帰路というのは………………⑧

 このデスパレードにへと全員が揃うことにでもなったはずなんだが。驚き以外の何物でもないことが行われているらしいので。その現象というのに目を向けてしまうほどの余裕などもない。

「派手な戦闘になるとも理解してそこに飛び込んでいく馬鹿でもない」

 未だここに来れていない者がいるらしいのでそちらにでも意識を持っていかれてしまうのは何もおかしなことではない。いろいろと確認でもしたいことがあるが、それでずっと待ち続けているだけの時間も………………実は少しだけならあるわけで。

「だからこそ、あのオルトス・ダイアモンドがわざわざ連絡を取ってきた理由にもなる。心配性なだけか。帰らせる前にどこか戦いの終わった後の平和を見せたいなんて俺らもどうかしているよなぁ」

 女の子を多く艦に連れている時点でかなり稀な状況だ。この余裕のない世界でもあっても手に入るのは………………自分の身だけ。そこから欲するのは、どうせここから進みだすだけのその一歩。

 いくら艦橋にでも戻ってきたとはいえ、それだけの気持ちの余裕なんてそう多くはない。結末なんて、そう多くは下らなくもその大衆受けでもするからこそ。

 そして手に入るのは無数の死と悲しみすらない弩反吐が出る感情。それでもと、皆が戦場を求めてしまうのは、そこにあると煩わしいどころではなくて、嫌悪の表情すら浮かべてしまうからこそ何だろう。そしてその後に残るのもまた戦場で。

 細かいことを碌に気にしないでいられるのは、それは逃避ではないのか。それをするだけの時分などでハナイというのに。というかそんな時分など、どこにもないはずだと散々に知っていたはずだと。

「どうせ自己満足にしかならないことばかりをして。それで誰かを救った気にもなれば、悦でもしているわけかよ。そうやってでもその者達の多くを悲しませて傷つけているなんて」

「追い詰められている気が仕方ないとそうやって諦めて寝ていることすら出来てくもなったのが今のお前なんだろうが。ただ出番を待ち続けて控えているだけしか、その自分の行動に責任を持てなくなったというだけのお前はそうやって逃げ続けてもするから、まぁ身分としては俺と変わりはしないか」

 どうにか寝てしまってでもする理由などない。それでこその、グレイシア・アルボロスだから。何もかもとそれを払いのけてしまいたくもなるが、そうやって激情のままにしてしまうわけにもいかない。

「心配しても、それで彼らのその強さを信頼していれば素直に待ち続けているしかないだけだ。であるからこそ、為すべきこともあってそのために構えているのが自分たちのような存在で」

「他にも寝てばかりいる連中を枷をぶっ壊して起こすのはいつになるだろうかな。それを望んでやれるほど暇でもないが」

 席に座ったままに前方へと倒れていってしまうバーデス・ウィードだ。それで彼が夢にでもみるのはいったい何だろうかともなる。


 鉄アレイの一本でもあれば、それで充分。それで殴り合いでもすれば他者を鈍痛にでもさせる、その応酬だ。やるとなれば徹底的にやるとばかり。そうでもしなければ相手が崩れ落ちてくれるはずもないほどの頑強なことだとよく知っている。

 だがそうだとしても、鉄アレイでの殴り合いなどしてしまえれば、それで全て壊れてくれる保証もないのをお互いに把握している。

「そこでベンチプレスでも投げ込んでいこうとする馬鹿なのが貴様の狂いだすその精神の証明だということをッ」

 オルトス・ダイアモンドとすればこの危険な状況を更に小さく混沌にでもしてしまう馬鹿であるのは誰でもが知りえていることだ。だとしても、後ろに女の子がこちらを窺って覗き込んでいる状況で今でも慣れずにやけくそになっている可能性など恐らく初対面の相手からではそんな想像などしようもないだろう。

(知らないが。たとえこんな場面だとしても状況を理解しようとすれば侵入者が風呂敷でも包んでいってそこから運び出していくことだったか。それでどうにか窺えばいきなり襲い掛かってくるということ)

