世界を揺るがすその前に②
ゆっくりと起き上がってきたフィリアといえば受けた傷を撫でてその感触を確かめることをしていた。
そして持っていた唐笠を地面へと一度突き刺して一息つく。
「これでまだ戦える。少しは目が覚めたよ。少しはだけれど」
「少しは、か。それでどれだけの者を絶望に追いやってきたか」
「知らないなどとは軽はずみには言えませんね。だけれど事実であるからして諦めることはしない。オイラは君を止める」
それを聞いて静かに蹴りの一撃で地面を捲り上げてきていた。それが向かってきているのは当然フィリアのいる地点にだろう。
当然ながらそれは広げた唐傘によって防がれてしまう。そこから飛び越えて頭上へと落ちていこうとする。
拳を握って勢いよく振るっていった。だがそれはゴロゴロ回転をしていって後方へと下がったことによりどうにか回避には成功する。
だが追撃が向かってくるなどもわかり切ったことだ。この闘牛の怪人の女性はさらに速度を上げてきて左の拳と右の角によってフィリアへと連撃を行っていく。だがその圧倒的な強さによる格差の前に足を止めることになる。
すべての攻撃を優雅に躱し受け流して、時にはその場に受け止めてなどしていた。
この動きにはもう観戦している二人が感嘆の声を上げていた。
「もうあいつでは勝てる気もしないな。レベルが違いすぎる。さっきのはもう遊ばれていたのか。そういうことをするとは思えなかったのだけれど」
「そうはいってもただの人間がいきなりあれだけの怪物に勝てるはずもない。ハナからわかっていたことだろう。ひと時の夢を見られただけでも幸せだというのに。限界もすぐに来ることだろう。………………………………………………………………もう楽に終わらせてやるか」
人ひとり抱えた怪物が指先を立ててその闘牛の怪人へと突き付けていた。その指先には奇怪な雰囲気を宿っているようにも見えていた。
それに嫌な予感がして警戒感を強くする。そしてやることなど既に決まっている。
一気に前進をしていって胸元の奥へとつま先を刺し込んでいた。ここからさらに猛攻を仕掛けていくことはしない。
全力でこの場所から排除するにとどめる。
闘牛の怪人の後方には何故か黒く染め上げられたワームホールが形成されていた。
この現実にはあまりにも受け止めるのが難しい。ワームホールなど無茶無茶なことをするのはあまりにも無駄とも思える。同様のことを実現させたいのであればワームホールでなくてもいいはずだ。
だからこれはただの実験、訓練、もしくはお遊びというものか。
「ふざけているのもほどがッ」
「いいじゃないか。これで全力でないことが分かって。それではまた会いましょうかね。会えたらですが」
そして突き込んだこのこの蹴りを一気に押し込んでいった。これで無防備なその肉体も丸ごと謎で危険なワームホールへと飛び込んでいった闘牛の怪人であった。
そこから奥へといって見えなくなるまで律義に手を振っていたりもしていたフィリアであった。
襟を正していきこの観戦していた二人の野郎へと向き直っていた。それでも目の前で異常な現象と奇行を見ていたというのに動じる気配がない。
「ようやく落ち着いての話が出来そうですが………………………………………………それを許してくれるほど世界は優しくないのか」
「なんて冗談を言っていられるのならそちらも少しは落ち着いていると考えてよさそうだが………………………………………………………………………………そうはうまくいかないだろう」
抱えられていた蛇の怪人が振りかぶって投げられてしまい壁に埋められてしまっていた。それには思わず失笑をこぼしてしまう。
「で、目的を聴かせてもらえれば助かるのだが」
「あぁ大したことではない。どうせここでこの下にいる国も大地も星もゼーンブ滅んでしまうというだけさ」
それを聞いてしまえばフィリアの思考はかなりの数の問答を自分だけでしていた。
納得がいかないこちが多すぎる。何かといえばこれはもう能力のあるのかいうことになる。
いくら無茶な思考だろうと実行するだけの能力がなければお話にならないというものだ。だからそれは………………………………………………………………あぁそういうことか。
(しっかりと手段は用意されているじゃないか。それも面倒なくらいにはすぐそこにも)
「このクレイ王の暴挙を釣り上げたのは君たちか。そしてこれをぶつけるだけでも、振り下ろす、元の場所に落としてしまうだけでも効果はある。これだけの質量にしかも危険なダンジョンというのだからね。ただそれだけでどうこうできるほどにはこの世の中というのは甘くはないというはずだ」
