最古とは曰く⑧

 どうせ自分たちの戦いまでの理由なんていうのはどこまでも誰かにとっての脅威でしかないのだ。それを忘れてはいけないとは言ってもそんなの、その時に都合のいい話があればついていってしまう子供なだけ。

 騙してくるのが悪いんだといっても、どうしても勝てるとはいえずに全てをむしり取られてしまうだけなんだよ。その希望すらもないのは、それこそ逝ける世にある地獄である。あぁ気持ち悪い。

 この冷たい空気を肌で感じてしまえばそうも涙を流したくもあるだけ。悲しい不明をドロドロと血液を垂れ流してくる。それでも自分の生きる理由も僅かに見失っているのが問題なんだよなぁ。本気で希うというのならすべてを代償に手を伸ばせと言える話だ。

 だがその、それからして見間違えているというのなら後悔の雄たけびを上げていくしか他にすることもない。であればこのボロボロになった肉体をどうすればいいのかということまでなる。

「傷だらけになってもこれは私の戦いをするしかない。だが今の身分ではやるしかないだけなんだよな。忘れてはいけないと、そのために責任を押し付けてきたせいで今はこの戦場に居られる。これを喜ばなくて何だというのか」

「………………どんな話なのかそれは………………」

 後ろにへと乗せている少女がなんか言っているが杏里・レジーナとしてはそれに構う余裕すらない。本当は構ってあげたいのだが、結局は今の操縦に不満があってそれを改善しようと必死になっているだけなんだ。

「自動機械がいるとは聞いていたがそれにしても戦闘機までいるのかッ‼」

 杏里・レジーナの操縦しているヴァルキュリアロードを囲んでくるのはブルーネオとかいう碧い騎士の意匠でばかりの巨大ロボットが三機だ。たったこれだけの雑兵であれば普段なら苦労もないのだが後ろに民間人を載せているために振り回すような機動をしないようにと丁寧にやっている。

 まぁ彼女を民間人なんて呼んでいいのかという話がある。どうせレスティラとかから来ている物好きだろうなんて考えてしまう。だがそれならば、気兼ねなくこの機体の限界にへと挑んでもいい。

 問題としては………………自分の限界をしたところで勝利が掴めるのかということだ。自信がないと言われてしまえばそれまでだ。だが周囲から漂ってくる危険な匂いというのを勘として憶えれば不安にも、臆病にもなるさ。

「だからこそ、いくらこいつらが量産されてしまった兵器だとしてもどうしても怖くなる」

 飛んでくるのは騎士として主流とされている流派の剣閃だ。これらはお利口さんが過ぎるために眼を瞑っていても対処できるといいたいが、それをすればどう飛んでくるのかが分からないのでやらない。

 どうせ複数を相手させられているんだ。ならばパターンというのもそれぞれ差があるのは当然である。そして『ブルーネオ』とか『パンジャンドラム』なんて名称がついたあの機体共は想像以上に生命というのを消耗品として捉えている。摩耗品ですらない。

「それもこれも一体どこの勢力が用意したのか。どうせあのくそみたいなマッドサイエンティスト共だろうなッ‼」

「ちょ、ちょっとっ⁉空中分解はしないよね」

 後ろからとんでもない心配の声が上がってくるがそれに構っていられる余裕などやはり今でもない。それに囲んでくる兵器の数々というのは更に増えていく一方だから遠すぎる。目的を達成するのがここまで大変だとは。

 そろそろこの杏里・レジーナがブンブンやっている機動というのも常人の域からは出ていきそうだ。そしてそれにシートにしがみつきながらも追いついてきている後ろの少女というのも中々に凄いという感想が出てくる。

 そして彼女が立ち上がっていけばここからハッチを開けていこうと試みていたので素直に開けてやった。下手に機体を壊されてしまうよりも出ていきたいというのであればそうさせてやる方がいい。ついている眼差しというのも鋭くどこかを見つめている状態だから。それは先ほどまで自身が居座っていた空間であろう。

 そこから彼女が一気に駆けていけばそれに驚いてしまう。まさか機動力がウリのはずのヴァルキュリアロードにへと勝るとも劣らない速度での動きを見せていたのだ。

「ッ⁉まぁここまでくる物好きであれば、というかクレイ王の暴挙の時にもいたのなら確かに強いに決まっている。それだけの資格はあるということか」

 若いっていいなぁ。そこまでの言葉は続いていかなかった。どこからか通信が入ればすぐさま声が聞こえてくる。それが何かといえば当然飛び出していった馬鹿な少女であるのかよ。

「有難うございました。これでもう私は動けますから」

 ここから更に加速をしてこの戦場から脱出を試みていく少女なのか。だがその機動というのはまさしく直線的なのだ。直線そのままというつもりもない。だが無茶苦茶をしだして動き回っているのならともかく、明確な意志を以ての動きであれば当然ながら知っている者にとっては散々観てきたそれであるはず。そしてその中であるのは追いついてくる一機の存在だ。

 だがそれもヴァルキュリアロードにへと背を向けていることには変わりない。一発大きくないバズーカ砲を撃ってしまえばそれで姿勢を崩されてしまうこと。その直後にヴァルキュリアロードにへと向けて多くのブルーネオが襲い掛かってきていた。