「なんだってもいい。そのほっかむり被った泥棒みたいな恰好で泥棒とかしていくのでないって。正気でもないだろ最早。古典的が過ぎてもうシュールだよッ!」

 まさかオルトス・ダイアモンドが叫んでしまうなんて。そもそもとしてこの状況を理解しようとするのが難しいのであって。

(あれっ、何か色々とおかしいな。まぁいいか)

 後ろにいるのは瓜丘うりおか亞婁螺あるらであるのだが。彼女が大鉈でも握りしめているのを見れば不安にもある。なんでこうなったっているのか。

 だがそこでいろいろと風呂敷包んだ状態でいる者がそれを投げ捨ててしまう。そしてナイフでも抜いていったとか思えばそこからオルトス・ダイアモンドにへと斬りかかっていこうとする。だがそこで急にでも動きを止めてどころか後方にでも下げるのを見てしまえば不安にもなる。というか咄嗟にそんなことをされてしまえば、警戒もする。

 そこから一気にどこかしらにでも走りだしていこうとする。だが残念ながらこの場には既に一通りの結界が張られている。

「当然、自分の手によるものだ。逃がすと思うか」

 どうやらオルトス・ダイアモンドの声が低くなっているのか、これは怒気でも含んでいる様子だともいえる。それも後ろで見せられた瓜丘うりおか亞婁螺あるらとしてはそのわけでも知りたいところ。

 だが実は正直なところ、こうでもしていなければ落ち着きがないというのがあるだけ。

(なんでこうも馬鹿ばっかりによってくるのか。馬鹿とかいってもちゃんとこれは誉め言葉ではあるのだがそれはそれでしてなのでッ。というかなんでもうさっきから面倒ごとばかりが)

 別に投げ出してもいい。とっととこの場から逃げてしまってもいい。だがそれをしてやれるほど周囲にいる者達がお節介が過ぎるのでそれに巻き込まれないためにとこうして面倒ごとは徹底的に奮闘してだけ。前もって処理でもしておけばそれで少ない数で済むからこそ。

「であればいくらでもその心臓と共にその身体全てでも捕まえさせてもらおうともだッ⁉」

 だが、だとしてもこの状況に置いてただの泥棒が結界内で自爆などされてしまえば眉など歪めてしまってもおかしくないことだ。目の前で死者を出してしまったことに対して非常に悔しいとしか。何でこうも他人の命でも失ってしまうのかなんて。

 この結界内であればあらゆる事象を近くできるはずで、それを制御出来ておかしくないということ、それのための能力はオルトス・ダイアモンドとしての実力を確かにあるはずだというのに。

「それでやられてしまえば望めもしない。己の不甲斐なさを。なんて高速の魔術式か。他人事であればどれだけよかっただろうか」

 そしてその自爆などしやがった地点にでも不用意に近づいていこうとする。だがそれで特に起こることなどなかったので反省と一安心を得られた。

「で、それで解決することなど多くなくて。何でもっと早くに気づくべきだったとか」

 ここにあるのは痕跡のみらしい。だがそれでもただの分身の術。これ自体に意味はない。別にこれのために誰かが命でも落としたわけではないと安心、そしてこれだけある程度の業でもこなせるのを見せられてしまえば更なる警戒というのをして当然だ。何でどうしてただの泥棒があれだけの業でも使えるのか。

「さては普通にただの泥棒ではないな」

「何を今更。そもそも軍事施設にというか、要塞にでも泥棒してきている時点でそれをただの泥棒扱いできるわけもないと思うのだけれど」

「………………………………」

 何か騒ぎにでもなっているのをうっかりどこからか聴いてきたか、咲乃深礼がこのむさ苦しくも現在他に他人などいてくれないこの部屋にまで顔を出して覗き込んできていた。一体どこから聞いていたのだろうか。こんなことを言われてしまえば困りもする。真一文字にでも口を結んでしまうのは特におかしなことでもなくて。

「色々とおかしいことにハナから気づくべきだったか」

 本音を言えばそもそもこの状況が可笑しいということを、笑えるわけもない。周囲で異常ばかり起こるせいで感覚が麻痺してきてくるらしい。何度もそれを見直してでもしたが、そうでもしてもそれ以上に大変なこと面倒なことばかり起こるせいでクスリかの如く慣れが来る。