それを聞いてかその場に立っている彼は抱えていた腕を軽く振っていた。どうもこれから動きますと宣言をしている様子か。
だがそれとも少しは違うらしい。その人物というのが指を立てて遥か彼方の天空を指さしていた。そうしたところでこの上にあるものなどはもう既に空とは呼ぶのを難しいと考えるが。何せもうこのクレイ王の暴挙は奴らの手によっって飛び上がってしまったのだ。
となれば打ち上がった後に残るのは何度も傷を受けてきた宇宙の彼方にしか存在しないものであって………………………………………………………………あぁあぁあぁあぁ。
「最悪じゃないか。もうあれだけの生き地獄を再び現実のものにする気か」
拳を力強く握りしめていき壁へと叩きつけていった。それで天井の一部が崩落してしまったがこのくらいで揺り動かされるのはない。これくらいで自分の足元を外されるほど実力が足りていないことはない。
ここにいる全員が圧倒的な、それこそ一つ違えば世界最強を名乗れるほどの実力を保有しているという怪物ぞろいだ。
だとしてもそれでも星を滅ぼすなんて楽にはいけない。可能なほどの実力は備えているがそれはそれとして誰だって難しいだろう。
それこそ妨害があって基本的に通るとは考えないことだ。その妨害を行うのがどれもこれも粒ぞろいときておりどうせ一撃を入れたところで防がれてかその動作の前に壊されてタコ殴りに遭うのがオチだ。
なればこそ今の時代においては少なくとも幾重にも策をというか打撃を連続で行っていくのが当然のことにされている。
つまりは奴がこうして指を指して注目を集めていた目的というのはそこに何かを置いているという親切を含めてさらにそこに入るのが。
「………………………………あぁちゃあんと防御の姿勢を取ってくるのか。であれば遠慮などしているのはそれこそ失礼だと思うか」
「んなことをいってもこいつに対しては遠慮など出来っこないっていうのだろうに。こちらが挑戦者なのを自覚してなければいけないっていうのに。油断などしていたらこちらが狩られるぞ」
この怪人どもはお互いが分かっているとばかりのやり取りを行っていたりもしていた。ここにいる二人というのはそこそこは仲のいいことらしい。
そしてその怪人二人に対して左右を挟まれてしまった状態のフィリアはどうにか腕で防いで歯を食いしばり堪えている。まさかの口元から煙を噴き出している状態でどれだけの力が加わっているかの想像ができるだろう。
さらに言えばとっくの昔に通信妨害までされてしまっていた。これを突破するのは正直いって難しくはないだろうがそれに割けるだけのキャパシティーなどこいつら相手には存在しない。
シックルとカットラスによって両の腕を傷つけらえたフィリアはつい笑みを洩らしてしまっていた。
これだけの傷を受けてしまっても満足できる。その思考というのには時々自己嫌悪に陥るが今はそれも胸のうちにしまっておく。
突如としてフィリアの姿が消えてしまったのを見て思わず周囲を探してしまう。だが誤魔化されるなんてこんなものでとはならない。
先ほどまでいた場所に蹴りを入れてみればこれは確かな感触があった。そこから出てきたのはフィリアであり吹き飛ばされたのはシックルを持っていた蛇野郎の方であった。
それに驚き動きを止めたところで直接の蹴りを放たれてしまい天井へと叩きつけられてしまいカットラスを手元から滑らせかけた。が、すんでのところで力を戻して事なきを得た。
「面倒だこの野郎。全部ぶっ壊してやるから持ちゆる力の全てで来い」
そう手招きをして土に塗れた戦場をぶち壊しにかかっていたフィリアであった。
このクレイ王の暴挙の上空どころかさらに上に掲げていた存在がいた。それはよっぽど危険な物体が浮かんでいた。
それは巨大な衛星であった。蟲の姿をした奇怪な機械がそうして存在している。
何故かいつなのかどうやってここに建造をしたのかなどという理由を求めても仕方のないことである。
そこにあるという問題さえあればいい。そしてこの事実によってあらゆる危険が近くの宙域につき纏う。
搭載されているアンテナによって情報を手に入れてくることだって、その中にある艦載機や戦艦などによって侵略行為を行うことだって可能である。
これが必要などなく持ちゆる砲撃によってあらゆる存在を撃破することだってできてしまうのである。
可能かといわれればそれは出来てしまう。出来るだけ予兆を隠してしまえば何ら問題がないという結末にはなってしまうが………………。
