カレーな人
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カレーな人
「今日は何カレーにしようかなぁ?」近所にスーパーはいくつかあるけれど、カレーにする時はいつもこのスーパー。ここは安いのはもちろんの事、カレーのルーが豊富だからだ。
「あっ!今日は鶏肉安いからチキンカレーにしよ!」その日の特売品でその日のカレーを決めている。
レジで会計をしていると『今度の土曜日にこのスーパーでお料理教室やるんですけど、良かったら参加しませんか?一味違ったカレーを教えてくれるそうですよ』とレジのお姉さんに声をかけられた。
カレーの食材はこのスーパーでしか買わないから、俺の事は【カレーの人】と呼ばれているのだろう。
俺が思わず「あ、それは楽しそうですね」と言うと、レジのお姉さんはニコっと笑って、詳細が載った紙を渡してくれた。
ふむふむ…そっか、早い時間にスーパーに来た事が今までなかったから、料理教室やってるの知らなかったのか。ん?エプロン持参、かぁ…カレーの色、いくら洗濯しても落ちないんだよなぁ…
このスーパーには衣料品売り場もあるので、食材を買ってからエプロンもついでに買って帰った。
次の土曜日。スーパーの入口に着いた途端、男で料理教室に来る奴なんかいるのか、と今更になって不安になっていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
キョロキョロしていると、こっちに向かってお辞儀をする女性がいる。
その女性は『こんにちは。先日料理教室を勧めたレジの店員です。来てくれたんですね?良かったー』と言うので、
俺も「こんにちは。是非美味しいカレー作りたいので。それにお姉さんが一緒で良かった」と答えた。
料理教室の会場に着くと、先生っぽい人を5人ほどの参加者が囲んで談笑している。
とっても笑顔が素敵な優しそうな先生で一安心した。
参加者は軽く自己紹介してから料理教室が始まった。
二人一組になって料理を作っていくようだ。
レジのお姉さんとペアになり、森川さんという名前だそうだ。
バックからエプロンを出すと、偶然にも森川さんと色違いで、なんだか新婚のカップルみたいでちょっと照れくさかった。
先生から渡されたレシピを読むと、主な材料は牛肉、玉ねぎ、人参、じゃがいも、カレーフレークとなんら変哲のないレシピ。
「これで美味しくなるのかなぁ」とボソっと独り言を言うと、
森川さんは『そうですよねー!この材料で美味しくなるなら嬉しいですよね!』とテンションが上がっているようで興奮ぎみに話す。
玉ねぎは薄切り、じゃがいもと人参はすりおろす手順で、森川さんが玉ねぎ、俺はすりおろす事にした。
森川さんの手元を横目で見ていると、包丁使いが上手で、玉ねぎを切る音がテンポよく心地よい。
レシピを見ながら協力して一つの料理を完成させる。中学校の家庭科の授業以来の経験に、俺は終始ウキウキしていた。
カレーが出来上がり、参加者みんなで試食をする。「わぁ~美味しい!めちゃくちゃ簡単なのに、すごい!」
こんなご時世だし、人との関わりが希薄になっていたので、今回参加して本当に良かったとつくづく思った。
「森川さんのおかげでとっても楽しかった。本当ありがとう」と森川さんに感謝を伝えると、
森川さんも『私も一緒にお料理作れて楽しかったです。私も実はカレー大好きなんです。お客様の買われる材料を毎回チェックしてて、私も同じ材料を買ってカレー作ってました。
今回エプロンが必要って書いてあって、いつも使ってるエプロン、カレーの黄色いのがどうしても取れなくて、急いでうちのお店のエプロン買ったんですよね。そしたらお揃いになっちゃいました』と言われ、
「俺もですっ!」と興奮して思わず森川さんの手を取ってしまっていた。
お互い照れ笑いしながら、残りのカレーを食べ進めたのであった。
カレーな人 樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須 @ituki505
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