最強?オネェとJKの日常

龍神雲

最強?オネェとJKの日常

私は物心付いた時からスピリチュアルというか、霊的な世界に干渉する経験が多く、私の周囲ではよく不可思議な現象が起きていた。霊的な者に遭遇するのは勿論、危険を察知する能力にも長けているせいか、よくない波動を感じやすく、それを自然と避け危機を回避した経験はざらにあり、当初はどうしてこんな事ばかり起きるのかと悩んだり怖がったりもしていたが、年齢を重ね16歳になり、高校生活を送るようになった今となってはもう慣れっこで、まぁそんなものよねと前程気に止めない、余裕あるJKとして振る舞い日々を謳歌していた。


だが──……


「ねぇ。ちょっと、そこの貴女──……アタシの事見えてるでしょ?だってアタシ分かるもの。見える人って同じ波長を感じるのよ!」


おかまなのか、はたまたオネェなのかは謎だが、女性気取りで話すごつい、筋骨隆々で顔は角張り、髪型はツーブロック、顔面偏差値レベルとしては中の下レベルの推定年齢40ぐらいの男の霊体に、自宅に帰る途中の帰り道で偶然出会し声を掛けられたのを機に、この日常が変わってしまうのを知覚した。この霊体に会った瞬間、余裕あるJKとして築いてきた私の姿が瞬く間に崩壊するイメージが頭の中に流れ込んできたからだ。


──やばい。この霊体に関わったら今の私も、この先の高校生活も灰色どころか真っ黒にされる!


直ぐに踵を返し、少し遠回りとなるが別ルートで自宅に帰宅する方法を選んだ──だが……


「ちょっと!無視してんじゃないわよ!!」


その女性気取りのごつい男の霊体はその場に留まらず私の後を付いてきた。声を掛けてくるだけでなくその場にも留まらない──今まで出会した浮遊するだけの霊体とはまるで違い、怨念や未練といった強さが肌で犇々と感じる程だが、とりま無視!私は猛ダッシュした。走りには自信があるので幾ら霊体といえど追い付けまい!JKの持久力舐めんなよ!──と浸っていたのは一瞬にも満たない時間で、


「アタシから逃げようだなんて1億光年早いわよ、オネェの脚力舐めんじゃないよ!この小娘が!!」


一瞬で私の目の前まで回り込むだけでなく金縛りまで発生させた。それをくらった私は指1本動かせずその場に固まった。


──どうしよう!身体を乗っ取られる!?


だが女性気取りのごつい男の霊体は私の身体を乗っ取る事はせず、直ぐに金縛りまで解いてしまった。その行動が理解できずきょとんとしていれば、呆れた口調で切り出してきた。


「全く、最近の子ってどうして話を最後まで聞こうとしないのかしら。やんなっちゃうわ」


ツンとした雰囲気を漂わせている女性気取りのごつい男の霊体はどうやら自身の見た目や圧の凄まじさに気付いていないようだった。全く以ておめでたい脳みそである。最初こそは関わらないと決めていたが矢張関わる事にした。というのも身体を乗っ取る気配がないのと、また逃げて金縛りを掛けられるのも厄介だからだが一番は、この霊体が漂わせる雰囲気や格好に関して物申したい事があるからだ。私は早速、女性気取りのごつい男の霊体に向けて正直に打ち明ける事にした。


「話を聞く聞かない以前の問題で、あなたの見た目というか……圧が凄まじ過ぎるからだよ。それどうにかならないの?」


「あら、漸く話してくれたかと思えばいきなりディスり?生意気な子ねぇ。でもいいわ、それアタシ自身も自覚してるから許してあげる。けど、どうにもできないのよね、持って生まれたこの骨格だけは。まぁ整形おなおしすれば良かったんだけど、アタシもう死んでるしねぇ……ふふ。でもねぇ、この体型──意外と気に入ってるのよ?」


女性気取りのごつい男の霊体が余裕たっぷりな笑みを浮かべて語ったその表情は、決して綺麗とは言えないが、私が今まで仮初めで築きあげていた余裕とは違う、本物の大人の余裕がそこにはあり、それを自然に振る舞える仕草も何処か格好よく映り、次には本気で聞いていた。


「ねぇ、どうすればそうやって、余裕ある仕草や表情が自然にできるようになるの?」


「そうねぇ──……私の頼みを一つだけ聞いてくれるなら教えてあげてもいいわよ。まぁ勿論、アタシは最初からそのつもりでアンタに話し掛けたんだけどね」


女性気取りのごつい男の霊体は条件を出してきた。 条件の度合いにもよるが一先ず聞くことにした。


「具体的に何をすればいいの?」


「アタシと一緒にアタシの結婚相手を探して欲しいの。イケメンで思考も身体も立派な物が付いてて、仕事もバリバリできて包容力も兼ね備えた長身痩躯の男がいいわね。あと自然も愛する心があったら素敵だわ!まぁ尤も、霊体のこのアタシそのものを愛して受け入れてくれるのが絶対条件だけどね」


その条件の数々を聞いた私はなるほどと巡らし一つの結論を導き出すが、それをオブラートに包む事はしないで思ったままを口にした。


「うん──無理でしょ」


幾らなんでも無理にも程がある。だが女性気取りのごつい男の霊体は無理じゃないわと一蹴し──


「何事も挑戦よ。やる前から諦めてたら、詰まらない人生になるわよ?兎角、今日からよろしくね──お嬢ちゃん」


それから私の生活は変わった。朝昼は高校生活を謳歌し、それが終わった後は女性気取りのごついオネェの霊体と共に運命の人を探す手伝いをしながら、大人が生きている世界を学ぶ──こんな生活馬鹿馬鹿しいって思っていたけれど、いつの間にかどちらも楽しみ難なくこなしていた。


──私は、この二刀流が性に合っているのかもしれない


「お嬢ちゃん、なに一人でにやけてんのよ。ほら、今日も張り切って行くわよ!」


「はーい」


私は今日も女性気取りのごついオネェの霊体と共に色んな場所へ行き感性を磨いていく日々だ──


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