第12話

「お金がないと生きていけないからね」

「お金って大切なんですね」

「お金は便利な道具だと昔から言われてきたけど稔君の話を聞いていると情けなくなるよ」

 

 

稔は「情けなくなる」という言葉に反応した。

なぜ情けなくなるんだろう?

お金のない世界のほうが便利だと思うけど。

稔は健司に聞いてみた。

 

 

「どうして情けなくなるんですか?」

「今までお金を使って助け合うことが素晴らしいと思って生きてきたんだけどね。なんだかな~って感じなんだよ」

「なんだかな~って?(笑)」

「お金のある世界って物々交換の世界なんだよ」

「物々交換って?」

「昔はね、自分が欲しい物は自分が持っている物と交換しないと手に入らないんだ。それを物々交換と言っているんだけどね、それでは不便だから物の代わりにお金というものを使って交換しているんだよ」

「それで人生ゲームの理由がわかりました」

「どういうふうに?」

「お金が無くなったら借金してでもゲームに参加しなくっちゃいけないって」

「そういうことだね(笑)」

 

 

健司はお金のない世界の仕組みに興味を持つ一方、今回のように自然災害の対応に興味を示した。

 

 

「なあ稔君、大雪が降った時は自宅待機だけど、大震災や大洪水の時なんかどうしてるんだ?」

「震災や洪水はあるけど大きな被害はないです」

「大きな被害がないのはどうしてなんだい?」

「それは簡単ですよ。震災や洪水が起きそうな所ってあらかじめわかっているでしょ?、だから安全な場所で住んでいるんです」

 

 

「安全な場所でも危険になることもあるだろ?」

「はい、そういう時はまた場所を変えるんです」

「そんなに自由に変えることは出来るの?」

「はい、できますよ」

「所有権はどうなってるんだ?」

「所有権って?」

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