そして放たれていった地点というのは大陸の中央近くに存在していたものである。
国に住んでいたのは20万人を超えるくらいか。それだけの人口を有する一国が一瞬にして消滅してしまったことは恐怖に震えるものである。
ただそれが出来たのも生きていられたらの話である。
その誰もがいなくなってしまった。誰もが焼け焦げてしまい遺体すら残らずにいてしまった。炭すら残らず灰すら残らずに全て滅んでしまった。
あぁこれでこの国は終わったことだろう。まさかのかつて世界を闇に陥れようとした国が滅んでしまうのはあまりに悲惨である。
それを現場の遥か遠くから悲しみを理解してしまったフィリアは地面に深く穴を開けてしまう。
「あぁ冗談ではない。あぁあぁあぁあぁ全くもって冗談ではない。クソッタレな現実というのはこういうことをいうのだろうな。久しぶりであったから忘れていたんだよね。これが平和ボケっていうものか。………………………………………………どこのどいつだ‼出てこいっていうんだよッ‼」
持ちゆる激昂を示していってその大地を踏みしめてそれを破壊する。
拳を広げて蛇野郎の頭を掴んでいこうとする。
「へッ!戦場で冷静になれないやつは負けるっていうのがお約束っていうんだよッ」
横へと跳ねていってどうにかその攻撃を躱して見せた。そしてさらに持っているシックルで腕を狩りとろうとしていた。
「フグヲッ⁉」
だが一切の予兆なく顔面を掴まれるという現実がそこにあった。そこからもう一方の拳でもって顎を殴りかかっていった。
「へブアッゲブラッデブラッ⁉」
何度も何度も殴られてしまいもう肉の形を保ってはいない。蛇の形であったことが幸いしてかどうにか原型を封じていられるのであったが。
「あぁあ、不幸なこてでッ⁉危ないなこれは」
悠然と佇んでいた彼の元にはフィリアからの蹴りが伸びてきていた。それを間一髪で躱してみせたが腹に一発喰らってしまって地面を突き抜けて更なる深階層へと突きこまれていった。
だがその直前にはサーベルを持ち出して周囲に何かを刻み込んでいたのが気にかかっている。
「だがそれをしている間にお仲間がくたばってしまえばそれこそ一巻の終わりというものだろう。そして」
「悪いが一巻は終わらないしその一巻が終わったところで困りはしない。どうせこれは長期連載のものなんだから」
瞳孔が開いてきていて全身の鱗が紅く染まっている。そして腕や脚がさらに強靭でしなやかなものになってしまっていた。
ふと視線を向ければそこでは先ほど落ちていったものによってつけられた落書きが光り輝いていた。
これには驚きを隠せずに目を見開いてしまう。
(仕事が丁寧な。あれだけの時間に、たった一瞬だというのに魔方陣を完成させるなんて。往生際が悪いというよりは仲間を信頼して故の行動だろう。信用などはしていなそうなのがまた面倒だ。隠れて行動していたりとあってもおかしくはない)
『だから一巻の終わりでくたばるのはお前だ。覚悟して桶』
「うるせえよ。いってて思ったけれどこれが一巻でのラストバトルなんていうのはあまりにも悲しくないか。それよりもあれの対処が先だ。もう非常になっていられるしかないんだよこっちは」
数度の蹴りを放ち唐傘を振るって閃光までぶつけていく。だがこの蛇野郎には一切効いている様子がない。
流石にこれにはうんざりを通り越して恐怖だな。
『あぁそれじゃあ本気の戦争をやってもらおうか。
奴の周辺には既に幾層にも重なった状態で出現している大蛇がフィリアへと襲い掛かっていた。それを唐傘で切断してかかってい光景が繰り広げられていた。
『そういえば名乗ってはいなかったな』
「お前の名など必要ないッ」
手持ちの爆弾を持ち出して周囲の蛇を一掃する。それによってお互いに傷を負ったがすぐに癒えてしまった。
だがこの蛇は変わらずに倒れたままというのがまだ助かっているか。それらがさらに中から食い破って増えているのが問題ではあるのだが。それはそれとして出来上がった一瞬の隙を見て前へと飛び出してきていた。
唐傘を閉じてその開いたままの眼球に突き刺してやろうと突進していく。肥大化した腕で受け止められてしまうがそこから唐傘を手放して拳を握りしめて顔面に一撃入れようと振るっていった。
そこで大口を開けられてしまい真っ直ぐにその拳が飲まれたことは恥ずかしいから内緒である。
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