 数にして13機。どれだけの手を使えばここまでの時間で数を揃えられてしまうのかなんていっても。

「申し訳ない。押し通る」

 そしてあの少女の近くにだっても敵は多くいるんだ。2機程度で済んでいるのが大助かりか。この直後に彼女の全身から火花が散っているような、そんな幻覚が見えてしまう。それでもヴァルキュリアロードも動く。

『リローデッドアウト』

「アクセルバースト」

 これで行われるのは超高速による無数の斬撃の数々である。たった一度、位置を入れ替えただけだというのにその他の兵士たちはバラバラに破砕されてしまって冷たい海の上にへと落ちていくだけ。

「なんて無茶をやらかしたのか。これならもうそろそろ逃げ帰った方がいいのか」

 そこでヴァルキュリアロードにへと飛んできていたのは一本のカプセルである。これが何かと思って掴んでみればそれは特に爆発などもしてくれない。再びハッチ開けてしまえば機体の操作をしていって手元にまで引き寄せていく。

 それは肉眼で見ても本当に………………。というか通信が阻害されているのなら使用を考慮されているこれ。これにはうちの部隊で使われているものなんだが。まさか誰かが同胞を騙っているのか。そんな疑いを胸にして、流石に躊躇はありつつももう面倒だとばかりに座席にへと戻る。そして近くにあるパソコンというのを機体のコンピューター全体から一度外していく。

 まぁカプセルと繋いでいけばそこにあるデータというのも確認する。特別に危険なウィルスでも入っているわけでもなさそうなので機体にへと戻していく。

「そろそろ近くに来ることを知らせるのにこんな面倒な手を打たなければいけないとはな。これも進化を完了できていない集団の中にいるということか。不思議なもんだよ」

 送られてきたデータにはかなり面白いことが入っていた。というかこれを調べるのを自分でやらなかったことには悔しさすら滲んでくる。せめてこの場にいるのが自分の責任だとも考えてしまうから。

「であればこそか。人間の模倣などというのは無理があるとどうして理解していないのか。それともそれすら興味がなくまた別の可能性を求めているのか。成果は出ずとも散々な結果しか出てこない、それを望むのであれば勝手な非人道的な扱いをしていることになる」

 認めてしまえばどこまでも壊されるのがオチだ。最後は破滅しか出てこない。

(それでも生きることを望むというのであれば、それはこの確立をだ。やってくれよな)

 合流するのであれば都合のいい地点というのもある。どうせ真っ直ぐに目的の極点にまで進んでいくのが一番いい。それに、恐らくこの少女とは無関係ではないはずだから。

 含まれているデータの中には言語として見えているのが、あの現在右往左往とこれからをどうするか戸惑っている様子の少女が使用しているそれに近い印象を受ける。

 明確に違うとはいえるのに、どこかと言われてしまえば難しい。そんな違和感だ。

 だったらともうゆっくりと近づいていく。そしてハッチを開けて立ち上がっていけば後ろの空間を示していく。

「ずっと外にいたら寒いだろうに。楽が出来るのならそれでいいって。体力の温存は一番に優先するべきことだ」

 これを聞いたからだろうか。というか少し離れていたというのに聞こえたのだろうかとも。それでぽわぽわゆっくりともハッチまで近づいていったかと思えばこちらの頭を支えにして先ほどまでいた後ろの空間にへと引っ込んでいった。最早そこが彼女の定位置なのかともなる。

 完全に乗ったことを確認すればハッチを閉めていく。そして変形をさせていけばそこからかなりの速度で以て目的の場所にへと向かっていく。

 かなりのGがかかるはずなのにしがみついているだけで済ませていられるのは相当に鍛えていなければいけないはず。だというのに実現しているというのはどういうことなのか。

「聞いてもいいか」

「何をですか」

「君はどうしてそのその力を手に入れたのか。そしてナゼ私に隠すことをしていないのかということだ」

 杏里・レジーナは純粋に持ち合わせていた疑問というのをぶつけてみた。ただ、ここを飛び交っている時点で常人であるなんて呼べるはずもなしだ。何かしらの訓練等を経ての力。興味はある。

「なぜと言われてもこれは私の存在する理由。私が私であるための証明ですから」

 彼女が握りしめている宝玉というのは気になるところだ。それを使用してあれだけのことを生身でやっているのか。誰だってできるようになるなら欲しいと願う者はいくらでもいるだろう。使いこなすのに訓練はいるだろうがそれでもその訓練をというのであれば持っていない者と比べてしまえば歴然と差は出る。ならば、採用によるのが大きいのかとも。彼女の生きている理由など知ったことではない。

「あぁ、そうか。君は難しい境遇に置かれていたのか。深くは聞くつもりはない。そろそろ到着するのだがどこで降ろして欲しい。私は仲間との合流がある。流石に永く一緒にというわけにも」

