あと、一年。そう思って生きてみる
福倉 真世
2022年3月14日 無為の日 -残り365日-
今日も私は一歩もうちの外に出なかった。
ほぼ、一日中、犬のマロンの体温を感じながら寝床に転がって、お腹が空いたらちょっとだけ起き上がって味のしないごはんをたべる。
朝、両親があわただしく終えた朝餉の後片付けをしたこと。
強いて言うならそれが、今日したことのすべて。
……自分の置かれた状況が、悪いことはわかっている。
なんとか藻掻かなくてはならないことも、わかっている。
それでも、藻掻く気力がわかない。
陰性症状――いわゆる鬱によくにた症状に絡めとられた私の心と体はさっぱり、動いてくれない。
そんな日々のなかで不意におもったこと。
先がある、と思うから。
その先が暗いことがわかっているから絶望するけれど。
『その先』なんてない、と一旦決めてしまったら?
私は、自死し得る方法を、複数、知っている。
従兄弟が自殺したときにとった方法と、
ある医学論文に書かれていた方法と、
それから――
ごくり、と唾をのむ。
そう。いつでも終わりには出来るのだ。だったら――
一年。期限を付けて頑張ってみようか。
一年後、自分が生き続けたいと思っているかいないか。
今はわからないけれど。
――あと365日。
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