バオズやハロウィン(夜光虫シリーズ)

レント

第1話

 もう既にわりと寒い10月の中頃のこと。

いつものようにバオズやに来たジャンボは、見慣れない飾りが店をおおっていることに気がついた。


 今日は学校も休みなので、チョコと二人で買い物に来ていたのだ。

バニラはなにやら、やりたいことがあるからと、家にコソコソと残っていた。

その様子は誕生日の飾り付けをしてくれた日と少し重なったが、チョコもバニラもあの日に1月の終わりを誕生日にすると決めたはずだ。


 なんだかよく分からないまま背中を押され、ジャンボは家を出た。

それはチョコも同じで、なんとなく視線を合わせて首を傾げた。

そして、たどり着いたバオズやまでも、明らかに様子がおかしい。



「なんだろあれ……」

「んー……」



 キラキラと輝くオレンジ色のモールが、質素な壁をこれでもかと飾っている。

その隙間に手描きの絵だろうか?

やけに上手でホラーチックな絵が吊るされて、バオズやはいつもの数倍怪しさを増していた。

モールでだいぶ華やかなのに、色々とアンバランスで、なにかこう歩を進めるのを躊躇してしまう。



「……元から変な店だけど、もっとやばいな」



 つい呟いた言葉にチョコは吹き出した。



「元からって。確かに置いてるものとかちょっと変だけど、バオズは美味しいよ」

「まぁ、それは確かに」



 チョコの声は、だいぶバオズやを信頼した笑い声だった。

自分もずいぶん前から……あの10年を越えて、この街の工場に戻ってきた時にはすでに、バオズやは開店していた。

味も分からないまま、ギリギリ知っている文字をたどって、いつも同じものを買っていた。

その頃の自分の方がよほどボロボロで、危なそうな客だっただろう。

けれど、店主はいつも変わらず、飄々と笑っていた気がする。



「なんか特別な祭りとかやってんのかな?」



 チョコはただ不思議そうに言った。

なんとなくハッとして、回想を断ち切った。



「ま……入ってみればわかるだろ」



 ジャンボはそのままチョコの手をひいて、いつもの扉を開けた。

もう何年も通った扉を。

そして、もう何年も目にしていたはずの、いつもの店内を。


 と、思っていたのに、店内は店内でやばかった。



「いらっしゃい」



 店主が悪い笑顔で振り向いた。

その頭にぎらりと煌めく赤い角が生やして。

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