「あぁ、平和って難しいのだな」

「………………ごめん私がそれに賛同でもしてしまうと多分色々と妹に対する想いが大変苦労することにでもなりそうなので申し訳ないですがご勘弁ください」

 どうやら咲乃深礼に自分は振られてしまったらしい。こうなってでもなったわけなど………………普通に自分の認識が甘かったわけか。そもそも普通ってなんだっけかなぁ。

「………………ではデスパレードにでも戻りますか。時間がないなんて自分たちにとってはよくあること。この場合はないというより迫っているというのが適切かとも」

 とかなんとか想像すれば、もうデスパレードにでも本当に戻っていけばいいだけのこと。その後ろにでもついていこうとする咲乃深礼と瓜丘うりおか亞婁螺あるらであった。何でかなんて問いただす理由もない。

「だって覚えてないもうだからこそ、知っている貴方にでもついていくしかなくて」

「何度も来ているわけでもないどころか多分配置換えとか何度も行われているであろうから自分だっても正確に把握しているわけもないのだが」


 そして杏里・レジーナとしては自分の愛機でも運んでくれたことに感謝の意でも示すことだが、それはそれとして機体の制御とかいろいろとこちらにでも渡してもらうことはする。その運んできてくれた彼というのを後ろにでも投げてしまう。

 が、それほど空間が空いているわけでもないので天井にぶつかる前にでも手を突き出して頭を痛くしないようにした。

「助かったけれども。それで手段としてこの場面には、このぶん殴ってやるしかないだけだってことだよなぁ」

 グリース・エンパスの乗るロウテイを相手にするのでもあるが凶悪なまでの火力で戦場を駆けるだけで済む気がするが。だとしても、それでも纏う気配が異常だ。

「それもお互いにッ!」

 叫んでいられもしない。この状況であればこそ、操作もやれずに死に絶えてしまいそうにもなる。それを気のせいだと割り切りなど出来たらいいが。

 ここから切り返して攻め込んでいくべきだと剣を刺し込んでいったが、それを容易くも腕の装甲で防がれてしまった。重量級ではあるのが有名なロウテイであるがこの目の前にいる奴がやたらと機敏で曲芸染みたことばかりしてくる。

 どうやっているのか戸惑いもするってこれは。そもそも見た目からして違い過ぎるからかなりのチューンをしてきたわけなんだろう。そうでもしなければ、だ。

「相手として不足なし」

 そして杏里・レジーナは後ろにでもいる者に一応の確認をしておく。

「俺が乗ってきたシャトルって壊してしまってもいいのか」

「いいわけがないって。必要な分の戦闘をしていこうとすればいいというのに私情で喧嘩をするのに他の国のを使おうとすれば」

 だがそれも一切の躊躇もなくシャトルが一発の、130mmのガトリング砲で砕かれてしまえばどうしてもこう思うことだろう。

(どうせそこまでしなくても戦闘用の機なら拳一発で拉げてしまうほどに脆いっていうのに)

「なぁ、こうなってしまえれば色々と困りごとが多いって。何でも他国の船でも破壊されてしまえば問題にもなってしまうはずでは」

「まぁどうせ使っていなかった一機くらい壊されてしまってもウチでは怒ったりしないけれども」

 後ろにいる奴が面倒なことを呟きやがった。お願いだから余計なことを言わんといてくれ。事情が捻じ曲がる。

(レーダーとか探知機器の類に不調がないことを確認してとッ⁉)

 そこでモニターに突如として走る砂埃が巻き起こること。かなりの不調と認識して構わないことではあるが、それがどうした。つまりは目隠しして機体を動かせと言われているだけだ。

