第4話

「確か写真部さん、学校SNSに動画あげてますよね。テロップとかの文字入れとかもしてるし。入学式の様子とかも。写真撮ったのをつなぎ合わせて、動画なんかも編集して学校ホームページとかにあげてましたよね。それやったの、圭吾なんじゃないの? 前に自慢げに話してたの聞いてたんだけど……」


 うう。何やってんだ俺。


そんな過去の行動がいまになって仇になるだなんて、そんなこと考えたことある? 


俺は横を向いたままパソコンを触っているフリを続ける。


ガタリと椅子が動いた。


「だけどほら、お願いされたって写真部のパソコンはもう保存データが一杯でさ、演劇部の長い動画編集は作業が重くなるから……」


マウスを動かし、時間稼ぎのためだけに、封印されていたフォルダーを開いた。


『星空』とフォルダーだ。


一枚しか保存されていないその中には、いま目の前にいる舞香が、あの時の瞬間のまま保存されていた。


「これって盗撮……?」


「はい?」


 突然、頭上から声が聞こえた。


驚いて顔を上げる。


すぐ後ろにイケメン部長が立っていた。


画面には、まっすぐにこっちを見ている舞香の画像が映し出されている。


慌てて画面を手で覆う。


「違います! だってほら、こっち向いてるでしょう?」


 とは言ったものの、すぐそこにいる本人に確認されればお終いだ。


画像ファイルを閉じなければ。


マウスを動かそうとした俺の手に、イケメン部長の手が重なった。


彼は俺の耳元でそっとささやく。


「舞香のこと好きなの?」


「だから違うって……」


「大丈夫。協力するよ。もう誰にも、盗撮だなんて言わせない」


「ちがっ!」


「ほら、やっぱり動画編集ソフトが入ってる」


 重ねられた荒木さんの手が動く。


操作されたマウスは、さっきまで俺の見ていた動画編集ソフトを、何の躊躇も忖度もためらいもなく表示する。


「ね、圭吾クンは動画編集作業できるの?」


「出来ますよ部長! 圭吾、そういうの得意だって自分で言ってました!」


「わー。それは実に頼もしいね」


 完全に棒読みじゃねぇか! 

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