

 転生者、世界を超えし者、勇者の贄、世界の敵(NEW)

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