漫画家

朝焼 雅

漫画

 漫画家になった。青春の全てを漫画に捧げ、高校卒業と同時にデビューした。デビューまではかなり長かった。僕は話も絵も1人で描いていた。

 つまり、あるメジャーリーガーと同じように二刀流なのだ。なんて初めの頃は思っていた。賞へ応募できるだけ応募したが結果は最終候補にも残らなかった。小学生の頃から漫画を描いていたし毎月応募すれば余裕だと思っていたけど、甘くなかった。

 僕は話も絵も1人で描く事にこだわっていた。なぜなら、あるメジャーリーガーのことが好きだったから、でも運動の出来ない僕は身体ではなく頭を使って二刀流として活躍しようと夢を見た。

 中学生の時に出版社へ持ち込みをした。その時言われたのは、絵はまあまあだけど、話が面白くない。友達からは面白いって褒められてたからそれなりの自信を持って行ったんだが、あんなにはっきり言われると、ショックが大きかった。

 子供相手にあそこまではっきり言う大人を初めて見た。ポカンとしている僕に編集者はアドバイスをしてくれていた。絵はもっとこうした方がいいとか話は読者を意識してとかそんな感じの事を言っていたんだが、ほとんど頭に入らなかった。ただ一言、「また描いて持ってきます」 それだけ言って帰った。その日は自分のことを責めて泣いて荒れていた。「なにが二刀流だ」 そんなことを何度も言い自分を責めた。その後は2ヶ月くらい何も描かなかった。

 ある日、テレビであのメジャーリーガーが出ていてチャンネルを変えても同じ報道、憧れの人に嫉妬し、また、彼みたいになりたくて筆を取る。デビューするまではそんな事の繰り返しだった。

 高校入学する頃には賞に応募できるレベルにはなっていたし、編集者が真剣に付き合い続けてくれたおかげでやる気もなくならなかった。

 高校の青春を犠牲いけにえに可能性と編集さんを信じて漫画を描いて描いて高3の冬に作品が認められた。

 高校卒業も間近だったため、卒業したらデビューすることになった。大学進学をしないため、今後は漫画一本でプロとして読者へ毎週漫画を届ける。

 最期に、僕は二刀流なんだぜ、かっこいいだろなんて思っていたけど、漫画の世界に入ってからもっとすごい人達がいて二刀流とも言えないのではと思った。

 ただ、1人で話を考え、絵も描く漫画家は二刀流と言ってもおかしくないのではと思う。

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漫画家 朝焼 雅 @asayake-masa

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