Funny Bunny
杜侍音
Prologue
── 本日は、
開演に先立ちまして、お客様に何点かお伝えしたいことがございます
一点目、当劇場内は飲食喫煙厳禁となっております
ご了承ください
破壊「──あれ、おっかしいなぁ。アタシのあれどこ行った?」
嫌味「はぁ? 何かは知らないけどさ、前説もう始まったから静かにしなよ」
破壊「えー腹減ったなー」
── 二点目、携帯電話・スマートフォンなど、音や光の出る機器は他のお客様のご迷惑となりますので、電源をお切りください
また、バイブレーション機能も他のお客様のご迷惑となりますので、お控えください
ご協力お願いいたします
破壊「んー、この辺だった気がすんだけどなー」
嫌味「まだ探してるのか。何か知らないけど、そこ小道具や衣装置いてるんだから、ぐちゃぐちゃにするなよ」
ピロリン♪
嫌味「……君も静かにしろよ。役者の君が電話鳴ってどうするのさ。切っとけよ」
百合「はいは〜い。……うざ」
嫌味「うざっ……⁉︎」
百合「うっわ、わざわざDMで起床連絡とかしてくるんだけどこいつ。一生寝ててほし〜」
── 三点目、本公演の許可なきビデオ撮影・写真撮影・録音は禁止とさせていただきます
また、上演中の私語は周りのお客様のご迷惑となりますのでお控えください
百合「ま、無視してていっか。はいは〜い、みんなこっち向いて〜」
カシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ
百合「はい、みんなかわいい♡」
嫌味「おい、君。どれだけ連写してるんだ」
百合「あんたは邪魔なんだけどー」
嫌味「なんだって……⁉︎ 君が僕がいる方向にカメラを──」
先輩「静かに」
嫌味「なっ、ちょ、あいついないし……! 僕だけ怒られてるみたいじゃないか……‼︎」
破壊「見つかんねー」
部長「……ぐがー……がっ⁉︎」
── 四点目、もし体調を崩された場合、その場で静かに手をお上げください
スタッフがすぐに対応いたします
主役「…………うーん……」
──五点目、万が一災害等が発生した場合、スタッフが誘導いたしますので、慌てず落ち着いて指示に従ってください
花形「……もうすぐ本番だ。よし、『みんな、がんばろうね!』」
制服を着せられた女の子がスマホに向かって文字を打つ。
その言葉は一旦遠いサーバーを経由して、すぐ傍にいる、これから一つのことに共に挑む仲間の元へと送られる。
鼓舞された仲間たちは、みんながいるグループチャットにて同じように返事をする。
『誠心誠意頑張りますっ!!!』『気楽にな』『女の子は超絶可愛くね〜!』『腹減ったー!』『ミスするなよ』「お腹痛い……」『暗いからうっかり寝てしまっていた! さぁ楽しんでいこう!』『ウォォ(((o(*゚▽゚*)o)))』『フッ、魅せてやろう……吾輩の力を……‼︎』『みんなならきっとできるよ。僕はこの三ヶ月間みんなが頑張ってきたのを見てきたからね。だから大丈夫だよ。うん、僕が側にいる。何か困ったことがあれば先輩に頼ってね。僕も失敗したらみんなを頼るから──』
花形「……え?」
次々と来る返信の中に、一つだけ直接耳に聞こえる言葉。
彼女の隣にいる、現実とはかけ離れたまるで王子様のような格好をした男がお腹をさすり、苦悶の表情を浮かべていた。
花形「
主役「も、もう無理……! トイレ……‼︎」
花形「え、ちょっ、え⁉︎ もう本番始まるよ⁉︎」
──長々と失礼いたしました
本公演は約120分を予定しております
どうぞ最後までごゆっくりとお楽しみください
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