第16話 最悪の再会
そんな時、学校でゆいちゃんと友達が喋っていた。
「今度さ、私のお兄ちゃんがいる学校で文化祭あるんだけどゆいも行こうよ!」
「えーどうしようかな?どう思う、かずき」
「文化祭か、でもゆいちゃん僕がいなくて大丈夫なの?」
「それなら大丈夫!私がちゃんと見とくからさ!」
ゆいちゃんの友達が言った。
「って言ってくれてるんだけど‥‥」
「もしなんかあったらすぐ電話してくれる?」
「分かった!」
本当に大丈夫かな。僕は初めて行く場所に、それに文化祭と言えば出会いもある。心配だな‥‥ついて行くか?それは過保護過ぎるし、何より束縛してるみたいで嫌だな。僕は葛藤していた。
数日後、文化祭に行ってきたと事後報告をしてきたゆいちゃん。
「文化祭今日だったの?」
「言ってなかったっけ?」
「もっと先かと思ってた勝手に」
「それでさ、聞いてビックリしないでよ!」
「なに?」
「そこの学校で誰に会ったと思う?」
「えっ誰?」
「たいちだよ!たいち!」
「たいちって誰だっけ?」
「小学校の頃よく公園で遊んでた、お金持ちっぽい子だよ!」
僕はハッとした。そうだ‥‥たいちくんだ!すっかり存在を忘れていた。
「かずき?」
「あっ、たいちくんね!覚えてるよ!」
「帰ろうとしてたらさ、声かけてくれたんだ」
「よく覚えてたね」
「私も驚いたよー!」
「それでさ、今度三人で集まろうって話になったから遊ぼうよ!」
「‥‥うん、そうだね」
なんだか複雑だな。たいちくんかっこよくなってるんだろうな。僕は無意識にそんな事を思っていた。
数日後、ゆいちゃんと公園で待っていると、
「ごめん、遅くなって」
そこに現れたたいちくんはそれはそれはとてもかっこよかった。背は僕よりも高く、服もおしゃれで髪もセットなんかして、まるでモデルのようだ。
「うちらも来たばっかだから大丈夫だよ!」
「久しぶりだな、かずき」
「う、うん」
「じゃあカラオケでもいっちゃう?」
ゆいちゃんが言ってきたので僕達は三人でカラオケに行く事にした。
カラオケ店に着き部屋に入ると、ゆいちゃんは何故かたいちくんの横に座った。距離こそ近くないものの、僕はなんでって思った。
「ゆいちゃん、そっちでいいの?」
「うん、私別にどこでもいいから」
「そ、そう」
なんでだ、なんでそっちにいるのゆいちゃん。僕は気に入らなかったが空気を壊すわけにもいかずそれ以上は何も言えなかった。
ゆいちゃんがあまり上手くない歌を歌っている。いつもならそれさえ微笑ましく見えるのに、今日はどうも耳障りだ。
その時の僕は終始不機嫌になっていたと思う。しかし二人は僕なんかお構いなしといった感じで盛り上がっている。疎外感さえ感じた。
「そろそろ帰ろっか!」
ゆいちゃんの言葉で、僕達はカラオケを出る事にした。
外はすっかり日も暮れていた。
「ゆい、暗いから送るよ」
たいちくんの言葉に僕はすかさず言った。
「僕達一緒に帰るから大丈夫だよ」
「‥‥なら大丈夫だな」
「うん」
心なしか残念そうにするゆいちゃん。
「じゃあ帰ろう」
僕は一刻も早くたいちくんと解散したかった。
「じゃあまたね!」
そう言ってたいちくんに笑顔を向けるゆいちゃん。
「おう、気を付けろよ!かずきもまたな!」
「うん」
僕の足取りは重かった。
「今日楽しかったねー!」
ゆいちゃんが無邪気に笑う。
「うん、そうだね」
僕はそう言うのが精一杯だった。
「どうしたの?カラオケの時から思ってたけど今日テンション低くない?」
「一つ聞きたいんだけど」
「なに?」
「もしかして、僕達が付き合ってる事たいちくんに言ってないの?」
「ん、なんで?」
「だってカラオケの時普通はカップルは隣同士に座るのに、たいちくんの方に座ってたし、帰りだってたいちくんが送ろうとしてたじゃん」
「嫉妬?」
「そうゆんじゃないよ」
「違うの?そっかー残念だな」
「なにが残念なの?」
「だってかずきっていっつも澄ました顔してさ、嫉妬とかしてくれないからちょっと試したの」
「試した?」
「そうだよーだから気にしなくていいのに」
「気にしなくていい?」
僕はゆいちゃんの無神経さに腹が立った。
「何?怒ってるの?」
「別に、でも今日は先帰るよ」
そう言って僕は先々帰ってしまった。
結局のところ、付き合ってる事を言ったのか言ってないのか分からないじゃんか。もしかしてゆいちゃん、たいちくんの事好きになったんじゃ。さっき冷たい態度とっちゃったし乗り換えられたらどうしよう、不安になってきた。僕はまた悶々と考える事に。
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