神を討つゲームに召喚された人間たち

もぴー

第1章 天使道2編

第1話 プロローグ

 時は、西暦3000年、ネット古物商で900年前に製造中止となった怪しげなゲーム機がソフト2本付きで出品されていた。


 過去のネットニュースによると西暦2100年には、一般家庭用ゲーム機は本体がなくなり、今のように、ほとんどがオンライン上で実現されるようになったようだ。


 歴史上最後のゲーム機は、人気低迷を打破するため、闇違法ソフトの販売が黙認され、その大半はVRMMO内で生活することができ、自由に恋愛したり商売したりと、当時は表立って認可が下りていない、ヴァーチャル婚の先駆けのようなことも行われていたが、好きになった相手にプレゼントを買ってあげたり、両替商でクレカの限度額を現金化し渡す者が増えてきたりと、闇違法ソフトには、そう仕向けるようなプログラムが随所に施され、日本だけでも百万人近くが廃人になったようだ。


 こういった一連の事件も、ハードがなくなる後押しをしたようだ。


 一晩考えた僕は怖いもの見たさで、そのゲーム機を落札してしまった。


 当時は法整備が整っていなかったヴァーチャル婚も、今では普通過ぎて誰も驚かないし、なんなら給料の半月分以上を仮想空間で出会った相手やアイテム代につぎ込んでいる僕からしたら、当時の人たちに、ほどほどにしとけよ、とアドバイスしてやりたいくらいだ。


 届いたゲーム機を開封すると、旧時代の匂いが半端なく、今の時代に合うように、後付けの変換プラグやコードが、ゴミ山のように同梱されていた。


 何とか小一時間で接続できたので、電源を入れ初期設定を終え、同梱されていた2つのソフトを手にとり、どちらから試すかパッケージの裏面の説明を交互に読んだ。


 1つ目の【悪魔道2】は、魔王の子供として生まれ、成長し、邪神と仲間になり、神を討つという話で、


 2つ目の【天使道2】は、ひょんなことから天使になり、成長し、邪神と仲間になり、神を討つという話

 

 共通しているのは、ソフト名の2が、地球2のことであり、マルチバースによっていくつも発生した地球の2番目に転生するということ。


 少し悩んだが、

「先に天使道2をプレイして、面白かったら悪魔道2もやってみよう。」


 さっそく円盤のようなものをトレイに乗せスタートを押し、巨大なVR装置を頭に装着し、最近購入したゲーム用ベッドに横になった。


 最新のゲーム用ベッドは、点滴のような微細な管が栄養を補給し、指定した時間にミストが身体の汚れを取ったり、糞尿を処理したりするので、最長ロングモードを使うと年単位で潜っていられる。

 

 マッスル追加ボタンを押せば、微細な振動と電流で筋肉を刺激し衰えを防ぐので、利用するものは多い。


 ゲームの設定に、第3者モードという、主人公を眺めてゲームの進行を見守るだけのストーリーモードも用意されているが、実際に主人公になりきらないと面白くないので、メインモードを選択。


 利用時間は旧型でも24倍速が選べたので、7日で168日分体験できる。


 168日分経過してクリアできなかったら、いったんセーブされて、意識が覚醒させられる。


 会社がゴールデンウイークで1週間休みなのを利用して、目一杯やってみることにした。



 実はこのゲームは、時空管理局に見つからないように、邪神の配下の悪魔や魔神が限定召喚術を組み込んだもので、この時点で彼の魂は2100年のに飛んでいる。


 本人は抜け殻だけが、残っている状態だ。


 オープニングムービーが始まると、簡単な時代背景を声優さんが読み上げるところで、意識が途切れ、地球2の世界がスタートした。

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