立ち話ならぬ浮き話

サムライ・ビジョン

第1話 それぞれの星模様

「あっつぅ…バリあついっすわ」

「あんまり愚痴ってると太陽さん起きちゃうヨーウ!」

水星の嘆きに、金星くんは注意喚起をする。


「木星さんデカすぎだワ! 太陽さんの寝顔が見えないじゃない! ちょっと横にズレなさいよ!」

「ふぇ〜? 無理〜 動けな〜い」

太陽さんのことが大好きな土星さんは、目の前の大きな木星さんにキレている。


「海ちゃんはいいよな。読んで字のごとく海みたいに青いんだもん」

「天ちゃんこそ…ほら、なんか…『天』っぽいじゃん?」

天王星さんと海王星さんは、お互いを褒めようと努力している。


「あーあ…あたいだって、もうちょっと太陽さんに近けりゃ地球くんみたいになれたのになぁ…」

「いや、ハビタブルゾーンも言うほどいいものじゃないよ。人間がうっとうしいだけで…」

火星ちゃんは、相変わらず僕に絡んでくる。


「ぐおおお…すううう…」

太陽さんは、大きな体にふさわしく大きないびきをかいている。




「ああ、太陽さん…いつもはたくましくて男らしい太陽さんも、寝ているときはすごく可愛らしいワ…」

「土星さんっていっつも太陽さんのことべた褒めするよね。あたいも太陽さんはなかなか良い物件だと思うな、うん」

「でしょー? それに引きかえ…見てよ私の周りの男ども! 後ろの2人は陽の当たらない者同士で傷を舐め合ってるし、かと言って前のやつはデカくてボーッとしてるし…」


木星さんは聞き流しているようだが、流れ弾を食らった2人はさらにビクビクし始めた。

「天ちゃん…言われちゃったね…」

「海ちゃん…あたたまりたいね…」

似た者同士だなぁ、と思う。


「あたいずっと疑問なんだけどさ、太陽さんって、どんな星がタイプなんだろ?」

「さぁ? 分からないけど、きっと大きな星が好みに違いないワ!」

「う〜ん…土星さんの場合、体は大きくても輪っかが邪魔してる気がするんだよねぇ。てかそもそも、そのシャンプーハットみたいなやつは何?」

「シャンプー…!? あんた私より小さいくせに生意気なこと言うんじゃないワよ!」




「あのぉ…」

はて? 誰だろう。

「冥王星ですぅ…あの…少しでいいんで…太陽さんの光…浴びさせてもらえませんか…」

冥王星…ここからじゃよく見えないな。

というか僕以外、誰も彼の声が聞こえていないようだ。


「なぁ火星ちゃん」

「なに?」

「冥王星って星、知ってる?」

「…知らん。太陽系にそんなのいたっけ?」


謎は深まるばかりだ。

「ムーン! ムンムーン!」

おっと、僕の飼っている月が吠え始めた。

「どうした月…太陽さん起きちゃうだろ」


「ムーン! ム…いやもう喋りますわ」




「「「えっ」」」




「月…お前いま…」

「冥王星は太陽系の元メンバーです」




「「「えーっ!?」」」

太陽系のみんなが叫んだ。僕も叫んだ。


太陽さんは、起きた。

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