「当然です。私も勘弁願いたい。それでは」

 そこで彼女が呼吸音を何度か耳にする。それが何を意味するのか。何かしら強力な術でも発動をさせるのか。であればこの機体を破壊するようなことはされたくはないと。

 そんなことを考えたところでなんか眩しくなって瞬きをしてしまった。その次の瞬間には既に姿を消していたのだ。

「どうなっている。まさか転移でもしたというのか。だとすればここに籠っていたいたのは………………自身の居場所を特定されないためと体力の回復か」

 だとすればその通りに使われたな。ここはもう既に極点からすぐそばだ。この空を飛べることになるとは。誰が想像していたのか。余程の物好きが志願してこそだと考えていたのにこれだから。

『隊長は無事なんですか。機体は元気に損傷も一見見当たらないですが』

 そう言ってくれるのはうちの部隊の奴だ。無事というのであれば全員そうだというのに。

「君たちの無事を心から祈った甲斐があったよ。部隊に一切の欠損なしとは嬉しい限りだ」

 ここまで近づいてきたのは通信の阻害をされているから。どうにも自分の部隊の様子すらも確認するのが難しいなんて気分が乱高下させられる。だが情報なんてゴロゴロ廻っていつだって同じことか。

『それをいうのであればわざわざ迎えにきた甲斐がありました。隊長、実はもうここから離れた方がいいですよ』

「いったい何があったのか、聞かせて貰おうか」

 部下の懸念する事象というのがあるのならそれを聞かなければいけない。カプセルを送ってから時間も経っていないというのに状況が変わるとは。

『あの巨大な塔がいつ建てられたものなのかは知りません。だとしてもエネルギー反応の測定をしてみれば奥深くから湧き上がってきていますと。それが何を示しているのかは内部に入っていかなければわかりませんが。遠くから部屋の中まで覗き見るのは難しい。ですが侵入を試みてもそれがどこから入ったモノかと』

 まかさ極点から噴火でもさせようとしているのか。白亜にまで塗られた尖塔をいくつも並べてまた尖塔を創り出すといったこと。これを建設した者はよほどの偶像を求めているらしい。

 だがいくら何でも大気圏を突き抜けようかという高さの尖塔を創り出すなんてどうして誰にもその様子に気づかせなかったなんて芸当が可能だったのか。

「まぁそれはいい。侵入が出来ないとはどういうことなんだ。素直に正面から入っていけばいいだけだろう。まさかそれすらもさせてくれないということなのか」

『お見事です。その通りに正面からぶつかっていけば反対側に通り抜けてしまうんですよ。そしてその後方には砲門が付けられており、油断をしていれば集中砲火を浴びてしまう。それで咄嗟に回避をして破壊をしていったのですが』

 それで彼が指し示した方向というのには、特に損傷なども見つからない尖塔の数々が見受けられる。その中にある砲門があってもわざわざそれだけを壊してしまう義理などあるはずもないのに。それで無傷は異常なんだ。

 分厚い氷の上にへと何とか降り立ってみれば、その周囲には他の者達もちゃんといる。それは空から見せて貰っている。ここまで近づいていけば相互の通信も阻害があるはずない。それまでに進んでしまっているほど高濃度になっているとは想像もつくはずもないから。

 モニター画面にへとそれぞれの姿が映っていたりとかしていなかったりとかするのが面白い。映っていない者といえばわざわざ外に出て肉眼で景色を眺めたいという物好きか。

 滅多にない機会であるから特におかしなことでもない。それをいえば次に見れる機会などあってたまるかという………………。それで杏里・レジーナもハッチを開けて外にへと出てみればおかしなことに気づかされた。

「ナゼ警備兵の一人もいないのかともなる。もしや嵌められたか。だったらかなり窮地に陥っているが」

 杏里・レジーナは不安に駆られて座席に戻っていく。そこで周囲の状況の確認をしようかとしたところで顔を苦々しく歪めているのを見せられる。

「どうした江老根?何かあったか」

『近づいていますね。サイズ差による圧倒的な圧殺程美しいものはないと言いますがね、これ以上に醜いのは滅多に観れませんよ』

 そして送られてくる映像は持ち込んできた観測装置によって手に入れた現在のそれである。まさかこの南極で火の海というのが見れるとは誰が考えるか。夢想ではなく実際に火炎によって焼き尽くされてイル。

 その足元にあるのはちんけなプレハブ小屋である。だがその建築の様式からして何度か見たことのあるそれである。ニュースなどで何かしら奇怪な事件があった場合に時々映されていた。それが何でこんな場所に。

(そういうことかッ‼)

 ようやく合点がいった。今回もそういうやつらが関わっているということ。そしてなんで私にその連絡がないのか。

 そこで少なくとも今は部下を持つ身だ。勝手な行動は慎まなければいけない。であれば信頼をしなければいけないか。

「では君たちはあれの阻止をしてくれ。私は遅れた分だけ思いっきり挑んでその分だけの仕事をしてみせるさ」

 それで杏里は前にへと飛び出していく。そして部隊から大きく距離を取っていけばそこで撃つのは閃光弾だ。これでワサワサと自然界にいるはずもない獣の集団がこちらを狙う眼差しまで出してくる。

「さてと、私に教えてくれたまえ。どうすればいいのかを」

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