泉の広場の赤い怪物
TJYM
一話完結
泉の広場って知ってますか。
昔大阪梅田の地下街にあった広場です。1、2年前に取り壊されて別の施設に変わりましたが、その前まではよく待ち合わせとかに使われていた場所です。
そんな泉広場ではよく2ちゃんとかで、「泉の広場の赤い女」が出るとかって言われてましたよね。
近づくと異様な気迫を感じた話とか、何度通っても同じ女がいるとか、そういう都市伝説があったと思います。
サークルの先輩のAさんが、折角なので取り壊される前にその赤い女でも見てみようかと、泉広場に訪れた話をしたいと思います。
大阪梅田の地下街はダンジョンとも言われていて、非常に複雑な構造をしています。
元々梅田にある駅自体が複雑になっていて、地下鉄梅田駅とJR大阪駅、さらには西梅田駅の地下部分が連結しています。
さらに商業施設の地下部分が連結し、ダンジョンとも言われる地下街を形成しています。
梅田駅を散策するなら、現地ガイドが居なければ必ず迷うとも言われているくらいです。
そんな地下街の連結部分に泉の広場は位置し、いわゆる地下街のランドマークとして機能しており、待ち合わせ場所としてよく使われていました。
そんな風に、泉の広場は地下街において安心をもたらす場所として機能していましたので、赤い女という様な怪談が生まれたのでしょうか。
Aさんは、大阪にそんなに行く訳ではないので梅田の地下街で何度も迷ったのですが、なんとかその泉の広場に辿り着きました。
当然といえば当然ですが、広場には赤い女はいませんでした。少し肩透かしを食らった気分になりましたが、まあ買い物でもして帰るかとあたりをぶらぶらしていました。
夕方になりそろそろ帰るかと思い再び駅に向かおうと地下街を歩いていると、道に迷ってしまいました。30分ほど迷っていると先ほどの泉の広場が見えました。
やっと知っている場所に着いたと思い安心していると、そこには赤い女の様な人がいました。
その女は赤いフード付きのダウンコート着ており、当時は夏でしたので目立って見えました。顔は見えず、スカートの先の足首は異様に肌白く見えました。
ついに出たと思い、心臓がばくばくしました。顔でも見てみるかと思い、不自然に見えない様ゆっくりと近づきました。
女まで5mほどのところへ近づいても顔が見えませんでした。正面から見ているのですが、フードの下がやけに暗く、顔らしきものが見えないのです。
こうなったら真ん前に行くしかない、と思い意を決して目の前まで近づきました。
女の目の前に行き、ナンパのふりをして話しかけました。
「ねえお姉さん。誰か待ってるの?」
女からかすかに声が聞こえましたが、小さすぎて何を言っているか分かりませんでした。
「どうしたの。体調悪い?暑いしフード取ったら?」
と言いフードを外すと、
そこには何もありませんでした。
何もないという表現は正確ではなく、そこに何かはあるのですが、それが何か識別することができませんでした。
顔があるはずの場所では、光が屈折・反射し続け、顔らしきもの見えません。そこには、何かかすかな色の様なものが細く渦を巻いていました。
Aさんは驚いて後退り、急いでその場を離れました。
3日後、Aさんは自宅マンションのエレベーターに巻き込まれ腕を切断されました。
エレベーターから降りる途中、ドアが勢いよく閉まり右腕が挟まれました。通常であればドアは異物に反応し再び開くのですが、その時はなぜか腕を挟んだまま閉まり続けました。
そのままであれば修理を待てば良かったのですが、運悪くエレベーターは下の階へ行き、Aさんの右腕はエレベーターの縁と床に挟まりギロチン状に挟まれました。
当然麻酔下ではありませんでしたので、エレベータの縁と床にみちみちと右腕が押し潰される痛みを終始受け続けました。
肉は潰れ続け鬱血し、身体が限界に達した後肉が破裂しました。そして骨に至り、ごりごりと骨が削れる音を聞きながらAさんは激痛を受け、声にならない悲鳴を叫び続けました。
救急車が来た頃には、Aさんは右腕が削ぎ落ちていて、多量に出血していました。Aさんは一命を取り留めましたが、今も入院し続けています。
その後、赤い女の目撃談が大阪各地で上がりました。HEP FIVE前といった有名な梅田駅の待ち合わせ場所や、難波のアメリカ村や通天閣など梅田外でも報告されました。
その目撃報告と同時に、普段あり得ないような事故で重傷を負ったり死亡する事故が多数発生しました。
以下は、当時掲示板で見つけた投稿です。
23: 名無しさん 2019/06/10(金) 23:16:17.81 ID:T%Au8/oO9
最近、大阪のあちこちで異様な赤い女が出没していて、それを見た後にあり得ない死に方をする人がいるらしい。
同じ関西の人間として気になったので、色々なSNSで調べて死亡者とその死因をいくつか見つけた。ここに上げておく。
中村賢斗(26):エレベーターに足を巻き込まれ右足の指を4本損傷
大葉明日香(21):電車の脱線事故に巻き込まれ死亡
高嶋裕香(16):通学時バスを降車中、腕を巻き込まれたままバスが発車し身体を引き摺られ死亡
山村美里(45):脚の傷口から破傷風に感染し、右脚全体が壊死し切断
横山充(31):工事現場の勤務中、建築材の拘束が解け高所から落下し右脚が潰される
中島みつ子(65):階段を登っている間、上方からキャリーケースが転がり落ち巻き込まれ転落死
敷島直人(33):海外出張後、エボラ出血熱の感染が発覚し数日後死亡
新見健太郎(44):仕事用のトラックのサイドレバーがかかっておらず、タイヤの点検中に動き出し足を巻き込まれ両足欠損
先崎翔太郎(52):勤務地の工場にて、資材を粉砕する機械に腕を巻き込まれ左腕を損傷
橋本遼(13):自宅で営む飲食店の厨房にて足を滑らせ、その先にあった料理包丁に左耳を削がれた
そういえば最近、私の住む兵庫でも駅前に赤い女が居たという話を聞いた気がします。
(この話はフィクションです。実在の人物とは関係がありません。)
泉の広場の赤い怪物 TJYM @tjym
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