霊媒師と見習い

オカルト学院の食堂は四限目の授業を終えた学生たちでごった返している。ちょうど夜間部が始まる時間帯だ。社会人や聴講生も利用できるので人口密度はかなり高い。

新庄たちは厚労省の調査員に抜擢されたのだ。未成年者を地方特別公務員に採用するなど異例中の異例である。月詠の両親は富士に代々伝わる霊媒師の家系だ。その由緒を忠実に受け継いでいる。新庄と佐山は見習いでペアで機能する。しかし今、三人しかいない。


これはどういうことかというと、急な厚労省の要請で人員が不足しているからである。

厚生労働大臣は新庄の報告を読んで、オカルト学院と自分たちは友好的な関係を築きたいと考えている。そのためにまず、佐山を派遣すべきと考えた。新庄は友人として付き合う分には構わない。しかし所詮は見習いなので正規である初瀬とは主従の関係で終わる。そこで選ばれたのが佐山だ。彼は人間で、しかも新庄の友人で、なおかつ霊圧の専門家でもある。つまり新庄と同じ立場で話がしやすい。

もちろん、佐山は霊圧の専門家ではない。ただの素人だ。しかし、専門家は新庄の両親ぐらいしかいなかったし、彼らを派遣することは政治的に問題があった。だから佐山が選ばれた。

そしてもう一つ理由がある。

佐山が、新庄の護衛役として適任であることだ。

現在、新庄はテロ組織に追われている身である。護衛がいる。

だが、その護衛役は普通の軍人では駄目なのだ。相手はテロリストであり、軍人では対処出来ないこともある。そのため、佐山の特殊な力が必要となる。

――それは、神曲楽士としての、能力。

● 初瀬は新庄の背中を見送った後、ふと、隣のオカリナを奏でた。なかなかいい音がする。これは霊圧を操る器具だ。オカルト学院はいろいろと不気味な発明をしているが、きわものとして無下に扱うわけにもいかない時代になった。

心霊現象や怪異が精神医学と関係することがわかって、保険治療が適用されるようになったのだ。

部屋が大きく揺れた。すると激しい地震が起きた。新庄が慌てて戻ってきた。

新庄は机の下に隠れて震えていた。

月詠の初瀬は、自分は何をしているんだろうかと思った。

● 新庄がトイレから戻ってくると、テーブルの上にカップ麺が出来上がっていた。

新庄は席に着くなり、それを見て首を傾げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る