第11話

健司はもう少し質問してみた。

「稔君はまだ小学生だから知ってる範囲で教えてくれるかな?」

「はい」

「仕事って多いの少ないの?」

「少ないけど多いです」

「何それ?」

 

 

健司は稔の言葉に唖然とした。

からかっているとは思わないけど何だかなぞなぞの問題を投げかけられているような気になった。

 

 

「仕事は少ないけど多いってどういうこと?」

健司は改めて聞いてみた。

 

 

「やらなければいけない仕事は少ないんですよ」

「やらなければいけない仕事って?」

「生活に不安がないように必要なものを生産して流通させることが大切なんだって習いました」

「あ~、そういうことね」

健司は納得した。

そして改めて聞いた。

 

 

「たしかに必要なものだけなら労働者は余るね。それで労働時間が減るのは納得するんだけど、多い仕事って何だろう?」

「それは、みんなが楽しく暮らせるように新しい仕事を工夫して作るんです」

「新しい仕事ってどんな仕事?」

「それは冬なら冬のレジャーとか人によって楽しみ方が違うでしょ?それをみんなで考えるんです。自分の趣味や楽しみ方を一緒に考えることが仕事としているんです」

「なるほどね~。遊びや趣味がみんなの暮らしに役立つから仕事として成り立つんだね(笑)」

 

 

生活に必要な生産と流通が満たされれば、残りの時間を楽しく生きていけるようにみんなが考えることで時間を有効に使う。

健司は労働という概念が違うことに驚いた。

 

 

「それで通勤ラッシュというものがないんだね」

「通勤ラッシュって?」

「あ~、さっき言った朝の通勤の混雑だよ」

「そうなんですか」

「会社員って朝出て夕方まで働くのが仕事だから毎日出勤することに義務感を感じているんだよ」

「それで給料をもらって生活するんですね」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る