 ヴァルキュリアロードの周囲へと出現するでかいサメ、それが複数。この大群の多くをバラバラにでも、三枚おろしにでも………………あぁ。

「これ、サメじゃなくて鯖じゃねえか」

「そもそも宇宙に海洋生物がいる時点でいろいろとおかしいと思うのだけれど」

 それですぐさまドでかい重量級の斬撃を直接叩きつけてくるだけこの緑色の機体というのが凶悪な性能と業を有しているということになって。

 咄嗟に身を翻していくことに成功したが、それで猪突猛進に突撃を仕掛けてくるロウテイ。それでシステム系統にまで妨害を仕掛けられているのは明白であって。

「これって結構ピンチじゃねッ⁉」

 その通り。普通に攻撃を捌き続けるのであればこちらがジリ貧にもなるだけ。どうやっても勝利の望めぬ………………本当にどれだけの時間が経っているのだろうか。

 かなり経ってもいる気がするが、それで自分が抑え込んでいるだけで事足りると信じればいいだけのことであって。

(時間も浪費したくもないけれども派手な戦闘をしないようにするのがあって。慎重に慎重を重ねて直接触れないようにと気を付けてだ)

 これだけ警戒しなければ不安にもなる。目の前にて相手しているロウテイに触れるのも嫌な予感がして仕方ない。

「せっかく直して貰ったのにまた壊すのは非常に申し訳ないのだがなぁ。全力で動かすのはとてもとても負担のかかることで怒られてしまいそうで」

「あぁどうせ機体の装甲くらいであればスペアは既に取ってあるから」

「こっちから頼んでいたことだけれどもッ、結構好き勝手におこなっているもんなんですねぇ‼」

 どうしてこまで叫ばなければいけないのだろうか。そもそも彼を止めようと、というかどこか誰かに呼ばれた気がして。

(ロウテイのハッチ一つ開け方さえわかっていればその面など拝めるか)

 たとえ短い時間であっても宇宙空間に飛び出してくほどの馬鹿などそう何度も数をこなしてなんてやっていられない。それも仮にも高速での戦闘中にだ。

 であれば動きを食い止めるのが先ではないのか。だがどうやってロウテイほどのパワーを有する機体を止めておくべきかなんて。

「やるか」

 もうこうなれば一気に後ろへと下がっていく。そうすればいくら機動力というのに注力しているグリースカスタムとはいえど、ベース機がそもそもとして違いになる。

 数回の回転でも、後転でもしていく。そうすればようやく放り投げてしまうものが杏里・レジーナにもあった。それは、もうこれを運んできてくれた者をだ。

 だがそれでしっかりと出ていくつもりもなさそうで。しっかりと機体にでも掴まることをしやがった。であればその手を速やかにでも引き込んでコックピット内部にへと再び入れておくしかないのか。すぐさまハッチを閉めていけば、一応は空気も気圧も熱もそこまで移動をすることもないはず。

 だけれども、たとえ短い時間にあっても苦痛にでも感じる。こうしてでも殴り合いでもしていかなければやってもいられない気もして。

「でもデルフェルス外周にでもやってきてしまえば隔離するための空間など一つくらいはあっておかしくない」

 咄嗟にでも飛び込んでしまったが、記憶の通り間違っていなかったらしい。渡されている見取り図の分をしっかりと一応は観ていたのが済んで助かったとも思う。

 しっかりとロウテイが追いついてきてくれたことに感謝はする。それでこの部屋の中にであれば、結構制御もコンソールで利くはずだ。

「なにせ実験用らしいし。開けて貰えた不思議はあるが」

『ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ』

 何だろうかこの幻聴みたいなのなんて聞こえてきたが。それが非常に危険を感じてしまう。これは悪意とも善意とも世界秩序ともとれる大きなそれであるとも取れてだが。

(そういう訳の分からない時には)

「転移ッ‼」

 この部屋であればしっかりと人間が過ごしていられる環境になっている。であればハッチでも開けてしまってぶん投げてしまっても構いやしない。そのままにロウテイにへと掴みかかっていく。そして………………隠し玉というのは常に用意しておくものだ。本来は緊急脱出用ではあるが、こいつを野放しにしておくわけにもいかない。

 ということでその宣言でヴァルキュリアロードによくわからないで仕込んでいた転移術式が発動することになる。理解してないシステムなど使うべきではないのだおるが、手癖が悪いものでクスねてきてしまった。それで懐に入れていたのを刺し込んでいっただけだ。

 そして転移はしっかりと発動する。その直後に連続での転移となるのだから怖くて目撃者は己の眼を疑ったことだろう。

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