第9話 成功?
あれから帰るや否や僕はネットでありとあらゆる情報を集めた。ゆいちゃんを落とすために!
どうやら吊り橋効果というのがあるらしく、どきどきをドキドキに錯覚させる方法らしい。でもそんなシチュエーションどうやったら‥‥。
僕はゆいちゃんにLINEをした。
「今度の日曜空いてる?」
「空いてるけど、なんで?」
「また四人で遊ばない?出来れば遊園地とか行こうよ!」
僕はあの一件から何故かゆいちゃんに対しての壁が消えたような気がして前よりずっと接しやすくなったのだ。イメージが変わったとも言えるがどちらかと言うと今の方が好きな気持ちが大きくなった。
「いいね!行こうよ!たいちには私から言っておくからさ!」
「うん、よろしくね!」
僕はやると決めたらやる男だ。吊り橋だろうが架け橋だろうがやってやる!
幸い僕はお化けなどの類は怖くないのだ。
あっでもゆいちゃんも平気だったらどうしよう。その時は絶叫マシン?正直言うと、僕は遊園地に行った事がない。もし絶叫マシンに乗る事があって失神でもしたら台無しだ。僕はまた悶々と考えて煮詰まらないでいた。
当日の朝になり、いつもより気合を入れて準備を始める。
髪をワックスでセットしようと思ったが結局上手くいかなかったので諦めて髪を洗った。そのせいで時間に遅れそうになった。
待ち合わせはいつもの公園だ。遊園地にはバスで向かう。
必然的にゆいちゃんの隣に座る事になったがゆいちゃんにもだんだん慣れてきたな。我ながら成長に感心していた。
「あれ?なんかいい匂いする」
ゆいちゃんが鼻をクンクンしている。
「どんな匂い?」
「シャンプーみたいな匂い」
「髪洗ったからかな」
「朝シャワー入る派なんだ」
「いや、今日はたまたまだよ」
「もしかして私と会うから?」
「ち、違うよ!ワックスがついて」
「ワックス?髪セットしようとしてやめたの?」
「そうだよ」
「じゃあ今度はセットしてきてね!」
そう言って微笑んでくる。
「分かった」
僕達の会話を後ろで聞いていたであろう、たいちくんと彼女がコソコソとなにか言っている。耳をすませて聞くと、初々しいね。とか言っている。当然だ、僕は女子とこんなに親密になった事はないのだから。それに比べてたいちくんはさぞモテるだろうな。
バスに二十分程揺られ、遊園地に着く。
「何から乗ろうかなー!」
「ゆいちゃん!お化け屋敷とか行かない?」
「いいよ!じゃあ私かずきくんと回るからお二人さんも回ってきなよ!」
ゆいちゃんはたいちくんと彼女にそう伝えて、僕とお化け屋敷に向かった。
意外とすんなりだなあ、もしかして怖くない系女子なのか?いや、まだ入ってみないと分からないよな。
「かずきくんお化け屋敷好きなんだ」
「うん、まあね」
しれっと嘘をついてしまった。
「私も好きなんだー!」
ガーン。入る前から終わった気がした。
「早く行こ!」
「う、うん」
まあでもどんなものか興味あるし、それはそれで楽しまないと損だよな。僕は自分に言い聞かせた。
「わぁ、暗くて何も見えないよ、ゆいちゃん大丈夫?」
「う、うん‥‥」
「どうしたの?」
「どうもしないよ」
僕達は壁を頼りに奥に進んでいく。
「わあ!!」
お化け役の人が驚かせてきた。
「ハハハ、ビックリしたね!」
僕は余裕だったが、返事がない。
「あれ?ゆいちゃん?」
後ろを向くと何故かしゃがんでいた。
「またまた笑い堪えてるんでしょ?」
僕は本気でそう思った。
「ちょっと‥‥きて」
「ん?何?」
「手‥‥繋いじゃだめ?」
「えっ?」
僕はビックリした、お化けじゃなくてゆいちゃんに。
「暗くて、先々行かないでよ」
「あ、ごめん」
「手、貸してよ」
「あ、わ、分かった」
僕は一気に手汗が出た為服で手を拭き、差し出す。ゆいちゃんは僕の手を握り立ち上がると、
「ありがと、先進も」
そう言ったので僕達は手を繋ぎながら歩く事になった。
僕は手に全神経がいってしまい手汗が止まらなかった。
「手べちょべちょだね」
「ごめん」
手を繋いでるってだけでも心臓が飛び出そうなのに、手べちょべちょって言われて恥ずかし過ぎる!しかもそんなストレートに言う?普通。そこは察してよゆいちゃん。
「ねえ、ゆいちゃんもしかして怖いの?」
「怖くはないよ、お化けは」
「じゃあどうして?」
「暗いのがちょっと苦手なの」
「あぁ、そうだったんだ。なんかごめんね」
「いいの、いいの、お化けは好きだから」
そういう理屈で?ゆいちゃんって意外と天然なのかな。無事お化け屋敷を脱出した後は、たいちくん達と合流して遊園地を楽しんだ。
「あー楽しかったね!」
僕は吊り橋効果の事も忘れて楽しんでしまった。
「そうだね!」
心なしかゆいちゃんの僕をみる目が優しくなったような。
「かずきくん、今日も送ってくれる?」
「いいけど」
何故かまたゆいちゃんを送る事になり、たいちくん達と解散して二人で帰る。
「あのさ」
ゆいちゃんが真面目な顔をしてこっちを見ている。
「なに?」
「私さ、今日めっちゃ楽しかったんだよね」
「僕も楽しかったよ」
「それでさ、かずきくん前告白してくれたじゃん」
「うん」
何言われるんだろう、また聞いてもいない僕の傷つく事を言ってくるんだろうな。
「まだ有効?」
「え?」
もしかしてこれって‥‥。
「有効ならさ、それ受けたい」
「どうゆう意味?」
なんとなく言いたい事はわかる。でも確信が持てない。僕は念のため聞いてみた。
「だから、付き合うって事だよ」
「えっ僕、付き合ってって言ったっけ?」
「それは知らないけど!でも好きって事は付き合って下さいって意味じゃないの?」
「あ!」
僕は告白=付き合うと言う流れに慣れていなかったのだ。小学生のような考えであった。いや今時の小学生ですらちゃんと付き合うとかはしてると思う。
「で、どうなの?」
「え、あ、有効‥‥です」
「ほんと?」
「うん」
「よかった」
ゆいちゃんが微笑んでくる。あの可愛い笑顔で。
「よかった」
僕は"ゆいちゃんと二人で遊ぶ"目標を飛び越えて付き合う事になったのだ。
もしかして吊り橋効果?!!
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